それうまいの?
探す場所も特に考えていなかったのでとりあえず立の家に向かう。到着すると警察が周りを囲んでいるのが見える。
「あの〜すいません。ここ友達の家なんですけど何かありましたか?」と一人で立つ若い警察に白々しく聞く
「ニュース見てない?この家で女子高生が怪物に殺されちゃって」警察が言う
「ここ住んでるの男子ですよ」警察に言う
「詳しいことは話せないから。ごめんね」警察は俺の視界を塞ぐように俺と家の間に立つ
「すみません。学校の先生から事件のことは聞いていました。ここに住んでるやつと連絡取れなくて見にきました。心配で…探してるんです」僕が正直に話す
「なるほどね。なんかここに住んでた子と仲良い証拠ある?」と状況を察して周りの人に聞こえないように小さい声で警察に聞かれる
「これとかどうでしょう?」と今まで遊びに行った写真を見せる
「あ〜なるほどね。今から僕が言うこと誰にも言わないでね。普通怪物に食べられる人ってほとんど何にも残らないくらいしっかり食べられるんだけど、今回は首元少し齧られただけでほぼ綺麗な状態だったんだよね。」警察が僕に耳打ちする
「ありがとうございます」と僕が去ろうとすると警察が呼び止める「ちょっと待って。代わりと言っては何なんだけど、この家の主と被害者について教えてほしいな」お礼代わりに警察が聞く
「あ、はい。二人は付き合っていました」と正直に話す
「この男の子がこの家の主でこの女の子が被害者だよね」と写真を指差して警察が聞く
「そうです。クリスマスなのでデートしてたんだと思います」と僕
「そう、ありがとね」警察が頭を下げる「ついでにこれあげちゃう。絶対誰にも言わないでね」と可愛いらしい封筒をくれる。
家に帰り本格的に立を探すために遠出の準備をする。
「何してるの?」とエナちゃんが見に来る
「立を探す準備」とそっけなく返事をする
「危ないんじゃない?」エナちゃんは心配そうに言う
「警察の人に話聞いた。由根さんほとんど食べられてなかったらしい。食べる目的で殺されたわけじゃないなら立じゃないかもしれないでしょ」僕がカバンに携帯食料を詰めながら言う。
「そう…じゃあ、あたしもついて行く」とエナちゃん「え?」と驚いて振り返る
「申し訳ないけどあたしはあんまり持井くんのこと信じてないからボディガードとしてついて行く」僕から目を逸らして言った
「…わかった。よろしく」
今日は思い出の遊園地に行くために少し早起きした
「おはよう、今日みんなで行った遊園地行くんでしょ?」とエナちゃん
「そう」と僕
「そんな荷物いらなくない?」とエナちゃん
「やっぱそうか」と僕は昨日勢いで作った荷物をほとんど置いて家を出る。
遊園地に着き、入場時間まで待っていると遠くからフラフラとボロい服を着た痩せこけた男の人が歩いてくる。
少し気味が悪くて目を合わせないようにしていると男が隣まで歩いて来て話しかけてくる
「お久しぶりですね」痩せこけていて雰囲気が随分と変わっていたが、男の顔をよく見ると前に遊園地であった大きなカバンを持った男だと気がついた。
「捕まったんじゃないの?」と少し震えた声でエナちゃんが言う。
「あれ?ニュース見てないんですか?脱獄したんですよ」掠れた小さい声で話し、ニヤニヤ笑う
「警察に通報します」僕がスマホを取り出す
「待ってくださいよ。今はお二人に危害を加える気力も体力もないですよ」僕らに見せるように両手を広げる
「関係ありません」僕がスマホの操作を続ける
「じゃあ特別にいい情報教えますよ」交渉しようとする
「信用できません」僕は一蹴する
「この間一緒に遊園地来てた男の子が空港向かってましたよ」男は僕の言葉を無視して話し続ける
「通報はしますよ」僕が言う
「何でよ、ひどいな」気にも留めない様子で言う「結局最近は怪物が暴れてるでしょ。本当にどうにかしなきゃいけないと思ってるんですよ。」と男が続ける
「それでもあなたは犯罪者です」と僕
「そっか。友達探し頑張ってね」と手を振る男に背を向け公衆電話によった後、空港へ向かう。
空港へ向かうためにバスに乗りたい。次のバスまで間に合うか怪しいから少し早足でバス停まで行く。バスの到着する予定時間の5分前にバス停につく。バスの到着は相当遅れて予定の7分後についた。
そのバスの席は結構空いていて僕とエナちゃん二人並んで座れるスペースがあった。エナちゃんを先に座らせてその後に僕が乗る。
エナちゃんはバスを待ってる間周りをキョキョ見ながら震えていた。バスの中でもエナちゃんはネットニュースを確認し続けている。安心させようと声をかけるためにエナちゃんの方を向く。
「エナちゃん大丈夫だよ。あいつ瀕死だったじゃん」と少し明るく言う
「そうだよね」とエナちゃんが無理に微笑む。その顔の後ろ側では立が歩いるのが見えた。僕は急いで降車ボタンを押す。
僕は急いで追いかけたが結局、立は見つからず家に戻ってくる。
「立ここら辺に戻ってきてると思う」僕
「どうする?今日のうちに探しに行ったほうがいいかな?」とエナちゃんが言う
「そうだね。またどっか行っちゃうかもしれないしね」僕
「でも朝早かったし少し疲れたでしょ。少し休んでからでもいいんじゃない」エナちゃん
「そうだね。少し寝るね」と僕はシャワーを浴びて眠りにつく。
夕方の鐘が頭の中に響き、目がさめる。
「おはよう。よく寝たね」エナちゃん
「やば、寝過ぎた」焦って体を起こす
「いいんじゃない?これからしばらく歩くしね」エナちゃんが机にお米と味噌汁を用意してくれている。
それをかっこんだ僕は「じゃあ早速出るか」と言い二人で家を出る。
まずは立を見掛けたあたりを適当に歩いてみる。見つかる気配はなく、ようやくここで僕たちが無謀なことをしていることに気づく。
次は立の家を見に行ってみる。テープとビニールで覆われていて中にはまだ入れそうになかった。
こんな事をしているうちに日が落ち切って探すことが難しくなった。
「周り見えにくくなったね」帰りたければ帰っていいよ、と暗に伝える
「もっと早く起こせばよかったね。ごめんね」エナちゃんが申し訳なさそうに言う
「全然、寝てたの俺だし」僕「じゃあ今日は最後に学校だけ行こうか」と続け、エナちゃんはそれに了承し学校に向かう。
学校に着き、門を通過しようとしたところでゴーンと大きな音が校庭の方から聞こえる。恐る恐る見に行くと、そこには痩せたみっともない格好のあの男が倒れた立の隣に立っていた。
「怪物でも爆弾直撃はヤバいっぽいよ」と男はこちらに気がつき少し微笑み、言う
「何してるんですか」警戒して距離をとりながら話をする
「これ君の友達でしょ?話する?」男は倒れた立を指さして言う
「話すので離れてください」男を睨む
「せっかく会わせてあげたのに」男は不満そうに言う
「どうゆう意味ですか?」と僕が聞いたのと同時にパトカーのサイレンが聞こえ警察が聞こえる。男は何も答えず焦って逃げていった。
こちらにくるのかと思われたパトカーの音は尾を伸ばしそのまま離れていく。
「立?久しぶりな感じするね」僕が話しかけても立は寝たまま何も言わない「意識はあるでしょ?」僕が続けると立は小さく頷く
「知ってると思うけどさ…由根さん立の家で殺されてたんだって」僕が言うと立の体は大きくなり、牙は伸び、腕は太くなり、立ち上がった。
「立を疑ってるとかじゃなくて、ちゃんと話聞きたくて。いきなりいなくなった理由とかさ」落ち着かせようと不自然に無理やり優しく話しかける「あの日何があったの?」と続ける
「ずるいよな、お前」表情も読み取れなくなった立が口を開く
「なんでそう思う?」無理やり口角を上げている僕
「何が起きたかなんてそのままだろ。俺が怪物で澄子が人間なんだから」と立が言う
「それなら食べてるはずだろ?」僕
「俺はな、澄子を初めて見た時可愛いと思ったんだよ。普通に人に恋したと思ったんだよ」と話し始める
「そうだよな。仲良かったもんな」慎重に相槌を打つ
「それから色々あってあいつと付き合う事になって嬉しかった。あいつと一緒にいたいと思ってたし。それであいつと一生暮らしたいから人間みたいになりたいと思ってたんだよ。この感情がある時点で俺は完璧にヒトになれたと思った、純粋な恋心を人に向けることが出来たと思った」と立が立ったまま言う
「出来てただろ?」僕
「は?マジでうざいな」と立が静かに低い声で言う「ごめ‥」と謝ろうとする「お前知らないだろ。空気を止まない人間より怪物の方が周りに気つかってること。クソ疲れんだよ。どいつもこいつも一人食われたくらいで騒ぎやがってよ。こっちには全く配慮しないくせに何かあればすぐ被害者面すんの」と大きな声で立
「悪かった。落ち着いて話がしたい」焦る
「何の話だよ」とまた静かな声で立
「由根さんの話」弱々しく言う
「だからハッキリ言わせんなよ。性欲かと思って澄子と付き合ってたのに食欲だったんだよ。俺ら怪物に愛なんてなかったんだよ。気持ちわりぃ」と尻すぼみに弱くなっていく立
「でも食ってなかったじゃん」宥めるように言う
「だから人の気持ち考えろって。あの死体を食わなきゃまだ食欲のために一緒にいたわけじゃないって思えるだろ。わかんねぇか。自己中のクズばっかだもんな。きもいし、もう全員殺すか」とこちらを少しの間睨みに飛びかかってくる。
驚き体制を崩して地面に強く倒れ、右手首だけでは支えられず頭を打つ。間一髪でエナちゃんがぼんやりとした意識の僕を抱え逃亡する。
目が醒める「おはよう。もう夕方だよ」とエナちゃんがカーテンの前に立っている。
「おはよう。昨日俺たち何してた?」僕は恐る恐る聞く
「一緒に持井くん探しに行ってたでしょ。そして昼に帰ってきて少し寝ちゃったね」とエナちゃん
「そうだよね。ちょっと寝過ぎちゃった」夢だったと安堵する
「早めに出てきなね」とエナちゃんが言い身体を起こすためにベッドに手をつくと手首に強い痛みを感じる
「った」?「僕たち持井ってもう見つけた?」と僕
「えっと‥」とエナちゃんが言い籠る
「は?なんで隠そうとしたの?」と僕少し苛立った口調でいう
「辛いかと思って…」とエナちゃん
「自分が怪物でこの家追い出されたくないからじゃないの?」心にも無いことを勢いに任せて吐き出す
「それは違うよ」エナちゃんが強く否定する
「立が由根さん食ったんだぞ?信用できるかよ」頭をぐしゃぐしゃと掻きむしる
「…そうだよね。ごめんね。今までありがとう」と言ってエナちゃんは家を出ていった。
しばらくベットから上半身だけ起こして考える。
あいつ僕を利用してた。人の恋愛感情を餌にする怪物だった。映画見たり一緒にテスト勉強したり遊園地行ったり一緒にご飯食べたり学校のイベントも一緒に頑張って友達も増えて…高校生活が信じられないくらい明るくなって楽しかったなぁ。…僕、死にたくないな。エナちゃんだけ特別な個体って可能性はないのかな?しばらくすればもう過去のこととして落ち着けるものなのかな。この一時的な恋愛に命をかけるのは馬鹿馬鹿しいよな。そのうち傷は回復するんだからこの件は忘れるまでしまっておこう。
…確かめる方法あるよな。遊園地の帰り、最初に男に襲われた時に持っていたカバンを取り出す。カバンを持ち、家を出てエナちゃんを探しに行く。
日はもう落ちかけている。オレンジ色の地面に長く伸びた自分の影を見ると自分も怪物になったように思える。探すと言っても行く場所なんて一つしかない。




