宿は誰でも泊めるもの?(タマゲッターハウス:コメディーの怪)
このお話は『小説を読もう!』『小説家になろう』の全20ジャンルに1話ずつ投稿する短編連作です。
舞台や登場人物は別ですが、全ての話に化け猫屋敷?が登場します。
ある青年が日本昔話をモチーフにした絵本の案を考えていると、従姉妹の小学生が意外なアイデアを出してきました。
安アパートで独り暮らしをしている僕の部屋に、小学生の従妹が来ている。
小学生にしては博識な彼女は、彼女は僕がかいた絵本の案を見ている。
オリジナルのストーリーではなく、日本昔話の『うぐいす長者』のお話を練習がてら絵本にしたものだ。
うぐいす長者のお話はこんな感じだ。
お茶の葉を売る商人が、行商の帰り道で道に迷ってしまった。
梅の花のいい匂いに誘われて、たどり着いたのは女性だけの屋敷。
そこで歓待を受ける。
留守番を頼まれた商人は留守番を頼まれた。
四つの倉の三つまでは除いてもよい、四つ目は見てはいけないと言われる。
商人が三つの倉を見ると、中では夏・秋・冬の景色が広がっていた。
好奇心に負けて、四つ目の倉を見てしまう。
そこには春の季節が広がっており、梅の木に四羽のウグイスがいた。
実は四人の女性の正体はウグイスたちで、正体を見られたために飛び去ってしまう。
屋敷も消えた野原に、商人は一人残される。
読み終えた彼女はにこっと笑ってこう言った。
「お話は面白いけど、絵がヘタなんだよ。こうして見ると絵がゆがんでいるんだよ」
僕が描いた挿絵の紙を裏返して、電灯に向けている。
裏から透かして見ると絵のおかしいとことがわかるのだとか。
「僕もいちおう絵の練習もしてるけど、なかなか上達しないんだよね」
「これって、ストーリーを少し変えてみてもいいと思うんだよ。ウグイスじゃなくて、化け猫の宿にするんだよ。主人公が夜の山道で道に迷って、古屋敷で泊めてもらうんだよ。そこには温泉がいくつもある宿で、いちばん奥の湯につかると猫になってしまうんだよ」
「それって阿蘇の根子岳のお話かな」
根子岳の昔話はこうだったかな。
旅をしている若者が、道に迷って山の中の屋敷で泊めてもらう。
しかし、宿の召使いの女性が若者に「ここは化け猫屋敷だから逃げなさい」という。
ここのお湯に入ると猫の姿になってしまうという。
その召使いは昔、若者に可愛がってもらった猫だそうだ。
若者は屋敷を逃げ出した。すると、頭が猫の女性たちが湯桶を手にして追いかけてきた。
「なにか、怪談話になりそうだな」
「それをハッピーエンドにするんだよ。屋敷にはきれいなお姉さんたちがいて、すごく歓迎されるんだよ。その人たちの正体は化け猫なんだけど、以前に猫の姿で若者と遊んだことがあったんだよ」
「ふんふん。じゃあ、お姉さんたちは若者に自分たちの正体を知らせるのかな」
「そうなんだよ。若者は家族がいないから、ここで住んでもいいかなって思うんだ。ただ、猫になるのは少し待ってもらって、しばらくここで働かせてもらうことにするんだよ」
「うーん。面白いけど、化け猫をだす意味があるのかな。女性たちが昔、若者に世話になったことがある人間、という設定でもいいような……」
「うん。そこで別の妖怪も登場させるんだよ」
彼女はメモ帳にアイデアをかき始めた。
若者が屋敷で過ごすようになって、しばらくたった。
ある夜。奇妙な雰囲気の三人組の女性が訪れて「泊めてほしい」と言った。
若者になぜか屋敷の女性たちから「あの人たちを絶対に泊めさせないでほしい。なんとか追い返してちょうだい」と頼まれて、いろいろと理由をつけて断ろうとする。
「なるほどね。後から来た女性たちが妖怪ってことか。主人公の若者がどうやって追い返すかが物語のキモになりそうだ」
青年が「ここは古くて汚い宿だから泊まらない方がいい」と断ろうとすると、屋敷の女性が「古くて悪かったですね!」と怒り出すというオチを入れようかな。
他にも「お客様に出す食事をつまみぐいしたり、床に落とした食材をそのまま載せたり、忙しいときにはトイレの後で手を洗わずに配膳しているんです」というと、屋敷の女性が「知ってたんですかっ!」と悲鳴を上げたりとか……
僕がアイデアを出すと、彼女はうんうんとうなずいて、こういった。
「ちなみに物語の題名は『やつらを泊めるな』なんだよ」
「……なんか、どっかの映画のパクリみたいなタイトルだね。絵本には使えそうにないんだけど」
「そうかなぁ。その映画も、別の舞台劇の流用だってきいたんだよ」
元ネタの作品は、前半は映画撮影中にスタッフが次々と死んでいくホラーもの。
後半は、前半の撮影シーンの裏話をコメディータッチに描いたものだ。
「あれは舞台劇のアイデアの一部を使ったもので、舞台作が原案ってことになったかな。著作権の切れている日本昔話とかを使うのはいいけど、最近の作品のマネして出版するのはマズいんだ」
「このまえ友達が『ライオン大将』の舞台を見に行ったの。でも、あの作品って日本のアニメの盗作かもってきいたの」
その舞台って、元はアメリカのネズミー社が作ったアニメ映画だね。
映画が公開されたとき、日本の巨匠漫画家が描いた『密林帝王』の盗作ではないか、と騒ぎになったようだ。
『ライオン大将』のキャラクターの名前は『密林帝王』のアメリカでのテレビ放映版をもじった感じだった。
だから日本人には『そんなに似てるかな?』と感じられて、アメリカ人がみると『そっくり』になるかも。日本人より、アメリカ人の方が騒いだ感じだったかな。
ただ、『密林帝王』の権利をもつ会社や巨匠漫画家の遺族らは、ネズミー社を訴えないことにした。
『本人が生きていた場合、今回の出来事を光栄に思うだろう』ということらしい。
……ということを話すと、彼女は少し首をかしげた。
「ネズミー社って、日本の他のアニメもパクったってきいたよ。『潜水艦に乗る女の子』の話だって」
「ああ。それもネズミー社の作品が、日本のアニメの作品と似てたって話だね。こっちはちょっと話がややこしいね。どちらも潜水艦がでてくる同じ古典SF小説が原作なんだ」
「あたし、原作のSF小説も読んだことあるんだよ。でも小説には女の子はでてなかったよ」
「うん。その分も含めて、日本の作品をネズミー社がマネをしたみたいだね。でも、日本側の作品もネズミー社のマネをしていたんだ」
「あれ? 日本の方が先だよね。どういうこと?」
「ネズミー社はアニメの前に、同じ古典SF小説を原作にした実写版の映画を出しているんだ。日本のアニメ版では、ネズミー社の実写版のオリジナル設定も取り入れているんだ」
「じゃあ、お互いに影響を受けているってこと」
「そうなるね。ついでにいうと、日本のアニメ会社は権利元じゃないんだよ。日本の作品の権利は準国営テレビ局が持っているからね。そっちはネズミー社を訴えたりしないと思うよ」
「そうなんだ。あたしはネズミー社もその作品も嫌いじゃないんだけどね」
僕たちは一息ついて、ちゃぶ台に乗っているお菓子を食べる。
あれ? 大量に用意していたと思ったけど、ずいぶんと減っているな。
「だいぶ話はそれたね。で、『彼らを泊めるな』のお話は続きはどうなるの? 後半は作中作のネタばらしの展開になるのかな」
「ちがうよ。最後は若者が根負けして、しぶしぶだけど泊めてあげるの。その女性達は妖怪の正体を現して、そこの屋敷を乗っ取ろうとする。若者の機転で奥の温泉の湯をぶっかけて、その妖怪たちも猫になっちゃうんだよ」
「ふんふん。それで女性客の妖怪たちも屋敷の従業員にするのかな」
「こうして、根子岳のふもとに猫だけの村ができました。めでたしめでたし」
「そういうオチか……。絵本にするにはもう少し考えた方がよさそうだね」
妖怪たちを猫にした後、ワンクッション置くのもいいかな。
若者は一度、自分の家に戻って、近所の住民や『遠くに引っ越す』と伝える。
取引先とも引継ぎも済ませ、あらためて猫の宿屋に向かう。
宿の周囲に村ができていて、実は村人全員が猫の妖怪になっていたとか。
ところでこの話って、きれいな猫耳の女の子がいっぱいいて、男性キャラは若者ひとりか。
むしろ成人向けの作品でありがちなネタかもしれないけど、この子に教えるのはまだ早そうだな。