第19話
僕も加入に問題ないと思ったし、トリスが認めたなら、もう障害となることは何もないな。
「アーシアさん、正式に加入を認めます。ようこそ、フラワー・フラグメントへ。」
「よろしくにゃ!」
「アーシアさん、よろしくお願いします。」
「期待しているのじゃ。」
ニーナたちの歓迎の言葉に、アーシアさんは感極まったようだった。
「ありがとう。フラワー・フラグメントのために尽力することをここに誓おう。」
アーシアさんは両腕を胸の前でクロスさせ、片膝をついて深く頭をさげた。
これは正式な騎士の誓いなのかな?
ザワザワしている朝のギルドの中で、ここだけが神聖な空間に変わったようだった。
「頭を上げてください。僕たちは対等な仲間になったんだから、堅苦しいのはダメですよ。」
「む、そうか…。そうだな、冒険者らしくなかったかもしれない。」
言い方をあれこれ考えているようで、真面目なアーシアさんに好感をもてた。
「とりあえず、僕らの家に移動してステータス共有とダンジョンでの戦略を練りませんか?」
「すごいな、家を所有しているのか?」
「賃貸ですけどね。家賃はパーティーで稼いだお金から支出する予定なんだけど、アーシアさんも住むってことでいいですか?」
「もちろん、そうさせてくれ。私だけ仲間外れはダメだぞ。」
「なんと、個人部屋にゃ!」
「なんか、お金持ちになった気分ですよね。」
「とても快適なのじゃ。」
ニーナ達が嬉しそうにアーシアさんに説明しているけど、何もない小部屋だからなぁ…。
平民と貴族の感覚の差が早く埋まるといいけど。
家に戻る途中で、アーシアさん用に敷き布団と毛布を購入し、みんなで一緒に持ち運んだ。到着して2階の空き室に運び入れるときに、部屋の様子を確認したアーシアさんは、狭さに一瞬驚いたように見えたけど、すぐに笑顔になり、「いい部屋だな。」と言ってくれた。
それからリビングに集まってステータスを見せ合った。
アーシアさんは予想通り騎士の職業で、一番必要としていたポストにピタリとはまった。
僕たちより少しレベルが高いのも、序盤のレベル上げにおいて心強い。
名 前:アーシア・ロンウェー
職 業:騎士
レベル:4
スキル:不撓不屈(精神異常耐性【強】) 貴族教養(初級)
年 齢:19
属 性:火
適 正:騎士
STR:12 VIT:14 DEX:10 AGI:9 INT:6 FAI:7
HP 28 / 28 MP 14 / 14
ステータスを開いたときに、スキルが増えていることに気づき、アーシアさんは驚いていた。
『不撓不屈』というスキルは以前には無かったらしい。
心の持ちようで解放されたということなのかな?
理屈はわからないけど、前衛壁役の要が状態異常に強いのは素晴らしい。
「アーシアさん、得意な武器とかありますか?」
「ずっと鍛錬してきたのは剣だが、パーティーの役割に合わせるぞ。他の武器も基本は習っているからな。」
「でしたら、エストックはどうでしょうか?大きな盾をもって中央を堅守してもらいたいので、モーションの少ない突剣のほうが助かります。通常の剣では振るときに盾を横に引かないといけないので。」
「わかった。エストックなら慣れている武器だし問題ない。」
「よかった。さすがに使ったこともない武器だったら、提案を取り下げようかと思っていたので。」
「もう、隊列のイメージができているのだな。」
「そうですね、アーシアさんの利き手側である右にニーナ。攻撃の回避を重視しながら戦ってメルディの回復魔法を節約してほしい。」
「わかったにゃ。」
「アーシアさんは盾で正面の攻撃を防ぎつつ、右側の敵に攻撃を加えて、ニーナと2人で敵を倒してほしいです。」
「わかった。敵の数を減らすことを優先するのだな。」
理解が早くて助かるな。
「アーシアさんの左側にトリスが立って、とにかく正面の敵を殲滅していってほしい。うちの最強のアタッカーだからね。」
「任せるのじゃ。」
あの両手槌をトリスのパワーで振るえば、並の敵なら一撃だろうと予想している。
「後衛中央にメルディが立って、攻撃を受けてしまった仲間に回復魔法をかけてほしい。もちろん回数の制限もあるから、傷の深さを考慮しながらね。」
「わかりました。やってみます。」
メルディは冷静に考えられるほうだと思うから、状況を判断して適切に魔法を使ってくれるはずだ。
「僕はトリスの後ろに立って、視界を確保しつつ遠距離攻撃が可能な敵がいた場合は早急に無力化を図るよ。」
「ユウはレベル1なのに、戦略家なのじゃ。」
「考えるのは苦手だから助かるにゃ。」
「3人でダンジョンに行ったのは、本当に無謀だったと今ならわかります…。」
「ユウ殿は慕われているのだな。」
「あの、『殿』は止めましょう。ユウでいいですよ。」
「アチシたちも呼び捨てでいいにゃ。」
トリスとメルディも頷いて同意を示した。
「そうだな、対等な仲間なのだし、今後はそのように呼ばせてもらおう。」
アーシアさんは照れくさそうにしていたけど、嬉しそうでもあった。




