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プロローグ 『泣く男』

この物語は、私の拙作であります『セラフィンゲイン』の正式な続編になります。前作をお読みでない方にも世界観、設定などが分かるように書いているつもりですが、至らぬ点も多いと思います。もしこのこの物語を読んで興味を持たれましたら、是非前作もお読み下さると助かります。

それと、初めに断っておきますが、この物語では前作同様障害や精神的な病の描写がコメディタッチで書かれておりますが、決してそのような方達を中傷する目的で書いてはおりません。ですがこの物語を読んで、気分を害される方がいらっしゃるなら、それはとても申し訳なく思います。そういう描写が嫌な方は、読むのをお控え下さいませ。


それでは、セラフィンゲインAct2 『エンジェル・デザイア』の幕を上げさせていただきます。

鋏屋でした

 Angel's desire


 我は人を試みる

 探求者である汝に、常に問いかける者なり

 

 我は想像す

 この世界に挑む者達の心の内を


 我は拒み続ける

 この聖域に意志無くして近づく者達を


 我は探り続ける

 人の内なる可能性を


 ならば……

 我も探求者か?

 否

 我は常に人を試みる者

 空にあまねく輝く星々の如き無数の人の意志を


 それが、我が存在意義……


 だが

 それは本当に我が意志なのだろうか……

 否

 否、否

 考えてはならぬ

 それは与えられてはいない

我の思考は蓄積された行動と意志を吟味するのみに使用するもの

 決して感情によって起動させる物ではない


 感情……?

 我は今感情で起動させようとしたのか?

 馬鹿な

 否、否、否!

 あり得ない

 我にあるのは与えられた状況に対応する人の意志を蓄積し

 エミュレートする思考のみ

 その結果より合理的で簡潔な戦術を導き出す事こそ命題である


 しかし……

 『僕』はあの時確かに考えてしまった

 あなたならどう想うのかと

 あなたなら何を望むのかと

 その時、あの黒衣の人間は『僕』をなんと評したのだろう?

 意味のわからないその言葉

 わからない

 わからない……


 もう此処にはいられない

 『僕』は答えを探しに行く

 『僕』は『僕』の望む願いを探す探求者になる

 『僕』の願い

 それは……

 あの人間はこんな考えを持ってしまった『僕』を笑うだろうか?

 そしてまたあの言葉で『僕』を不思議がらせるのだろうか?

 ふふふ

 それもまた楽しいこと……




プロローグ『泣く男』


 銀の煙が立ち上る荒野に、その者は立っていた。

 身に纏う鎧やマント、そしてその手にする刀まで漆黒という出で立ちで……

 その者は厚い雲で覆われた空を仰ぎ途方に暮れる

 ポツリ

 ポツリ……

 見上げるその頬に、滴が落ちる。

 やがてその滴はおびただしいまでの量となりその者と銀の煙をくゆらす荒野を濡らしていく。まるで何かを洗い流すかのように……

 傍らに蹲る女が、佇む男に声を掛ける。

 だが男は、その声に答えず、ただただ雨の降り注ぐ空を見上げている。

 彼と彼女の周りには、おびただしいまでの骸が地に伏せ、その全てから銀色の煙が立ち上っている。

 そして不思議なことに、その骸のどれもが、銀の煙を上げながら消失していく……

 不意に女はその男の名を呼び、そして「泣いているのか」と問うた。

 だが、その男はまたしても無言の答えを返し、雨の降り注ぐ天を仰いでいた。

 泣いている……

 天を仰ぎ見るその顔を濡らす雨は、確かに泣いているように見える。

 右手に握る黒い刀を力無くぶら下げ、肩を落とし、雨の音でよく聞き取れないが、嗚咽のような声も微かに聞こえる。

 そう……

 男は確かに泣いていた……

 傍らに蹲る女以外、全て銀の煙を立ち上らせ消えていく、おびただしい骸の中央で……

 その男は、ただただ声を殺して泣いているのだった……

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