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第11話

「みんな優秀だから、これからが楽しみだよ。とりあえず前衛職をあと一人仲間にできれば、ダンジョンに挑めそうだね。」

「はやくリベンジしたいのじゃ。」

「はやくしないと、お金もないにゃ。」

「あぅ…。」


「まぁ、焦らないでちゃんと準備して挑もうよ。お金の問題は僕が何とかするからさ。そうそう、みんなの装備を確認させてくれるかな?」

「もちろんなのじゃ。」

トリスの気持ちのいい返答を合図に、それぞれ装備を取り出して着用してくれた。


トリスは鉄製の鎧一式に両手槌で、作りのいいものに見える。

「村を出るときに爺様から『失敗作だ』と言って餞別にもらったのじゃ。」

そうはいっても、とても失敗作には見えないんだよなぁ。鎧もオーダーメイドのようにトリスの体にピッタリあっているし。

「それって、失敗作じゃないんじゃない?」

「わかっておるのじゃ。爺様は我のことをとても可愛がってくれていたのじゃ…。」

トリスは両手槌をギュッと握りしめて俯いている。

故郷のことを思い出しているのだろう。

ただ、お金は無くても、いい装備は揃っていて安心した。

前衛の防具にお金を惜しんでいては生き残れないからね。


ニーナは古びたサイズも合っていない革鎧に刃こぼれしたショートソーダをもっていた。

「どうにゃ?父ちゃんのお古にゃ。」

「えっと、言いにくいのだけど、全部買い換えたほうがいいかも…。」

「そうにゃのか!?ショックにゃ、父ちゃんはアチシにガラクタを渡したにゃ…。」

「いやいや、そういうつもりじゃないと思うよ。でもね、サイズが合った防具じゃないと、動きにくいでしょ?ニーナには華麗に敵の攻撃を躱してほしいからさ。」

「ふむ、この剣も刃こぼれしておるのじゃ。打ち直すより自分にあったものを買ったほうがいいのじゃ。」

「わかったにゃ。でも買うお金がないにゃ。」

トリスも一緒に説得してくれて助かったよ。

「僕が買い換えを勧めたんだから、僕が出すよ。」

「また、借金が増えるのですか…。」

メルディは生計を一手に担ってきたせいか、他の二人より借金に敏感だな。

「そうじゃないよ。仲間になった記念に僕からのプレゼントだと思ってくれたら嬉しいな。」

「ユウは太っ腹なのじゃ。」

「ありがとにゃ~!」

トリスとニーナが抱きついてこようとして緊張したけど、金属鎧と怪力のせいで、「痛い!痛い!」と叫んでしまった。

メルディの気持ちがよくわかったよ…。


メルディの装備は腹部が切り裂かれて血に染まったローブに木製の棍棒か…。

「あの、ローブはこのあと繕いますので。」

「うーん、革鎧を買っちゃおうか。投擲武器とかで狙われることもあるかもしれないし、ローブでは危ないよ。それに、ちゃんと鉄製のメイスも買ったほうがいいかな。」

「でも…。」

「心配しないで。メルディの装備もプレゼントするからね。」

「命を救ってくれたうえに装備まで…本当にありがとうございます。」

メルディは目を潤ませて深々と頭を下げた。

本当、いい子だなぁ。僕なら絶対に売り飛ばそうとか思わないのに。


「むむ、我だけプレゼントがないのじゃ…。」

トリスが寂しそうにしていて心が痛む。確かに不公平はよくないか…。

「じゃあ、兜をプレゼントするよ。頭防具は無いみたいだしね。」

「ユウは爺様と同じくらい優しいのじゃ。」

一気に機嫌の直ったトリスが抱きついてきて、『痛い!』と叫んでしまった。

このくだりは、このパーティーのお約束なのか…。


「ユウはローブと杖だけにゃのか?」

「魔法使いは金属製の鎧を着ると、マナが散りやすくなるって聞きましたよ。」

やっぱり、そういう制約があるのか。

「みんなの装備を買うときに、魔法に影響のない範囲で防御力の高そうな装備を見繕ってみるね。」

「それがいいのじゃ。みんなで強くなるのじゃ。」

興奮したトリスが両手槌を掲げて叫んだあと、『ぐぅぅぅ』とお腹が鳴った。

「うぅ、お腹が空いたのじゃ…。」

なんか、可笑しくってみんなで笑ってしまった。

いいなぁ、こういうの。

一人でゲームをしていたときには感じることができなかったものだ。


それから僕たちは宿を出て、露店で端材の肉炒めと葉野菜を挟んだサンドイッチを食べた。

想像していたとおり、パンは固くてボソボソしているし、肉は臭みも残っていた。

それでも、不思議と美味しく感じられたのは、そこにみんなの笑顔があったからかもしれない。


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