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本性  作者: hagisiri
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みんなで生きていく

私は今、太田くんと二人で改札の内側から駅の外にいる警察と怪物駆除と書かれたコートを羽織る大人、その後ろでカメラを構えヤイヤイ騒ぐ人間たちを眺めている。

「君たちは何故検査を拒否したのですか?具合も悪そうには見えない」さっきの検査員が前に出てきて落ち着いた口調で言う。

「得体の知れないものは怖くて」太田くんは不自然に微笑む

「受けないと周りが迷惑するんだよ!」「受けてる人もいるんだから大丈夫に決まってんだろ!」「得体が知れてないのはお前らの方だろ!」警察を挟んだ後ろから顔の見えない人たちの野次が聞こえる。

「検査は絶対に安全です。体に何かを入れるわけではありません。少し血液が欲しいだけです」と検査員の人が言う「嫌です」あたしは真っ直ぐ目を見てはっきりとした発音で伝える。開き直ってこの場から逃げる方法を考えていた。

「そうなると無理やり拘束することになりますよ?」検査員が警告するように真剣な顔で言う。

「うちはこの一年すごい楽しかったんですよ。友達と勉強して、映画見て、旅行にも行って、買い物もして。俺ら五人で楽しく学校生活送って。行事もあんなに真剣にやって。弱いのに僕のこと命懸けで守って、生活してくれる人がいて。最後正体がバレて殺される瞬間も変な保身も欲もない純粋な愛を感じていられる。これがあたしの人生なの。最高ですよね」話終わる頃にはもうあたしの体は人の形では無かった。警察と怪物駆除は銃を私の頭に向け、野次馬はカメラを構えている数人以外はほとんど消えた。隣にいる男子は泣き叫びながら私の腕にしがみついてる。じゃあね。




 うちは学校に行くために駅に向かって走っていた。太田とエナちゃんに早く会って謝りたかったし、立と澄子の身勝手な生き方を尊重できるようになったと、自分も辛いけれどこの先しっかり生きていく覚悟を決めたよと、をみんなに伝えたかったからだ。でもそんな望みも叶わなかったけど。

 駅の前では警察と数人の野次馬が改札を封鎖していた。しかし近くによれば改札の中は普通に見えるくらいには隙間はあった。

 野次馬の横をすり抜けて改札の中を確認する。そこには、血まみれで横たわり一切動かなくなった細く美しい怪物と拘束されて野次馬のカメラに向かって震えながらよく通る声で叫ぶ太田がいた。

「お前ら肌の色と宗教を尊重するようになったらすっぴん見て差別するようになるんだな。エナちゃんのこと何にも知らないくせに。最初から協調生なんて全くないくせにかっこつけんなよ。気持ち悪い。会話する知能があることはわかってたよな?一緒に生きる方法も考えないで大衆の前で殺して、パフォーマンスにのために使って。

 元々害獣くらいにしか思ってないもんな。これで街の脅威が一つ減ったくらいにしか思わないもんな。一生そうやってパッと見で危ないものと気に入らないもの排除し続けて平和だねって言えばいいよ。(ヒト科ヒト属ホモサピエンス)地上を支配した生き物の本性はその正義にあるもんな」怪物の血と彼の涙が混ざる。遠くから聞こえるサイレンを彼の泣き声がかき消す。それを観客が嘲笑する。


「おはようみんな」朝、目が覚めて携帯を開く。4月7日8時27分。被っている布団を右に押しのけてキッチンに向かう。

目玉焼きを焼いて冷凍の唐揚げをレンジで温める。麦茶をコップに注ぎ机に並べる。食べ終えたら歯を磨き、茶色いワンピースを着て花屋さんに向かう。


「お疲れ様です」と花屋さんに入る。

「あら。かにちゃん今日はシフトないよ。」楓さんが言う。

「今日は客としてきました。友達の墓参りで」ウチは財布をチラリと見せる。

「そう。菊とかグラジオラス、ユリ?」楓さんが数本花を摘む。

「いや、みんなに似合うの私が選んでいきます」バラ、チューリップ、アサガオを買って店を出る。


 墓地に向かう途中道に生えているたんぽぽを何本か引き抜いて買った花束の中に入れる。

 墓地に着くが誰一人として墓の下には眠っていない。墓地の植え込みに買ってきた花を添える。

「持井お前には彼岸花とか添えようと思ったけど優しいから止めてやったわ。タンポポでも食ってろ。澄子といる時間は楽しかったか?澄子は楽しそうだったけど。またどっかで会ってんなら次は殺すなよ。

 太田、お前は今回の件なんも関係なかったな。巻き込んでほんとにごめんよ。あんた世間では怪物に洗脳された少年Oみたいな扱いだったよ。しかも怪物に食われたってニュース流れてきた、けどほんとは多分自殺でしょ。まだ怪物の差別はなくなんなそう。もう数学競う相手いなくなっちゃった。寂しくなるね。

 エナちゃんはほんとに人を食べないまま終わったね。誰も殺さないのに加害者的な立場をとる優しい怪物のあなたと感情的になって被害者ずらして関係ない人を殺して回る人間のあたし、みっともない方が生き残っちゃった。あんたも次は強い体じゃなくて強い立場に生まれな。優しい人はそっちの方が楽しい。ほんとにごめんね。

 澄子あんたにカバン買ってやるためにバイト始めたのにあんたいなくなったんだけど。代わりにうちには多額の貯金と信頼できる友達が残ったよ。あんたは最後まで私に大切なものを与えてくれる。だから休みの日に遊ぶ相手もいるし、お金もあるけど…あんたはいないわ。天国はないって聞いたけど、じゃああんたはどこにいるの?どこにもいないのかな?うちの基盤は澄子で出来てるからこれから私の生きていく時間の感情や行動にあんたは映ると思うんだ。その度にどこにもいないあんたはウチを通じてこの世界に少し影響を出す。これでどうよ。名前も残さず死んで全て終わったあんたをこの世に残す方法。ここの四人の分はうちが背負って生きていくよ。じゃあまた時間が空いたらどっかで話そうかな。バイバイ」



若い四人の人生が終わりました。それは人生を謳歌する学生たちでした。彼らは短い人生の中、時間を捨て、愛のために生きた濃厚な一生。現世にも彼らを思う人がいて、死ぬ寸前まで大切な人のことを思い続けた最高の人生。でも彼らの人生は世間の形を変えなかった、そして世間の色に染み付いたと私は思いました。

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