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本性  作者: hagisiri
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初めまして

A1


みんなが大好きな命が一つ消えた、ついこの間消えた、巷で噂の体格の良いインフルエンサーだった。おぞましい怪物に喰われていたらしい。そいつは人に擬態しているんだと、そこら辺にいる私たちと同じように。


「入学おめでとう」僕は実家から少し離れた高校に合格した。体育館で行われていた入学式が終わり新入生は先生に先導され教室まで向かう、この時間がすごく不安で仕方がない、主に友達のことだ、仲の良い人はできるだろうか、できたとしてその人は僕を友達としてみてくれるだろうか、その確認はどうやれば良いのだろうか、そんな方法ないのだろうな。一人くらい連絡先交換するのが普通かな?死んでしまえたら楽なのにそれほど綺麗な度胸もない。厨二病まじりの考え事をしている間に教室についた。

女性が黒板の前に立っている。「皆さん始めまして、私はこのクラスの担任になった来上 琴音(らいじょう ことね)です。」琴音が仕切るように話し出す。「まず始めに自己紹介をしましょう。まず私から、来上 琴音です趣味は動画サイトで動物を見ることです。」来上琴音に続き右前の人その後ろと続いて自己紹介をしていく。「宇高 えな(うだか えな)です。趣味は料理です。」その女性の透き通った声や肌を見て、聞いて、ヒトの形の理想があるような気がして、自己紹介が進んでいることにも気づかぬままただ呆然としていた。「・・ぎのかた」「次の方」琴音の声で気がつく「あぁやべ、太田 翔太(おおた しょうた)です。趣味は音楽を聴くことです」その後も自己紹介は続いき最後の一人が話し終わった。「近くの席の六人と少しゲームをしましょう。」来上琴音が言った。親睦を深める為のレクリエーション的なものだ。「ワードウルフをしっていますか?ルール説明をします。まずは周りの人にわからないように一人一人に単語が伝えられます。六人の中の五人は同じ単語ですが一人だけ特徴は似ているけれど少しだけ違う単語が混じっています。例えば五人はりんご一人だけ梨とかです。それをみんなで話し合ってお題の違う一人を探し出します。その時点で選ばれた人がりんごなら梨の人が勝利です。もし梨の人が選ばれてしまっても自分以外の単語がりんごだと当てることができたら梨の人の勝利です。りんごというワードを隠し切り、梨の人を見つけ出した時のみりんご側の勝利になります」こんな流れでワードウルフが始まった。僕にはカブトムシというお題が流れてきた。「いや〜カッケー感じだね。ワンチャン血が出る」最初に口を開いたのは(持井 立(もちい りつ))彼は明るく元気で初対面ともハキハキ話せる、いわゆる陽キャだ。「みんなはどんなかんじ?」持井が全体を見渡して聞いた。各々が自分のお題についてはらす中で僕は「どうだろ、へへっ」カブトムシの特徴すら伝えられないことに嫌気が差す。

なんだかんだレクリエーションが終わった。来上琴音が口を開く「最後に少し配布物があります」

教科書と一緒に教員紹介や保険便りに加え学級通信などが配られた、その中に怪物に注意と書かれた紙が入っていた。見分けられないのにどうしろと・・・

 まだ昼だ、特にすることもないので土地勘をつける為に少し散歩でもすることにする。家から徒歩五分もかからない場所にコンビニがある、十五分程度のところにスーパーもある、二十分強のところにショッピングモールもある。「けっこう住みやすい場所だな、友達とかと遊びに来れるといいな。」なんて小さな声で呟きながら歩いていると右に廃墟が見える。少し近づいて建物の中を凝視する、おそらく元はホテルなんだと思う、中にある地元の祭のポスターが色褪せて少し不気味になっている。あまり近づきたくないけどなんかちょっと落ち着くな。

一ヶ月後

 朝起きて枕元にあるスマホを確認する、七時五十分ギリギリ間に合いそうなこの時間が一番焦る、歯磨きと洗顔と着替えだけすまし急いで家を出る。

学校生活にも慣れてきた。「その声りんちょどのではないか?」国語の先生が読み上げる。先生の名前は覚えていない(山なんとか)みたいな感じだった気がする。この文章を読み終えたらグループワークがある、そこで宇高さんと一緒になれる。毎時間この時間があるから僕はこの授業が好きだ。最後まで読み終え「何故りんちょは人ではなくなってしまったのか」という議題グループワークが始まった。とは言っても別に何も話さない、明るく仕切っている人に聞かれた時に当たり障りない考えを言うくらい、そのくらいが普通だよね?だって宇高さんも同じだから。

 授業は終わり帰りのホームルームで琴音が話し始める「もうすぐこのクラスでの最初のイベント、体育祭の練習が始まります」僕は知っている学校のイベントは本気でやればけっこう楽しいことを。明日以降の体育では体育祭の練習をするらしい。今日はいい日だった。

 次の日

「今日はリレーのバトンパスの練習をします。前から男女二人づつでグループを作ってください」体育の先生が指示する。ラッキーまた宇高さんと一緒になれた。

 十メートルほど走ってバトンを渡す練習をするらしい。実際にやってみたが宇高さんの足が速く追いつけない、かなり恥ずじかしかったが同時に宇高さんの足の速さに憧れた。「すいません追いつけなくて、順番変えてもらえますか」宇高さん軽くお願いした「もちろん構いません、こちらこそ気が利かずすいません」宇高は少し慌てたように答えた。情け無い話だが順番を変えた後は驚くほどうまくバトンがまわった。

 帰りのホームルームで本番のクラス対抗リレーの走る順番を決めることになった。男子をまとめてくれているのは持井だった。「誰かアンカー走りたい人いる?」誰も手をあげない。それはそうだ。無駄に責任を負いたくない。「〇〇おまえ足速かったろ」持井はかたっぱしから声をかけていく。最終的には持井の仲間内から足の速いやつを見つけ出したみたいだ。僕はそれなりに足が速かったのもあり男子の一番最初になった。とは言ってもこのルールでは最初に女子が走り女子が終わったところで男子がそのまま受け取り走り続けると言うものだから普通にド真ん中を走るだけだ。

 女子の方はまだ決め終わっていないようだ。向こうを仕切っているのは(由根 澄子)だった。しっかり周りの意見を聞きながら端っこにいる人にも声をかけしっかり話し合いをすすめている。結局最初に走るのは由根さんになったらしい。そんなことより問題は女子の最後が宇高さんであることだ。前回の練習では全く情け無い姿を晒したわけだが今回は僕が前なので関係ないもはや嬉しいまである。

 次の体育の時間

 またバトンパスの練習をする、今回はリレーの走順で前から四人ずつグループになっていく感じだった宇高さんもいる。嬉しいね

前回よりすごくスムーズにバトンを渡すことができた「足速くなったね」宇高さんが僕に言う。一緒になっただけでも嬉しいのにおまけにそんな言葉をかけてもらえちゃった。子供の頃買ってもらえたフエラムネを思い出した。「ありがとう、ちょっと練習したからね」少しにやついている気もしたが隠さず返事をする。宇高さんは「そっか、偉いね」少し安堵したように僕を褒めた。「そこまで、かたずけてー」体育の教員が指示を出し今日の授業は終わった。初めて宇高さんと話してウキウキで教室に戻る。次の授業のため理科室に向かう最中クラスの女子の話し声が聞こえた「今日見てたんだけど宇高さん少し足遅くなった?」「ウチもそんな気がしてた、今でも十分速いんだけどね、最初の練習の時男子くらいの勢いで走ってた気がする。」きっと僕に気を使ってくれたんだ。恥らうこともせず喜んだ。チャイムが鳴り慌てて理科室に駆け込んだ。普通に授業をこなし教室に帰る廊下で宇高さんが「放課後の練習もがんばろうね」といきなり話しかけてきた。もう仲良しになれたこと確信した。白湯を飲んだ時のような内側からくる爽やかな心地よさがあった。 

 次の日

 「〇〇県××市で怪・・・」朝、学校につきやることもないのでスマホでニュースを見ていた「おはよう」あまりに透き通っている声で呼ばれたもんだから振り向いてみた、宇高さんだった、「なんか面白いニュースあった?」話しかけられたことにも驚いたがそれ以上に宇高さんがこんな陽気に人に話すことに驚いた。「この映画売り上げすごいことになってるって」さっき見たニュースの中から適当に一つ見つけて話した「へぇ、そうなんだ。面白そうだね」あまり関心がなさそうに返事が返ってきた「一緒に観に行こう」と言える訳もなくうまい返しの言葉を探していると「ありがとう またあとでね」去っていってしまった。また普通に会話を続けることができなかったと自己嫌悪に陥る。

 次の日

 「昨夜未明、Aガスを積んだトラックが転倒し、Aガスを吸った数名が意識を失いました幸い命に別状はないようです。六時三十分っ六時三十分っ五月十三日水曜日、朝ニュースのお時間です」ニュースを聞きながら朝ごはんの支度をする、フレンチトーストとクソ苦いコーヒー用意する、食べ終わった後歯を磨き、朝風呂に入る、あがってからドライヤーで髪を乾かし制服に着替える。今日、僕は宇高さんを遊びに誘う。

 学校から

 クラスに人がいない放課後のタイミングを見計らって深く深呼吸して宇高さんの方へ歩いて行く「宇高さん今度映画見に行かない?」宇高さんが大きく目を開き口角は少しも上がっていないオオタチヨタカみたいな顔でこちらをみている、流石にいきなりはキモすぎたかもしれない、胸がドキドキして耳元でこりこり鳴っている「今度の日曜日でいい?」八秒程度間が空けた後に宇高さんから返答が返ってくる。「もちろん」反射的に何も考えないまま呟いた。しばらくして映画に誘えたこと理解した。

 ウキウキで家に帰っていた道の途中、全てがうまくいっている全能感のようなものを感じながら歩いている途中、映画館のあるショッピングモールを見てみようといつもと違う道を通っていた、前に見た廃墟が目に映る、映さないようにしたかったが今は割れてもうガラスなどなくなっている窓枠から、宇高さんの姿が目に映ってしまった。さっきまでの恐怖や宇高さんが廃墟にいる不信感なども忘れてただ歩いた、心を小躍りさせながら。一つ階段を上り右に曲がり歩いていると、奥の部屋から物音がする。宇高さんに「なんでこんなところいるの?」なんて話しかけようなんて少し会話の用意して部屋の中を見た。そんな準備に意味はなかった。そこに確認できたのは二足歩行ではあるものの体格と目玉が異常に大きく、耳は釣り上がり、長く鋭い牙の生えた人外だった。僕は走った、走りながら考えた「なんだろうあれ」「怪物はあれのこと?」「肌はすごい綺麗だな」もはやこの際どうでもいいことばかり考える。そして逃げ切れるわけもなくつかまった。「あぁ悲しいな、死んじゃったな」「そういえば宇高さんは?食べられちゃったよな」諦めてただ面白みもない走馬灯と見ている僕に怪物は言った「誰にも言わないでね」理想的な透き通った声だった。

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