いいわけするな!
「聡、お前何でこんなことをしたのか理由を聞かせてもらおうか?」
「騎士の奴が俺をはめるためにわざと花瓶を壊したんだ」
「いいわけするな! あの騎士君がそんなことするわけないだろ! 本当のことを言え!」
「だから本当に騎士の奴が……」
「いいわけするなと何度言ったら分かるんだ!? 学級委員長の騎士君がそんなことするわけがないだろ!」
話は平行線なままだった。
『なぜこうなったのか説明してほしい』
先公から言われるこの言葉は翻訳すると
「オレ達が納得する事、望んでいる事を先回りして言え」となる。それに反する事を言うと「いいわけするな!」と怒られるというわけだ。
たとえ本当に起こった事を言おうが、先公が望んでない事を言うと「いいわけ」になる。彼らが望んでいることを言うのが全てであって、真実はどうでもいい。
特に先公から「理想の子供」と言われて大人気だった学級委員長だった騎士の奴は、俺をいじめていた。
「いじめをやってる騎士をえこひいきするな!」と物申したら、
「テメェと騎士君が同じ価値なわけないだろ!」と怒鳴られる始末だ。もちろん、俺の命の方が劣るというわけだ。
「全部俺が悪いんです」そう言わなければ「いいわけ」だと判断される。そんな小中学校の生活はクソそのものだった。
特に騎士の奴に責任があると言ったら「そんなわけないだろ! 騎士君を巻き込んでいいわけするんじゃない!」と怒鳴られる始末だ。
騎士にとって都合の悪い事は全部「俺が責任逃れのために言っているいいわけ」になった。真実や現実なんてどうでもいい。
先公は全員可愛い可愛い騎士君とやらの味方になって、俺を責め続けた。それこそ「いいわけするな」というセリフを何度も使いながらだ。
昔「たった1人の被害者の人生を守るために10人の加害者の人生をメチャクチャにしていいんですか?」というセリフを吐いた先公がいたそうだが、
「テメェと騎士君が同じ価値なわけないだろ!」も、今思い返せばそれと同じくらい狂ってたと思う。
そんな騎士の奴を中2の頃にいじめの証拠を集めて、話の場を法廷にまで持ち込んで最後に「爆破」したのは痛快だったなぁ。
小中学生の中で一番良い思い出かもしれない。