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第12話

お腹も満たされて宿にもどるのかと思っていると、僕を悩ませる提案がとびだした。

「メルディの体を綺麗にしてあげたいにゃ。」

「確かに汚れを洗い流したいかもです…。」

「久しぶりに奮発して湯屋を利用するのじゃ。」


湯屋?銭湯みたいなものかな。

まぁ、メルディの体には血痕もあるし、お風呂には入るべきだろう。

いや、まてよ…。僕は女湯に入るってことじゃないか!?

いやいやいや、それはダメだろう。

法的には問題なくても、僕の倫理観的に完全にアウトだ。


3人は湯屋に行けることを喜んでいるから『やめよう』とは言いにくい。

勝手なイメージだけど、世の女性は基本的にお風呂好きだと認識しているし。

今後のことは追々考えるとして、今回は3人だけで行ってもらおうかな…。

「えっと、僕はダンジョンに潜ってないから今日は遠慮しておくので、3人で行ってきてよ。」

「一緒に行かないのにゃ?」

「みんなで行ったほうが楽しいのじゃ。」

「ちょっとギルドに用事があるから、今日のところは3人で楽しんでよ。あとで宿で合流しよう。」

ニーナとトリスは不満そうだったけど、メルディは僕の気が進まないのを感じとってフォローしてくれた。

「ユウさんはパーティーリーダーとしてやることがあるみたいだし、邪魔しちゃダメだよ。」

「そういうことなら仕方ないにゃ。」

「次は一緒にいくのじゃ。」

「そうだね、次はみんなでいこう。」

とりあえず了承したけど、なんとか代案を用意しないとなぁ…。


(湯屋にて メルディ視点)


町の湯屋には大銅貨3枚で入れるけど、私たち3人の代金を払うと所持金をほぼ使い切ってしまったみたい。

私は家出してきたから、資金面では全然貢献できていない。

今まではニーナとトリスの持参金で生活してきたため、申し訳ない気持ちでいっぱいなのです。

初めのうちは事あるごとに感謝の気持ちを伝えていたけれど、途中から2人に『ありがとう禁止』のルールをつくられてしまい、心の中だけで感謝の言葉を唱えるようにしています。


2人をみれば、湯船に入る前の掛け湯をお互いに思いっきり掛け合っていました。

凄く楽しそうだけど、他の客がいなくてよかったです。絶対怒られるやつだもん。

2人の騒ぐ声が浴室に反響しているし、掛け湯の一部が私の体にも飛び散ってきます。

とりあえず、血痕を洗い落とさないと湯船に入れないので、せっせと体を洗っていると、

後方の湯船からドボンという音が2回立て続けに響いて、2人が飛び込んだことがわかりました。

本当に、他の客がいなくてよかったです…。


ようやく湯船に浸かると、体から疲れや緊張が湯に溶け出していくようで心地よさが広がっていきました。

賑やかだった2人も、ホワワンとした顔でお風呂を堪能しているようです。


「それにしてもユウはお金持ちにゃ。」

「そうじゃな。助かるのじゃ。」

「頼ってばかりはよくないですし、私たちもお金を稼がないとですよ。」

散々頼ってきた私が言うのもなんだけど、仲間になったのだから一方的に援助されるのはよくないと思いました。

「それはそうにゃ。はやく借金を返して本当の仲間になるにゃ。」

「借金を返済するまでと言っていたのじゃ…。その後も仲間でいてくれるだろうか?」

「なんとか引き留めたいですよね。」

正直なところ、ユウさんがいないと私たちはダメな気がする。

今回のダンジョン挑戦だって計画性がなさすぎて、結局大きな借金を抱えることになったわけだし。


「3人で泣きつけば大丈夫にゃ。」

「ユウは優しいから断らないのじゃ。」

そんな方法で?と思ったけど、確かにユウさんなら私たちを見捨てて去って行くことはなさそうな気がする。

私もユウさんに甘えすぎかもと思ったけど、別れないですむなら、それもいいかもですね。

「そうですね。そのときがきたら、みんなで泣きつきましょう。」

私たちは他の人が聞いたら情けないと思いそうな作戦に、意気投合して笑い合いました。


(ギルドへ向かう道中 ユウ視点)


やっぱり前世の家風呂みたいに、個人で入れるお風呂が必要だよなぁ。

この手の世界の定番だと、個人用のお風呂に入れるのは貴族くらいなものだろうし・・・。

そもそも、あのボロ宿で同棲生活を続けることも問題だよなぁ。

着替えとか、トリスと一緒のベッドで寝ることとか・・・。

嬉し恥ずかしラッキー体験とか割り切れればいいのかもしれないけど、女性と一緒にいると緊張してしまう僕には難しいかな。

それに邪な目でみていたら、メルディに『悪意』として感知されそうで怖い・・・。

メルディに『エッチな目で見ていませんか?』とか指摘されたら立ち直れない自信がある。


前世だったらどうするかなと考えて、一つの案を思いついた。

賃貸物件とかないのかな?

どうせダンジョンのあるこの町を離れる予定もないし、しばらくは低層階しか探索できないだろうから毎日眠るために帰宅するはず。

今の宿が一泊銀貨4枚だったから、4000円くらいとして30日泊まれば12万円でしょ。

家財道具とか出費はあるだろうけど、空き家を借りた方が経済的な気がする。

それが可能なら、お風呂の件も解決できるかもしれないな。


よし、リップルさんに相談してみよう。


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