プロローグ
なぜ地震は起きるのだろう。地震が起きて良いことはない、と思われがちである。
だがそれは間違いであり、地震が起きるからこそ今の日本列島があるのだということを知る人は少ない。
大学の研究室から出た。何も考えずにカフェへと向かう。
「お久しぶりです!最近全然会ってくれなくて寂しかったんですよ!」
オレンジジュースを飲みながら彼女は言う。
私は本田一郎、某自動車企業の創業者の名前に似ているが、自動車にはほとんど縁が無い。
大学で地震の研究をしている。最新の地震予報システムや震度7でも耐えられるような耐震構造を開発して、全国紙の片隅に乗った程度である。
今日は4ヶ月ぶりの彼女との再会である。彼女は白浜青海、私と違って大企業の社長令嬢である。
「研究室なんかに閉じこもってないで、私と一緒にいてくださいよ、、、」
研究しなくなったらただのニートなんですが、、、というツッコミは機嫌を損ねるのでやめておく。
「それで、今は何の研究をしているの?」
「いや、地震予報の精度がとても低いものでですね、教授から作り直せと言われてるんですよ。」
正直、少しは手加減してほしいものである。二ヶ月に一日開放してもらえる日があるのだが、つらい。
寮もあるし、学費も免除されてるから生活には困っていないのだが、自由が保証されていないのがまた苦しい。
「そんなの一郎さんの手柄を横取りしようとしているに決まってますよ。」
彼女は言う。だが、完成してもオープンソースで公開する予定だから、特に問題はないんだけれどね。
代金を支払って、遊園地に行く。
「そういえば、一郎さんって高校おんなじなんですよね、見たことがなかったんですが、、、」
よくぞ聞いてほしくないことを聞いてくれた。人見知りでコミュ障な私は学校に馴染めず、家でひたすらに地震について調べていた過去があった。
「ま、まぁ色々とあってね、学校に滅多に行けなかったんだよ、あはは、、、」
恥ずかしさ全開で言う。
ビービー、地震が発生しました。揺れの到着まで、12秒デス
地震予報アラームが鳴る。
「うん?地震か?いや、緊急地震速報がなっていないから誤報かな。」
表示ではM4.3と示されていたので、気にしなかった。
これが最後の過ちだった。
ドン ゴゴゴゴ
「!?、でかいぞ!?」
M4.3のレベルではなかった、大地震だ。
その瞬間、地面に亀裂が入る。
「一郎さん、これ大丈夫なんですか?」
「大丈夫、なんとかなッ!?」
亀裂は地面を割り、俺と青海は落ちてしまった。
地震の研究家が、地震に油断して飲み込まれてしまった、
という後悔が残る。
ここは、どこだ?
目が覚めると、大きな平原の真ん中で寝ていた。
とりあえず起きる、
すると地面が揺れる
立ってられない。
「青海は!?どこにいるんだ!?」
周りには誰もいない、スマホも使えない、何もできない
ザーという音が聞こえたので、そちらに向かってみる
そこで見た光景は地獄だった。