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竜眼の少女  作者: 五十音
テアントル
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ウォートの決闘

 パンパンと歓迎祭よりは控えめに花火が鳴って、体育祭の始まりを告げた。


 目指す将来はそれぞれ違うので体育祭への参加は自由だが、ジルトはバルディアやウォートの応援を兼ねてグラウンドに足を運んだ。レオ達も参加はしないらしいが、応援は基本的に自分のクラスの観客席からするため、ジルトと一緒には来られなかった。カトレアだけは王族の関係者と共にいなければなならないらしく、特別に誂えられた観客席で試合を見るのだという。


「あ、ジル!」


 こっちこっちとサクラに手招きされて、クラスの観客席に着く。その隣にはコリウスもいたが、観客席は空席が目立っていた。


「みんなもう準備を始めてるみたい」


 サクラの説明に納得して、ジルトは他のクラスの観客席を観察する。同じように空席は多いが、その数はクラスの数字順になっている。魔力の量がクラスの基準なので当たり前ではあるが、それでもこれほどの差が出るのは一年だからだ。学年が上がるにつれて、参加率も上がる。


「まずは演武だから、バルも出るね」


 体育祭は演武、決闘の順に演目が進んでいく。演武は学年ごとに用意された型を一人ずつ披露していく。魔法を覚えたての一年や、負けることで印象を悪くしたくない堅実な上級生が出場する傾向にある。

 決闘は一対一で行われる試合形式の演目で、基本的には互いの魅力を引き出せるような相性のいい者同士が出場する。決闘では何かを賭けなくてはならず、仲のいい者同士での試合も白熱する。ウォートが出るのはこちら側だ。一組の誰かに誘われたと言っていた。


「決闘はクラブの先輩も出るから、楽しみだね」

「うん」


 学校が再開してからのクラブは週に一度が原則で、ちょうど水曜がクラブでの最後の訓練の時間となった。魔法書の魔法は使えないが、ずっと使ってきた基礎の魔法が性質の魔法を上げてくれていて、飛躍的に力が伸びた人も多かった。


「それでは、今から体育祭を開始いたします。ご来場いただきました皆様は――」


 魔法で拡声された始まりの挨拶が流れ、本格的に体育祭がスタートした。



 *



 五組から始まるとはいえ、人数の関係もあってバルディアの出番はそう遅くなかった。いつもより動きが硬くなっていたが、それでも十分にその魔力量を活かした迫力のある演武をしていた。

 やはり一組になるにつれて、学年が上がるにつれてその動きは洗練されていき、四年生の最終演武者は息も忘れるほど美しい演武を披露した。

 割れんばかりの拍手と歓声が贈られ、南部からの来客用の席もざわついていた。

 しかしそれも一度休憩を挟んで決闘に切り替わると、びりびりとした緊張感に変わっていく。演武も大事だが、対戦相手がいる決闘こそその者の能力を見極められるのだという。見る方も、見られる方も集中するのだ。

 最初にウォートと一組の生徒らしき人が登場する。一年で決闘に参加するのはせいぜい二組までの者で、その中でも貴族ではないウォートはその力を低く見られているのだろう。

 二人の賭けるものはお金と薬。お金は一組の子のお小遣いらしい。薬はウォートが部屋でいくつか調合していた内の一つだろう。


「それでは、開始!」


 合図があっても一組の子の表情は崩れない。ウォートの言い方からして、普段ウォートに暴力を加えている者の内の一人と思われる。いつもは反撃せず大人しくしているウォートをなめてかかっているのだろう。逆にウォートはいつも通りだが、目だけが異様に光っている。


「剣に変えよ、氷剣ひょうけん

「火よ纏え、炎鎧えんがい

「ふん、鎧に炎を纏ったところで、俺の剣には敵わないぞ」


 一組の子が挑発すると、ウォートはくっと顎を上げて、


「へえ。じゃあどうぞ」


 挑発を返した。

 初めて見るウォートの反抗的な態度に驚いた相手は、ぴしりと固まってから顔を真っ赤にしてウォートに切りかかる。ウォートは避けることなく、それを鎧で受け止めた。

 今回用意された普通の鎧は剣を通すことはなくても、魔法の攻撃に耐えられるほど強くない。しかし、ウォートの体に剣が突き刺さることはなかった。


「なっ?!」


 じゅうっと音を立てて、触れた所から氷剣が融けていく。


「終わりかよ。切り裂く火よ、炎刀えんとう


 どよっと観客から声が上がる。一年は火は付与、水は変形、地は召喚といった風に性質にあった魔法が使えればそれでいい。だがウォートは剣を持っていなかった。つまり彼の炎刀は変形の魔法だった。一年がしかもこの時期に変形を使えるのは普通ではなかったのだ。

 ウォートは容赦なく相手に剣を振り下ろした。

 元の力が強くはないため迫力はそれほどでもないが、ウォートは魔力を集中させるのが得意である。凝縮された炎の剣は相手の鎧を割り、相手は地面に強かに打ち付けられ気を失った。

 相手をリタイアさせる、気絶させる、戦闘不能にする、場外にすることができれば勝負は着くので、ウォートがそれ以上に攻撃をすることはなかったが、物足りなさそうな顔で炎刀を消した。

 一試合目にまさかの事態が起こり、観客が沸くが、ウォートは興味がないらしく、


「ありがたくいただいてくぜ」


 決闘の円から出て、台の上に載せられていた袋を二つとも持って舞台から去って行った。


「ウォート、楽しそうだったね」

「本当に。決闘で思いきり見返したいからって、授業から出し惜しみしなくていいのに」

「でもちょっとスカッとしたよ」


 三人で笑い合っている内に、試合は進んでいく。

 ジルトはクラブの先輩を見ようと、舞台に視線を戻した。

続きます。

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