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第43話

(カリン視点)


ギルドの会議室で待っている間、トリスさんとニーナさんを中心にして話が盛り上がっています。

会話に入っていくのが難しくて、どうしようかと思っていたら、ユウさんも会話の様子を眺めているだけで言葉を発さず、時々話の内容に笑ったりしていた。


そうか、無理しなくてもいいのですね。

少し肩の力が抜けて話に耳を傾けてみると、今日の昼食に何を食べるか意見を戦わせていました。

劣勢になったニーナさんが私のほうをチラチラ見てくるのが何だかとても面白く感じてきて、つい吹き出してしまいます。


「カリン、笑ってる場合じゃないにゃ!このままだと豚焼き肉定食に決まるにゃ…。」

それも凄く美味しそうなのですが、頑張って加勢してみようと思います。

「あの、私も魚のフライ定食を食べてみたいです。」

「むぅ、今日はカリンの加入記念日だし、それでいいのじゃ。」

「そうですね、そうしましょう。」


「魚が勝ったにゃー!ナイス・アシストにゃ!」

大喜びでニーナさんが私に抱きついてきてビックリしました。

会話に入れた達成感、サカナカマとして役だったこと、ニーナさんが痣のことも気にせず抱きついてきてくれたこと、全てが私は嬉しかったのです。


「トリスは酒にあえばどちらでもいいのだろう?」

「アーシアに見透かされたのじゃ…。我は火酒を所望するのじゃ!」

「昼間から火酒を飲むの?まぁ、ダンジョンは明日からでいいか。」

私は雑談を聞きながら、一人一人の顔をさりげなく見ていきました。

これから仲間として運命を共にしていくのだと思うと、今まで感じたことのない温かさが心を満たしていきます。

辛かった今までのことは、この居場所に辿り着くための孤独な旅路だったのだと思うことにしよう。

ユウさんがそうだったように、私も過去に捕らわれず変わっていこう。

今なら、昨夜のユウさんの言葉が胸に染み入るようです。

私が欲しくて欲しくてたまらなかったものが手の届くところにあるのだから、頑張って手を伸ばすしかないじゃないですか。


(ユウ視点)


太陽が昇りきり空腹を感じ始めた頃、ギルド長が事の顛末を伝えるために会議室に入ってきた。

ギルド長によると、カリンさんが気絶した後に昏睡毒を口に含まされて意識のない状態にされ、ヒールで傷を治して教会に運びこまれたらしい。

その日はテレサさんが周辺の町の教会を巡回する日で、この町の教会は代理で助祭の男が留守を守っていたけど、この男が裏でレッド・ムーンのリーダーと繋がっていて、『リザレクション』に見せかけて『キュア・ポイゾン』でカリンさんを起こしたとのこと。

いくら掴まされたか知らないけど、本当に酷い話だ。

レッド・ムーンの面々は牢獄送り、助祭の男は身分を剥奪されて国外追放、新人冒険者が酷い扱いを受けているのを知っていながら何も対応しなかったことで、ナーラは受付から降格して裏方事務仕事になった。

また、カリンさんの赤い痣については、口外しないことを居合わせた冒険者全員に約束させてくれたらしく、とりあえず今後はカリンさんが白い目で見られることもなさそうで安心した。


ギルドを去るとき、見送ってくれたリップルさんが嬉しそうだったのは、僕たちが無事にカリンさんを仲間に迎えられたためであると信じたい。

ナーラが降格したことも、一因ではありそうだけど…。


昼食の魚のフライ定食は鰺フライみたいで美味しかったけど、パンじゃなくてライスだったらいいのにと思った…。

食べ始める前に、カリンさんに最後のパーティーリングを贈ると、目を潤ませながら指にはめていたのが印象的だった。

レッド・ムーンからはリングを与えられていなかったと聞いて腹がたったけど、初めてのパーティーリングがフラワー・フラグメントのものでよかったと思うことにした。


それから武具点でカリンさんに弓矢のセットと堅革の鎧をプレゼントした。

遠慮しようとするカリンさんに、みんなにもプレゼントしているからと説明していると、私は貰っていないとアーシアさんが拗ねてしまったのには困ってしまった。

美人に拗ねられたままは僕の心がもたないと思い、バレッタを買ってあげる約束をすると上機嫌になってくれたので安心したけど…。


その後は、カリンさんの布団と毛布を買ってホームに運び込んだ。

気を張っていたせいか、みんな疲れていたので各自夕飯の時間まで休憩となった。

西日のさす自室のベッドに横になり、うとうとしながら今日のことを思い返してみる。


カリンさんを救い出したいという自分の気持ちを貫くことができた。

前世では、そういうことって出来なかったよなぁ。

そんなことを考えながら、自分の成長を誇らしく思っているうちに、僕はいつの間にか眠りに落ちていった。


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