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竜眼の少女  作者: 五十音
テアントル
32/116

セダムとの再会

 レオに手渡された紙を頼りに、ジルトはセダムの待つ教室に向かった。

 教室をノックしてどうぞの声が聞こえてから扉を開ける。


「こんにちは」

「やぁ、こんにちは」


 ジルトを迎えてくれたセダムは、あの時より顔色が良かった。久しぶりの再会に、ジルトはセダムの歳も考えずに飛びついた。


「セダムさん!」


 クラスでの出来事で沈んでいたジルトにとって、知り合いに会うことができたのはとても嬉しかった。


「はは、元気だね」


 飛び込んで来たジルトを一度抱きしめ、地面に下ろすと、ジルトと向き直ったセダムは深く頭を下げた。


「セダムさん?」

「申し訳ない。私は君に助けてもらったのに、君に多大な迷惑をかけてしまった。こんな謝罪では何にもならないが、本当にすまない」

「や、やだな、顔を上げてよ」


 ジルト達がこの学校に入れたのはセダムのおかげだと聞いている。それにセダムとのことは事故のようなものだったのだ。異国から来た人が、アグノードでもそれほど信じられていない伝承について詳しく知っているのは珍しい。


「私はセダムさんに感謝してるよ。私のことを知っても、守ってくれようとしてありがとう」

「そんな、もったいない言葉だ」

「ううん、本当に」


 セダムの手を握って訴えると、彼は優しく笑った。


「ありがとう。君にそう言ってもらえるだけで、私は救われた気がするよ」


 ジルトを席につかせて、セダムは補講の準備をする。


「さて、中間テストまで時間がない。実技については最初とやっていることは変わらないからね、座学だけ抑えれば簡単だ」

「座学はどんなことを学ぶの?」

「そうだね、君はオリエンテーションにいなかったから、説明する必要があるね。まず、学校での授業は一般教科と性質別教科、職別教科に分かれる。最後のは三年次以降だから置いておいて、一般教科は主に四つ。国語、社会、職業、歴史だ」


 セダムは黒板に一般教科の文字を書き、その下に国語、社会、職業、歴史と書いた。


「国語は現代語もするが、古語が中心になってくるかな。アグノードの古語は複雑な上に、魔法を使う時にも必要となってくる。社会は一般教養。数学などの学問から社会の仕組みまで様々だ。職業は主にこの国の職業についての紹介だ。職別教科の導入といってもいい。歴史はこの国について学ぶ。この教科に関しては南部の政治思想も入っているから、注意して聞いてほしい。

 次に性質別教科だ。これは魔法座学、魔力実技、性質実技のことを指す」


 セダムは先程と同じように、黒板に文字を書き足していく。


「魔法座学は魔力や魔法についての理論を学ぶ。魔力実技は個人の魔力量の増強を図り、性質実技は使える魔法を増やしていく。座学は一般教科と魔法座学のことを言うんだよ」

「なるほど、そうなんだ。でも、魔力と魔法って、何が違うの?」


 ジルトはずっと気になっていた質問をしてみた。何となく魔力、魔法と言ってきたが、その違いについて考えたことはなかった。


「いい質問だね。じゃあ魔法座学の教科書を開いて。図解を飛ばして5ページ目から始めよう」


 ジルトは持ってきていた教科書を開く。章のタイトルは“魔力と魔法について”だった。


「魔力についての説明は大丈夫かな」

「うん、人間が母親からもらう力のことで、男の人だけが使うことのできる力」

「正解だ。まぁこの国での定義はそうだ。この国では実際に魔力を使える女性もいるけれどね」


 ジルトはカトレアとイーリスの顔を思い浮かべた。そいうえば、隣の席のサクラは魔力を使えるのだろうか。


「つまり、魔力はエネルギーのことを指していてね。使えば当然消費するし、休めば回復もする。“魔力を使う”っていうのはそのままの意味で、性質にもよるけど、そのエネルギーをそのままぶつけることを言うんだ。火なら火、水なら水、地はちょっと特殊だけど自然の植物とかね。

 魔法はそのエネルギーを応用するもののことだね。一般的には呪文が必要になる。その呪文は難しいものほど古語が使われるんだ」


 だから国語が必要なのかとジルトは納得した。魔力はエネルギーをそのまま放出すること、魔法はその応用で呪文がいる。ジルトも魔の山でも簡単な魔法を教わった。

 ふと、セキを燃やした時のレオを思い出した。


「じゃあページをめくって。そこに簡単な呪文の一覧が載っているから、知っているものを教えてくれるかい?」


 指示に従ってページをめくると、性質別の呪文の一覧が出てきた。


炎鎧えんがい炎盾えんじゅんはレオに教えてもらった」

「実際に使ったことは?」

「ある。でも炎刀えんとうは初めてだ」

「レオ君らしいね、防御に固めたのか。そこの魔法は魔法学士に上がるための試験でも使うからね、覚えておくといい。テストでは魔法の名前、呪文、効果が問われるから自分の性質以外の魔法もしっかり覚えておくように」

「でもセダムさん、地の性質の魔法は呪文がないわ」


 教科書に掲載されている性質別の魔法はどれも三つずつだが、地の性質だけ呪文がない。魔法も土、根、茎との文字だけで、効果もそれらを出現させる、のみになっている。


「そうだね。地は少し特殊でね、本来なら召喚魔法にあたるはずのそれら三つを出現させるのは呪文無しでもいいんだ。火の性質が火を放出するようにね」

「なるほど。難しいなぁ」

「大丈夫だよ、少しづつ覚えていこう。詳しい説明を交えながら今後も繰り返し学んでいくからね。さあ、次は社会だ」


 セダムの授業はジルトの興味を誘導していくように進み、わかりやすく、楽しかった。国語に関しては授業が必要ないとの判断だったので、このままいけばテストに間に合うらしい。

 六限の終わりを告げる鐘がなり、ジルトの一日目の補講は終了した。

続きます。

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