第2話
確かに死んだはずだった。
それなのに目を覚ましたことに驚いて、僕は慌てて辺りを見回してみた。
そこは、どこまでも続く白一色の空間で、地面にあたる部分も同色だから、一歩でも踏み出したら奈落の底まで落下してしまうのではないかと不安に支配されてしまう。
「目が覚めたかね?」
突然耳に届いた声に動揺していると、目の前の白い空間の一部に色がのり始め、次第に人の姿を形作っていった。
彫刻作品のように整った容姿をした男性は、白い衣を纏い宙に浮いているようだった。
死後の世界なのか?
閻魔様みたいな怖そうな存在でないことに安堵しつつも、この後どうなっていくのだろうという不安が心に広がっていった。
「あの、ここは天国ですか?」
我ながらマヌケな質問をしてしまったように思う。
「当たらずとも遠からずだな。」
あぁ、やっぱり僕は死んだんだ。夢ではなかったんだね。
世界最速で異世界生活を終了した者としてギネスに載るくらいあっけない最後だった…。
「そなたには申し訳ないことをした。こちらのミスで本来繋げる予定のない2つの世界を繋げてしまったことで、そなたは運悪く異界に迷いこみ死を迎えてしまったのだ。」
ミスですか…。最後に憧れの異世界ダンジョンを体験できたのは悪くないけど、その対価が死というのは重すぎますよね。
「そなたには、まだ生きる権利があったのだ。謝罪の意味をこめて、そなたの迷いこんだ異界に転生する手助けをしよう。」
異界に転生!?
あの坑道のようなダンジョンやアラクネがいた世界に?
気付くと涙が溢れていた。あぁ、これが嬉し涙というものなんだね。
中学生のときから夢見ていたんだ。剣と魔法とダンジョン、そういう世界で生きてみたい。
女の子と一緒にハクスラしたいって!
「ありがとうございます。本当に夢のようです。」
泣きながら喜ぶ僕を見て、神様っぽい人が若干ひいているような…。
「よほど過酷な人生を歩んでおったのだな。そなたにとって我らのミスが僥倖となったのは幸いだ。」
過酷だったといえば、そうかもしれないけど。まぁ、充実はしていなかったな…。
「異界に転生させるにあたって、そなたにギフトを授けようと思う。50ポイントの範囲内で好きな組み合わせを選ぶがよい。」
その言葉を受けて、僕の前に透明な液晶画面のようなものが現れた。
ポイント?まるでゲームみたいじゃないか。
僕はテンションが上がって、食い入るように画面を凝視した。
【身分】
平民 0ポイント
貴族 30ポイント
王族 50ポイント
【容姿】
平凡 0ポイント
美麗 10ポイント
【職業適性】
戦士 5ポイント
騎士 5ポイント
盗賊 5ポイント
僧侶 5ポイント
魔法使い 5ポイント
【経済力】
普通 0ポイント
裕福 5ポイント
富豪 10ポイント
【言語】
共通語 0ポイント
全言語知識 15ポイント
【スキル】
薬物知識 5ポイント
魔力感知 10ポイント
鑑定 50ポイント
怪力 10ポイント
俊敏 10ポイント
聡明 10ポイント
空間収納 50ポイント
【初期装備】
魔法武器 10ポイント
魔法防具 10ポイント
マジックバックパック 10ポイント
【その他】
要相談
これは…。なんて楽しいのだろう!
えっと、ハクスラしたいから身分は平民でいいよね。
容姿も拘らないから平凡でいいかな。ちょっと気にはなるけど、貴重なポイントだし無駄遣いはやめよう…。
職業適性は必要だな。ここはやっぱり魔法使いがいいな。
折角のファンタジー世界なんだから魔法を使ってみたい。
経済力は重要かもしれない。最初にいい装備を揃えられないと死亡確率が上がってしまうから、思い切って富豪にしておこうかな。
言語は共通語が話せればいいよね。
鑑定とか空間収納って異世界転生の定番スキルだけど、50ポイントは厳しい…。
選ばせる気ないでしょう、これ。
魔力感知と聡明は魔法使いになったときに役立ちそうだから選ぼうかな。
ここまでで35ポイントか。
魔法の装備はハクスラしながら集めるのが楽しみだから選ぶ気はないとして。
「あの、マジックバックパックって、どんなものですか?」
「収納物の重さを10分の1にする効果がある。」
それは、ハクスラには重要なアイテムだな。よし、選ぼう。
残り5ポイントかぁ。ちょっと相談してみようかな…。
「あの、転生したら僕は24歳ですか?」
「そうなるな。1ポイントにつき1歳若返らせてもいいが。」
それは魅力的な提案だよ、できれば長くハクスラしたいからなぁ。
うん、5歳分若返ろう。
「決まりました。魔法使い適正、富豪、魔力感知、聡明、マジックバックパック、5歳若返りでお願いします。」
「ふむ、女子と懇意になりたいという願望を叶えるために美麗を選ばなくてよいのか?」
心を読まないでほしい…。恥ずかしすぎる。
なんか、美麗を選ばなくてよかったよ。
「容姿等はお任せします。僕がやりたいのはハクスラですから、そういうことにポイントは使えないです。」
後悔はしない、しないはずだ…。しないよね?
「わかった。では異界に送るぞ。」
その言葉を聞き終えると同時に、視界は光に覆われ何も見えなくなり、僕は意識を失った。




