どうよ、これ
昼休み
四限が終わり教科書も片さないまま職員室に向かう。
「失礼します。来上先生いらっしゃいますか?」2、3秒沈黙が続いた後、来上先生がこっちに歩いてくる。
「場所を移動しますか?」と来上先生「お願いします」と俺が答えると空いている教室に案内される。椅子に座るとすぐに来上先生に悩みを相談する。
「先生みんなと仲良くするなって言ってましたよね?澄子が今まで通りみんなと仲良くしてるんです。危ないんです。止めようと努力はしているんですがどうにもならないんです。どうやればみんなを澄子から離れさせることができますかね?」と必死に早口で話す
「落ち着いてください。私は人付き合いが多いと事件に巻き込まれる可能性もあるし危ないから、無理に気を使って関わり続けるくらいなら関係を切った方がいいと言ったんですよ。
それに人間に限っては命の価値の大半は感情にあると私は思いますよ。つまらない人生を千年続ければ地獄の様な苦しみですが最高に楽しい人生なら半年でも天国にも存在しないほどの快楽や幸せを感じられると思っています。
持井さんなら澄子さんが自分の命より友達を優先したい気持ちは理解できるでしょう?彼女は今仲良くしている人たちと命懸けで関わることを決めたんです。
その澄子さんの選択に他人が口出しするのは間違っていると思います。しかも澄子さんあんまり仲良くない人と話さなくなってきているので、持井さんが無理やりひき剥がさなくても自分で人間関係の整理くらいできていると思いますよ。」来上先生は丁寧に答えてくれる。
「仮に澄子に何かあったら…俺はどうなるんですかね?」最悪の想像をしながら話す
「あなたが殺したりしない限り何も起こりません、悲しいし、辛いでしょうがあなたは変わらず生きていきます。それは澄子さんも太田くんも同じです。恋人や親友が死んでも 悲しい だけで話が終わってしまうから命を大切にするんです」俺の目を見て話す
「じゃあ無理矢理でも澄子を長生きさせたらどうなりますか?」自分のしていた事が間違いだと確かめたくて質問する。
「澄子さんは八十年前後で生命活動が終わって生ゴミになります。悲しくもないと思いますよ。何も大切にするものがない人生なので」真剣な顔で言われる。
「この話が終わって昼ごはんを食べたら澄子に謝りに行きます。話を聞いてくれてありがとうございました」と話を終わりにしようとすると「ちょっと待ってください。どうしてあなただけは澄子さんと関わる前提だったんですか?」と部屋を出るのを止められる「それは…」と言い籠っていると割り込むように「それは宇高さんも同じでしょう」と来上先生が言う。完全に予想外だった。
昼休みの終わりに教室に戻ろうとすると廊下に勉強を終えた三人に会う。
「お疲れ」澄子は俺と目も合わせないで二人より先に教室に入る。
「二人とも変なことに利用しようとしてごめん」頭を下げる
「いや澄子から話は聞いてたからウチは良いんだけど澄子エグいキレてるから気をつけてね」とかにさんが忠告してくれる
「ありがとう慎重に話すわ」とかにさんにお礼を言って澄子と話す心の準備をして教室のドアを開ける。
「利用ってなに?」太田がかにさんに質問しているのを聞いて少し緊張がほぐれる。
教室に入り授業の準備をしている澄子に話しかける
「澄子ちょっと話していい?」声の震えをなんとか抑える
「もう授業始まるけど?」と澄子がそっけなく返す
「放課後なら話せるかな?」と恐る恐る聞く
「かやと勉強するから無理」と返される。何も言えなくなり隣にただ立っていると次の教科の先生が入ってくる。
「授業始まるから早く席戻って」と澄子が冷たく続ける。
俺は澄子の腰を持ち上げて廊下を走ってさっき来上先生と話していた空き教室までいく。
ふざけてたわけじゃない、ちゃんと話す時間が欲しかった。
「バカじゃないの?」と澄子は驚いたように大きな声で怒る
「話す時間が欲しい」落ち着いた声で言う
「今から授業なんだけど」澄子がまた無愛想に言う
「お願い、少しだけ聞いて欲しい」俺が頭を下げたタイミングと同時に授業開始のチャイムがなる
「まぁいいわ。何?うちの成績より大切なの?」さっきまでより感情的に言う
「勝手にかにさんとか宇高さんと引き剥がそうとしてごめん。本当に怖くて」震える右手を左手で押さえる
「なんでいきなり手のひら返してんの?一人が寂しくなったの?」と澄子
「さっき来上先生に相談したら自分がリスクしか見てないことに気づいた」と俺
「そうよかった。じゃあ明日からみんなで勉強しようね」澄子は今まで見せた事がないくらい穏やかに微笑む
「じゃあ教室戻るね」澄子は教室を出ようとする
「ごめん。違うよね」俺が呼び止める
「何?いいよ。もう解決」と澄子が振り向かないまま返事する
「別に引き剥がそうとしたことでそんな怒ってるんじゃないでしょ?」俺
「わかってんならそんなキモい喋り方しないでよ」震えるようなぼやけた声で話す
「嘘ついてごめん」どんな返事をすればいいか分からずただ謝る
「嘘はついてないでしょ。あんたは嘘をつかなきゃ裏切りにはならないと思ったんでしょ。だからうちに隠れて勝手にあの三人と縁を切ろうとしようとしたんでしょ。しかもそれに失敗したらうちとあんたの関係が切れることも想像してなかったんでしょ。
目的のためにうちの気持ちを考えるのをやめたでしょ。付き合ってるのに。多くは望まないよ、常に互いのことを考え続けるだけで幸せになれるくらい単純な関係だと思ってたのに」涙を流している澄子の背中を見る
「ずっと澄子の事は考えてたよ」静かに弁明する。
「じゃあなんでうちはこんなに傷ついてるの?」課題の解き方を聞く時と同じ口調で俺に言う。
「それは状況が大きく変わったから混乱して」みっともないと分かっていても言い訳は止まらなかった。
「じゃあ世界が変わればうちらはもう友達にもなれなくなるかもしれないの?」と澄子は涙を流しつつも落ち着いた様に言う「それは…」と言い籠る「うちは世界に電気が無くなってもあんたと一緒にいたいよ」と澄子は泣く
「本当にごめん。世界が変わってあの三人も澄子も変わっちゃうんじゃないかって思ったら怖かった。だからせめて澄子だけでも世界から隔離して変わらないものにしようとした。世界は変らなくたって人は変わるのにね。信用できなくて本当にごめん」と気づけば視界がぼやけている
「いいよ、助けてくれようとしてくれてありがとね」澄子が言う
「この後どうする?」と俺
「顔ぐちゃぐちゃだしこの授業終わったら荷物取って帰る」と澄子
「太田にとって来てもらうか」と俺
「図々しすぎ」澄子が小馬鹿にしたように笑う
テスト二日前
朝起きてシャワー浴びる。髪を乾かしてスマホでニュースを見る(会社員男性が怪物に襲われ死亡)(広告 あなたに合った仕事の探し方!)(マンホールから有毒ガス発生 小学生一人が意識不明の重体)(Wウイルス感染拡大)ある程度ニュースを読み終わったところでテスト勉強を全くやっていないことを思い出す。
テスト返し
結果は二日間にしては結構頑張った方だったと思う。平均で72点くらいだった。
「立、テストどうだった?」と太田が声をかけてくる
「まずまず。数学がよくて英語がヤバめ」俺が解答用紙を見せる
「今回はね僕もかにさんも数学85点超えてます」と太田
「まじ?負けたんだけど」驚いて大きな声を出す
「79点?まぁ頑張ったじゃん」と太田がここぞとばかりにマウントを取ってくる
「うざすぎ」俺が笑う
「今度みんなで綺麗な海に鯨見に行かない?」と太田が言う
「行くに決まっとろうに」と俺
「おっけい。日にち決めたら言うわ」と太田




