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本性  作者: hagisiri
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引けない、しつこい

「皆さんおはようございます。来上先生が風邪を引いたので連絡事項だけ伝えます。怪物の検査ができるようになったニュース見ましたか?今日の授業中のどこかでその検査をすることになったので呼ばれたら廊下に出て整列してください。そんなに時間は取らないと思うので素早く行動してくださいね。」と教頭先生が連絡だけ伝えて教室をさっていく。

 検査に行くのが面倒くさいとダルそうに見せるやつ、元の学校生活に戻れると歓喜するやつ、死の危険から逃れて心から安堵するやつがいる中で僕はただ一人焦ってエナちゃんの方を見る。

 エナちゃんは笑顔でこっちに歩いてきた。「まずいことになっちゃったね。」と小さな声でエナちゃんは言う。僕は急いで下駄箱までエナちゃんの手を引いて走る

「どうすんの?」僕は焦りでこんがらがった頭を整理しようとする。

「今日は早退しようかな」とエナちゃんは落ち着いて言う

「それじゃ明日からは?学校来れる?」気を遣わなきゃいけないのはわかっていても口を閉じることはできない

「まぁやばいかもね。そしたら学校以外で仲良くしてよ」とエナちゃんは笑顔で言う

「わかった」と落ち着いた、というか落ち込んで静かに返す。エナちゃんの安全と僕の学校生活なんて比べるまでもないことなんだから。


一時限目が始まり、しばらくした頃にエナちゃんは猫背でふらふらと足をあまりあげないすり足のような歩き方で先生のもとへ行く。その芝居は長年人のふりをしてきただけあって病人として完成されていた。

エナちゃんが先生に何かを伝えると「そうか。一人で行けるか?」と先生が丁寧に扱うようにそっと声をかける。

エナちゃんは何も言わずに首を横に振るのを見て「僕が保健室に連れていきますよ」と手を挙げる

「お、そうか。じゃあ頼んだ」先生は僕が出しゃばったことに少し困惑したようだったがその提案を受け入れた。


「失礼します。彼女少し体がだるいみたいで」と保健室のドアを開ける。

「あら、この後の授業は受けられそう?」保健室の先生が机の上に置いてある箱から体温計を取り出して言う。

「少し辛いかもしれません」とエナちゃんが答える

「そうか、熱はないみたいだけどね」と、この一言で一瞬早退できない可能性が頭によぎる

「まぁでも辛いなら帰ろっか」安堵する

「今朝検査の話聞いた?頑張ってそれだけ受けてくれない?その検査受けないと明日から学校来れないのよ。ほんとにすぐ終わるから」その言葉の意味を少し考えて、最悪の自体になった事を理解する。

「ほんとに辛いみたいなんで明日とかじゃダメですかね?」焦りを勘付かれないようにゆっくり話す

「なんか専門の人たちが来てるみたいで今日しかいないらしいのよ。これ逃したら結構遠くまで自分で受けに行って証明書もらってこなきゃ行けないのよ」しぶとく誘ってくる先生に苛立ってくる

「その方が楽かもしれません」エナちゃんは数滴の汗を首に伝わせながら掠れた声で言う。その汗は都合よく顔色の悪さを際立たせた。

 先生が喋ろうとしたと同時に「失礼します」と大きな茶色の鞄を持ち、スーツを着た男が保健室に入ってくる「検査は向かいの教室で行って大丈夫ですか?」と男の人は続けて話す。

「ちょうど良かったこの子もう早退するんだけど今検査してくれない?」先生が男の人の質問にも答えないまま勝手に話を進める。

「ああ、大丈夫ですよ」と男の人は茶色の鞄を開ける。

「待ってください。ほんとにキツそうで。今日はやめて欲しいです」理屈などは無い、ただ熱量だけの説得を試みる

「ほんとにすぐ終わるから大丈夫だよ。体に負担もかからない。君はそれで大丈夫?」男の人は僕を軽くあしらってエナちゃんに話しかける。

 エナちゃんは笑顔でこっちを一度見て、男の人の方を見直して頷く。「うわぁー」僕は間抜けに叫び、エナちゃんの手を引いて、出口の前に立っている男の人突き飛ばして走った。

 僕はエナちゃんの腕を凄まじい力を込めて握っていた、焦っていたからではない、僕に気を遣った気でいる彼女に激しく憤っていた。


「本当にこんなことになっちゃってごめんね」と謝るエナちゃんの涙とは比べ物にならないほど大量の汗が僕の全身から流れていた。

 力が上手く入らず震える手で家の鍵を開ける。玄関で右の靴を左の靴の踵に引っ掛けて右の靴を脱ぐ。左も同じようにしようとするが踵が滑って上手く脱げない。イラついて強引に靴を手で引っ張って脱ぐ。

 後ろからエナちゃんがゆっくりと靴を脱いで家に上がる。キッチンでコップ一杯の水道水を飲み椅子に座る。エナちゃんは玄関の前に立っている。

 焦燥感を抱えたまま黙って椅子に座っていると時計の針の音が次第に大きく聞こえてくる。

「ねえ」しばらくして僕が話し始めたのと同時に  ピンポーン  とインターホンが鳴る。数秒静寂が流れて、また   ピンポーン  とインターホンが鳴る。その次ぎにドンドンと強くドアを叩く音と同時に「太田さん。宇高さんいますか?」と若い男の人の声がする。

 その瞬間僕らを捕まえに来たことを確信しする。

他に言いたい事は山ほどあったが「エナちゃん。逃げて」とだけ言い、斜めがけのカバンを持ちわざと深刻そうな顔を作る

「多分太田くんも逃げた方がいいよ」エナちゃんは無理やり僕を抱えて窓から飛び出した。


エナちゃんは道中の風景を認識できないほどの速度で駅に向かって走った。男子校生を抱えて全力疾走する女子高生は道ゆく人には珍しく、不気味にも見えたと思う。駅に着き、急いで改札を通る。しかし電車は動いていない。電子掲示板には「怪物捜索中のため一時運行休止」と書いてある。駅の外からはサイレンの音が聞こえてくる。

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