表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/31

第4話

大通りには装備品を売る店や保存食やキャンプ用品を売る店、酒場などが多く並んでいた。

冒険者ギルドのある通りだから、自然とそういう店が増えていったんだろうなぁ。

ついつい興奮してしまい、覗いてみたい衝動を抑えるのが大変だよ。


通りを歩き始めてから5分ほど、右手に2階建ての大きな建物が見えてきた。

気付くと早歩きになっていて、建物の目の前までくると少し息が上がっていた。

おかしいな、このくらいで息が上がるなんて…。この女性の体、だいぶ運動不足では?

それに胸って重いんだな…。女性の肩こりの原因はこれかも。


まぁ、体力はこれから鍛えればいいか。

気を取り直して改めて建物を観察すると、看板には間違いなく『冒険者ギルド』とあった。

本当にあったよ、冒険者ギルド!

夢見た場所、きっと綺麗なお姉さんが受付嬢をしているはず。

マンガやアニメの通りならだけど…。


僕は扉を開け、恐る恐る中に入ってみた。

ドキドキしながら見渡してみると、正面奥にはいくつかの受付ブースが並んでいる。

右手には横に長い木製の掲示板が設置されていて、B5サイズくらいの紙が何枚も貼られ、それに冒険者風の人達が群がっていた。

左側にはベンチや丸テーブルがいくつも設置されていて、待ち合わせをするためのスペースのように見える。

うん、イメージ通りだ。ついに冒険者デビューの時がきた。


僕は高揚する気持ちを抑え、受付に向けて歩き出した。

受付ブースは6つもあり、それぞれに受付のお姉さんがいる。

なんか、混んでいるブースとガラガラのブースがあって、テレビで見たアイドルの握手会を連想してしまった。


まぁ、ガラガラのところでいいよね。登録するだけだし。

僕は誰も並んでいない一番右のブースの前に進んだ。


受付ブースまで、まだ3mほど距離があるんだけど、受付のお姉さんと目が合ってしまい、急に緊張で足が止まってしまう。

僕の足が止まったことで、お姉さんは期待に満ちた目から、やさぐれた態度に変わった。

接客業なんだから、そんなあからさまな態度はどうかと…。


頬杖ついてソッポをむいたお姉さんは、白髪に兎の耳がピンとのびる美人で、出るとこ出ている…。なんで人気ないのだろう…。


今から、あのお姉さんと話すと思うと、緊張で鼓動が速くなる。

落ち着け、ビジネス会話じゃないか。

仕事でも、相手先の女性社員と事務的な話をしてきたじゃないか。

勿論、緊張はしていたけど、なんとかなっていた。

深呼吸を繰り返し、踏み出そうとしたとき、隣の列に並ぶ男性から声をかけられた。


「おいおい、キラーラビットは止めとけって。」

あのお姉さん、随分ぶっそうなあだ名で呼ばれているんだな…。

「なんで、そんなふうに呼ばれているんですか?」

「あいつの常連パーティーが、ここ最近で3つも全滅してる。冒険者は運も大事だぜ。」

なるほどね。まぁ、言っていることはわかるよ。

縁起が悪いのは、命をかけて戦う仕事の冒険者にとっては避けておきたいだろう。

「私、冒険者登録に来ただけなので、どなたでも大丈夫かと…。」

「別に気にしないってんなら、いいけどよ。早死にしないように精々気をつけるんだな。」

男性はヘソを曲げてしまったようだ。

まぁ親切で忠告してくれたのに、言うこと聞かなかったわけだし仕方ないかな。


前世でも僕は無神論者というか、験担ぎとか意味を感じないほうだったので、空いているところでいいし、なんか一度期待させてしまった手前、他の列に並ぶのも忍びない。


僕が受付ブースの前まで進むと、お姉さんは慌てた様子で急に営業スマイルで取繕った。

「いらっしゃいませ。今日はどのような依頼を受注なさいますか?」

なんかメイド喫茶の店員さんみたいな服装で、胸には『リップル』と名札がついている。

僕が緊張で声が出せず沈黙してしまうと、リップルさんは怪訝そうに顔を覗き込んできた。

「どうかされましたか?」

近い、近い…。それに胸元が見えてますけど…。


「あ、あの…。ぼ、ぼ、ぼ、冒険者登録をお願いします!」

言えた!よかった!

僕が達成感を感じていると、お姉さんは溜息をついた。

「なんだ、登録ですか。」

なんだろう、この落差。依頼の斡旋とかで給料歩合制なのかな…。

「ここに必要事項を記入して。」

リップルさんは、ぶっきらぼうに一枚の紙を受付の上に置いた。


まぁ、登録さえできればいいけどさ…。

えっと、名前と職業、レベルを書けばいいだけか。

僕は名前に『ユウ』、職業に『魔法使い』と書いたところで、ペンを止めてしまった。

あれ、僕のレベルは『1』なのか?そもそもレベルはどうやって決まるのだろう…。


「あ、あの、レベルはどうしたらわかりますか?」

うわ、睨まれた…。

「ふざけているの?どうせ照合するんだから、さっさとステータス見せて。」

ステータスを見せる?どうやって?

僕が困惑していると、他のブースから救いとなる会話が聞こえてきた。


「ステータス・オープン」

「はい、確かに10レベル到達を確認しました。昇級おめでとうございます!」


本当にゲームみたいだ…。でも助かったよ。

「ステータス・オープン」

僕の言葉に反応するように、目の前に半透明な液晶画面のようなものが現れた。


名 前:ユウ

職 業:魔法使い

レベル:1

スキル:魔力感知 聡明


やっぱりレベルは『1』でよかったんだ。

ほっとしてレベルの欄に『1』を書き込んでいると、リップルさんが目を見開いてステータス画面を凝視していた。


「魔力感知に聡明…。」

リップルさんがブツブツ言っているけど、目を合わせると緊張が増すので記入に専念しよう。


「書き終わりました…。これでいいですか?」

顔をあげると、リップルさんが目をキラキラさせて僕をみていた。

目が合ってしまい、顔がボっと熱くなり慌てて目を逸らした。


「ええ、問題ありません。それにしても、魔法使いのもっていると嬉しいスキル第1位の聡明をもっているなんて将来有望ですね。それに魔力感知なんて引く手数多ですよ。是非、今後は私、リップルをご指名くださいね。」

最高の営業スマイルで、ぐいぐい迫ってくるんだけど…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ