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第45話

翌朝は酔っ払っていたトリスが一番遅く起きてきた。

申し訳なさそうに階段を降りてきたので、ちょっと意地悪なことを言ってみたくなる。

「今日はトリスが寝坊助さんだね。」

「うぅ、面目ないのじゃ…。」

「飲み過ぎはよくないぞ。酒は嗜む程度がいいと父上も言っていた。」

「酒は飲んでも飲まれるにゃと、アチシの父ちゃんも言ってたにゃ。」

「火酒は1日に1杯までにしてはどうですか?」

「メルディ、それは厳しいのじゃ。」

「翌日が休みの日なら、たくさん飲んでもいいと思いますけど…。」

「うぅ、カリンは優しいのじゃ…。」

弱々しくカリンさんにしがみつくトリスに、カリンさんが驚きつつも優しい笑みを向けていた。

みんな、仲良くなるの早いなぁ…。


「トリスも起きてきたことだし、今後の予定を共有するね。しばらくは朝から夕方までダンジョン探索をして、レベルを上げつつ日銭を稼ぎます。まずは全員がレベル10に到達して鉄等級に昇格するのが目標かな。」

かなり地道な計画だけど、誰も僕の方針に不満はなさそうで安心した。


それから昼食用のパンや干し肉を買い込み、町を出る前にギルドに寄ってみた。

リップルさんに昨日のお礼を改めて言っておこうかと思ったんだけど、ナーラが抜けたためかリップルさんの受付ブースにも長い列ができていて並ぶか迷ってしまう。

でもまぁ、お礼を欠かすのはよくないので、みんなにはテーブルで楽にしてもらい、僕一人で並んでみた。


「リップルさん、昨日はありがとうございました。なんだか忙しそうですね。」

「そうなのよ。ナーラの担当していた冒険者がだいぶ流れてきてね。」

「人気が戻ったみたいで僕も嬉しいです。」

「ありがとう。フラワー・フラグメントのおかげよ。」

「あと、今日からダンジョン探索を再開するので報告しにきました。」

「そうなのね、出発前に寄ってくれてよかったわ。実はギルド依頼を受けて欲しいのよ。」

「ギルド依頼って、公的な依頼ですよね?」

「そうよ、ゴブリンがダンジョンに手を加えているみたいだし、現在の一層の正確な地図を作成してくれるパーティーを募集しているの。信用のおける相手じゃないとダメだから、ギルド長の推薦もあって、あなたたちに依頼することになったわけよ。」

「お世話になったギルド長の指名では断れませんね。まぁ、どうせ一層でレベル上げ予定だったので引き受けますよ。」

「よかったわ。それじゃあ、ダンジョンから戻る度にギルドに報告にきてね。進捗状況に応じて報酬がでるから頑張ってね。」

そう言うと、僕にウィンクを飛ばしてきたのでドキッとしてしまう。

それでも顔が熱くなったりしなかったので、リップルさんに対する緊張はもうほとんど無くなったのだなぁと嬉しく思った。


ダンジョンの入口では、例の円陣を組むことになったので、始まる前にカリンさんに教えてあげないと。

「えっとね、みんなで肩を組んで円をつくって、トリスが叫んだら、みんなで『おー!』って言うんだよ。」

「はい、わかりました。」

カリンさんは返事をしたものの、どこに入っていいか困っているとアーシアさんが声をかけてくれた。

「カリン、私とユウの間に入るといい。」

カリンさんはパァッと表情を明るくして指定された位置に入り、恐る恐る僕とアーシアさんの肩に手を置いた。

円陣が完成すると、トリスが恒例のかけ声を叫ぶ。

「今日からまた頑張って稼ぐのじゃー!」

「「「「「おー!」」」」」

フラワー・フラグメントの決め事みたいで、これをやると頑張ろうって気持ちがグッと上がるんだよなぁ。


「それじゃあ隊列の確認をしておくね。カリンさんは右後方から弓で攻撃してね。敵の中に弓とかで遠距離攻撃をする奴がいたら、優先して狙ってみて。」

「はい、頑張ります!」

「あと、慣れてきたら未来視の併用を試してみて。矢を放つ段階になったら一時的に未来視を使用して、そこに放ってみて確実に当たるか確認してみよう。」

「はい、やってみます。」

「まぁ、今日は矢を狙ったところに飛ばせるところまでいければ十分だけどね。あと、万が一前衛が倒れたときはショートソードに持ち替えて前衛の穴を埋めてほしいんだ。」

「前衛のほうが経験があるので上手くやれそうです。」

「その場合も、攻撃を剣で受け流すのに集中してくれればいいよ。盾も持ってないしね。」

「えっと、それだけでいいんですか?」

「メルディがヒールで回復させて、前衛に復帰するまで耐えてもらうのが大事なんだよ。無理してカリンさんも倒れたら立て直すのも困難になるでしょ?」

「なるほど、確かにそうですね。」

「戦略はユウに任せておけばいいにゃ。」

「頭を使うのはユウに一任なのじゃ。」

「緊急時は各自で考えて判断しないとダメですよ。」

メルディが脳天気2人組に、きちんと釘をさしてくれた。

「まぁ、ユウの指示に従っていれば、そうそう緊急事態には陥らないがな。」

「わかりました。私もユウさんにお任せでいきます!」

なんか、その宣言は情けないような気もするけど、カリンさんが僕を信頼してくれるってことだから悪い気はしないな。


「確認も終わったし、出発しようか。」

みんなが頷き、新生フラワー・フラグメントはダンジョンへ足を踏み出した。


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