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本性  作者: hagisiri
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あんたならどうする?

意識が戻る。コポコポと液体が静かに沸騰しいている音、鼻の粘膜を刺激するような塩素の匂いをかすかに感じる。目を開けてもソファの背もたれが視界を塞ぐ。仰向けになる。隣の部屋では怪人を見つけるためのガスを作っている。少しずつ意識を失う前のことを思い出す。

太田のこと殺したかったな。今のうちでも天国に行けるのかな。うちがしていることは正しいことじゃないのはわかってるけど、澄子も自分を殺したんだよ。うちが自殺しても状況は同じはずだよね。天国にしろ地獄にしろ澄子に会えるならもういいかな、、早く死の。地獄で持井と二人は流石に気まずいからそれだけは嫌だな。なんて考えながら体を起こす。

「お、起きた?おはよう」と組織の男の人に話しかけられる

「おはようざいます」と無愛想に返す

「目覚めていきなりで悪いんだけどお話いい?」男の人は経過審を解こうとするように優しく言う

「はい」

「かにちゃんは何のためにこの組織にいるの?」男の人

「えっと…あなたはなんでなんですか?」自分のことを知られるのが嫌でうちは聞き返す

「田中だよ。僕はね怪物に父親殺されたからやってんだ。クマの駆除みたいな感じ」軽く返す

「そうですか」うちは会話を終わらせようと面倒くさそうに言う

「えっと…かにちゃんはなんで?話しずらい?」話し方と表情からうちの心理を理解していながらも質問を続けていることが読み取れた。

「もうやること無くなったんで指示待ちです」うちはわざとらしく業務的に答える

「あらら、自殺とかしようとしてないよね?」男の人は心配そうにうちを見る

「あなたも一度くらい考えたことあるでしょ」嘘をつくのも何だか乗せられている気がして曖昧に答える

「田中 聡だよ。そりゃ子供の時は一回くらいあるよ。でも寝たら忘れるでしょ普通」男の人はこの言葉を、自殺したい、という意味にとらえた様に会話を続ける

「じゃあうちも明日には忘れてます」うちは相手に合わせて適当な相槌を打つ

「自殺されるくらいならカウンセリング受けてもらって普通の生活に戻すから相談してね。絶対だよ」言った男の人はやっと部屋から出ていく。

 溜まっていたバイト代で買い物をしようと部屋を出て長い廊下を歩き、いちばん大きなドアを開けて外に出る。そこには木や草が生えるばかりで地面も舗装されていない山道が続いていた。この建物は山の中に立っていたらしい。


しばらく山の中を歩いていると男の人たちの声が聞こえる。

「今すぐこいつ手当しろ。血がやばい」と慌てた様子で仲間たちと話している。好奇心が湧き覗いてみると、そこには体に大量の穴を空けた怪物の死体とそれを囲うように組織の人たちが立っていた。

 組織の中の一人はお腹から大量に血を出していて、まともに呼吸もできていないようだった。うちは急いできた道を辿ってさっきの建物に戻る。

ドアを開けると「あら、おかえり。外出てたんだ」とさっきの男の人がいう

「すみません。あなた怪物駆除してるんですよね。次いつですか?」うちが聞く

「えっと。まだかにちゃんは連れて行けないかな」と申し訳なさそうに男の人はいう

「なんでですか?」抗議する

「まだ女子高生でしょ。危ないよ」男の人はさも常識を語る様に言って見せた。

「もう1匹殺したことあります」うちは面接で自分をアピールするようにかの実績を引っ張り出す。

「相手が抵抗してこなかったからね。ほんとはもっと凶暴だよ。」持井の事を知っている風に男の人はいう

「うちは友達に会うために天国に行きたいんです。死んでもいいので手伝わせてください」さっきまでのつっけんどんな態度を忘れ熱心に伝える

「天国はね、ないよ。しかも僕は子供に正義を掲げた殺しみたいなことはしないで欲しいんだよね」男の人はいう

「じゃあいいです」天国の存在を否定されたことに不貞腐れ、力任せにドアを開け外に出る。


 山の中を歩きながらふと考える「なんで立は抵抗してこなかった?澄子が死んで鬱になってたからか?それなら自殺してるよな。うちが澄子とあいつの友達だからか?自分が殺されそうなのにそんなこと考えないか。何も食ってなくて腹減って動けなかったのかな?澄子にも口付けずにいたんだから。」そんな理由なわけがない。人を殺した怪物に限ってそんな愛のある理由で動くはずがない。他の理由を探さなくちゃ。あいつが澄子を殺したんだから、あいつがなんでうちに抵抗しなかったのか、あいつにとって利己的な理由を探さなくちゃ。澄子の好きだった人を殺しちゃった理由…うちがあいつを殺した理由見つけなきゃ。澄子。幸せそうに死んでたのに。澄子の残したもの壊しちゃった。太田とエナちゃんのとこいかなきゃ。

大急ぎで山の中を突き進む。でも木の影が徐々に縮みまた伸び始めても山の出口は見つからない。ついに力尽きてその場に倒れる。


 目を覚ます。さっきと同じ音、同じ匂い、同じソファ「おはよう。大丈夫?」と男の人が声をかけてくれる

「おはようございます」うちはさっき目覚めた時と同じようにベットに倒れたまま無愛想に返す

「なんであんなところで倒れてたの?山から出たいなら声かけてくれればいいのに」男の人は心配する様に言った後呆れたように言う

「いえ、別に」すかして返すがダムが決壊したように大量の不安が押し寄せ、全身から冷え切った汗が湧き出る。

このまま組織を脱退して普通に生きていくことはできるのだろうか?組織にうちの名前は知られている、学校には行っていない、それにここはテロ組織だ、警察に見つかれば捕まるのも当然だ。それだけじゃないここを勝手に抜けて大丈夫なのだろうか?この大規模な犯罪者集団から簡単に抜けることはできるのだろうか?殺されるかもしれない。やっと自分の異常性に気づいた。太田とエナちゃんに謝んなきゃ行けないのに。


 一睡もできないまま朝が来る。

「おはよう。ちょっといい?」男の人が声をかけてくる

「大丈夫です」と返事をする

「今朝のニュースとか見た?」と男の人が言う

「見てないです。」不安を悟られないように無愛想に返す

「なんかね。国が怪物見分ける方法見つけたみたい。」男の人がどこか嬉しそうに話す

「へぇそれで」このニュースでこの後起こる可能性を色々考える

「それで国が怪物を見つけ次第駆除する流れになってるから、この組織も人減らそうってなったんだよ。それで犯罪歴がない人は普通の生活に戻ることになったんだけど、かにちゃんどう?」男の人が何かを期待するようにうちの目を見る

「じゃあ戻ります。やりたいこともないんで」ぶっきらぼうに言うが内心安堵する

「じゃあ家まで送っていくね」と男の人が車に案内してくれる。


助手席でエンジンの振動を感じながら質問する「あなたは怪物に恨みを持っているんですか?」と男の人に聞く

「田中だよ。いいや別に。なんで?」田中さんが答える

「でも父親殺されたって」うちは膝下て手遊びしながら聞く

「そのときは恨んでたけどね。もう何年も経つし、親父生きてたときは幸せそうだったし、まぁこんなもんでしょ」と田中さんは淡々と返す

「じゃあわざわざこんな違法な活動しなくていいんじゃないですか?」うち

「これまでは怪物を殺す仕事なんてなかったんだよ。僕には怪物を駆除することしかしてこなかったからね。普通の仕事はできないよ」と田中さんは自虐的に言う

「これからは怪物見つけたら駆除できるようになりましたよ。一般人として暮らそうとは思いませんか?」うち

「色々やったからね。今更普通に生活しようなんてのは都合が良すぎるかな?」と田中さん

「でもそれは仕方なかったんじゃないですか?」田中さんを庇う様に話す。

「いきなりすごい話してくれるじゃん。なんか心配なの?」田中さんは見透かしたように言う。その会話のテンポにどこか澄子を思い出す。

「うち友達殺しちゃいました。普通に生きてて大丈夫なんですかね?正直な話、一緒に犯罪者仲間として普通の生活に戻って欲しいです」自分の膝を見つめながら言う

「なるほどね。別に僕が一緒に戻ったところで殺した友達は帰ってこないし罪悪感も消えないよ。死んじゃったらもう会えないの。悲しいけど現実そんなもん。幸い、かにちゃんには犯罪歴がないからね。これからできる友達と楽しく遊んだりボランティアしたりして罪悪感を薄めていきな。みっともない生き方だけど根っからの悪人以外はそれが一番楽な生き方だと思う。」うちを慰めるように田中さんは言う

「でもうちが殺した人とその友達はうちを恨んでる。そんな中で安心して夜眠ることはできません。自分勝手なのは理解しています。でも誰かに助けてほしいです。」うちは少し大きな声で話す

「死んじゃった人はねもう終わったの。何も感じられないんだよ。だからかにちゃんを恨んでもいない。殺した人の友達には謝ればいいよ。もし許してくれなくて復讐してくれるならいいじゃん。そこでかにちゃんは罪を償ったことになるんだから。でも多分大きな復讐はないと思う、人を殺すほどの愛を持った人なんてそうそういないから」と田中さんはまっすぐ前を向いたまま誰かを思い出す様に話す

「じゃあ田中さんも戻ってこれるじゃないですか」一般的な人より圧倒的に優しい田中さんに幸せになって欲しくてうちは誘う様に言う

「おっ僕の名前覚えたね。田中 聡だからねせっかくなら覚えてから帰ってね」田中さんはわざとらしく明るい口調で話して答えを誤魔化した。


しばらくして自分の家の前に着き、車から降りてドアを閉める「さっきも言ったけど、死んだら何も残らないから生きてる友達は生きてるうちに大切にしてあげてね。じゃあバイバーイ」と窓を開けてそれだけ伝えて走っていく。うちは車の後ろにつたナンバーを何となく眺めながらこれからすることの覚悟を決める。

「二人に謝りに行こ。学校にいるかな?」

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