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商業都市ラナクマ
ー『さあ、今夜も始まりました。アウルズ・ミッドナイト! 司会はこの私、ウィリアムと!』
『ホプキンスでお送りします!』
軽快なBGMと愉快な喋りが、ネオンの広告板と高層ビルに、小雨と共に降り注いでいる。
カルスタン国内でも有数の商業都市であるラナクマは、多くの人で賑わい、昼よりも夜に輝く。
そんな街の喧騒から切り離されたかのような暗い路地に、一人の男がいた。
消えかけて、点滅している路地裏の灯りをぼんやり見つめながら、男は朦朧とする意識の中で考えていた。
ああすればよかった、こうすればよかった……。最期になって思い浮かぶ事は後悔ばかりだが、唯一の"希望"であったのは、彼女のことだった。
あの屈託の無い笑顔。白く、触れれば今にも壊れてしまいそうなあの身体を、もう一度この腕に、胸に抱きたかった。
通りの方では、なにやら若者が大きい声で騒いでるような声が聞こえてくる。ゆっくりと目を閉じ、彼女との日々を思い返した。