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第1話

僕の名前は小森悠宇。神様のミスにより24歳という若さで人生の幕を閉じました。

そんな僕の人生は決して充実したものではありませんでした。


僕の人生を振り返ってみると、まず小学校1年生のときに、両親が離婚し父子家庭の一人っ子となったことがコミュ症のきっかけだったと思います。

朧気な記憶に残る母親の印象は決していいものではなく、ほったらかしにされていたと今ならわかります。

後に父親から聞いた離婚の理由は母親の不倫だったし、離婚は仕方のないことだったと思います。

ただ、父親もトラックの運転手をしていて帰りも遅く、幼少期から家で一人で過ごすことが多かったため、他者と関わることが苦手になってしまいました。

そんな家庭状況だったこともあり、炊事洗濯も適当でカップラーメンには随分お世話になりました。


小学校2年生のときには、首元の黒ずんだ服を着ていたことで、隣に座る女子から「汚いから机をくっつけないで!」と言われ心に深い傷を負いました。

思えば、このときから女子と接するのに恐怖を覚えるようになったと思います。

学校も休みがちになったけど、父親に教えてもらって洗濯や掃除を自主的にやるようになったのは、もう二度と「きたない」と言われたくないという強い気持ちがあったからです。

小学校4年生になったときには、学校は休まず行けるようになったけど、女子を前にすると言葉が出なくなるという心の病が治ることはありませんでした。


中学校に進学して思春期を迎えた頃は、可愛い子と付き合いたいとか普通の男子らしい感情は湧いてきましたが、話すことはできないので諦めるしかなかったです。

その頃からハクスラ系のゲームにはまるようになり、学校から帰れば長時間ゲームばかりやっていました。

女の子の仲間と一緒にダンジョンに潜り、レア装備をゲットして快感を得ることが、当時の僕の心を支えてくれていたのかもしれません。


卒業後は、女子がいると緊張してしまうので、男子校に進学しました。

コミュ症な僕ですが、ゲーム好きな友達ができて、比較的楽しく高校生活を送ることができました。

裕福な家庭ではなかったので、奨学金をもらって大学進学するか就職かを選択することになり、悩んだ末に就職することにしました。

そんなに感謝の気持ちもなかったのだけど、父親にも自由に生きてほしいと感じるようになって独り立ちする決意を固めたことを覚えています。


下水道整備の会社に入社したことに後悔はありません。

暗くて臭い環境でも、男ばかりの職場で気が楽だったし、下水道の中にいるとダンジョンに迷いこんだようで、妙に気持ちが高揚するのが気に入っていました。


24歳の夏、とある地方の下水道の老朽化をチェックするよう上司に命じられ出張に出向きました。

下水道の壁の状態や下水の流れが正常かをチェックしながら移動していると、突然の目眩に襲われ気を失ってしまいました。



次に目を覚ましたとき、周囲の異変に気付き思考が停止してしまった。

ここはどこなんだ?

楕円形の下水道を歩いていたはずなのに、今いるところは昔のハクスラゲームによくある3Dダンジョンのような長方形の通路だ。

それだけでも十分に衝撃的だけど、壁は坑道を思わせるような岩が剥き出しの形状なのだ。


ヘルメットのライトを頼りに辺りを見回したけれども、前も後ろも灯りが届かないところまで通路が続いている。

気を失っている間に、誰かに廃坑にでも運び込まれたのか?

何のために?

全く意味がわからないけど、とりあえず坑道を抜け出そう。

誰かに運ばれたとしたら、運んだ人間は犯罪者か異常者か…とにかく普通じゃない。

出口がどっちなのかもわからないまま、僕は坑道を進み始めた。


しばらく進むと、坑道は行き止まりになっていて、そこには金属製の扉がついている。

何だよこれ…本当にゲームのダンジョンみたいじゃないか。

この扉の先は、どうなっているのだろう。

僕を運んできた謎の人物の隠れ家か、それとも出口に繋がっているのか。

迷っていても始まらないので、僕は恐る恐る扉を開けてみた。


細く開いた隙間から中の様子を伺うと、広い部屋になっているのか奥や天井が確認できなかった。

ただ、途轍もない大きさの蜘蛛の巣が所々に張り巡らされていて、ここが日本ではないかもしれないと感じさせるには十分だった。


大きい蜘蛛に遭遇したら、すぐに引き返そう…。

覚悟を決めて部屋に足を踏み入れ、数歩進んだところで頭上に気配を感じ視線を上に向けた。

そして、居るべきでない存在と目があってしまったことで、僕の人生が詰んだことを悟った。


上空の蜘蛛の巣から僕を見下ろしていたのは、巨大な蜘蛛の頭部から女性の上半身が生えた魔物、アラクネだった。

夢見たファンタジー世界だけど、どうか夢であってほしいと思った。

恐怖にのまれ身動きできない僕の側に降りてきたアラクネは、なんの感情も見せず簡単に僕の命を刈り取ってしまった。


私の4作目を読んでくださり感謝いたします。お気に召しましたら、継続して読んでいただけると嬉しいです。また、今までは毎日更新できるよう頑張ってきましたが、仕事との両立も厳しく、申し訳ないですが今後は更新を不定期とさせていただきます。よろしくお願いします。


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