ちゃぼ茶のショートショート㊱ 僕と憧れのあの人
《人類は火に生かされ、また殺される》
火には花火や火曜日、炎上、炎症そして火事…
僕の将来の夢は消防士だ
幼稚園の頃からその夢は続き、高校生になった今もだ
消防士になりたい理由はひとつ
僕自身が命を救われたからだ
幼稚園の頃僕の家は家事になった
昼寝をしていた僕は家の中に取り残されてしまったらしい
らしいというのはあまり当時の記憶が曖昧なのだ
唯一頭に残っているのは頬に傷のある消防士の男性が僕を抱えながら言ってくれた
「坊主!大丈夫かぁ?諦めなければ人生は終わらないぞ!」
その言葉は僕の胸に刺さった
あれから15年
僕の夢は変わらなかった
実はあれからその消防士と再開したのだ
正確にはそれを知っているのは僕だけなのだが、
僕はよく近くの消防署に遊びに行く
昔から通っていたので消防士の方にも仲良くさせていただいている
そんな中最近配属された消防士の方の頬には
見覚えのある傷が…
あの時のお礼を言いたかったが、そんなこと覚えていないのは分かっているが
実際に言われるとショックなのは分かっていたので、あえてなにも言わずにいた
それでも、会うたび心の中で呟いていた
俺は貴方のような立派な消防士になる
と
奇跡の出会いから数ヶ月
テスト期間が終わり、久々に消防署に行くと
あの助けてくれた消防士さんがいなくなっていた
違う消防士さんに尋ねると、答えをはぐらかされた
どうやら辞めてしまったらしい…
目標の人がいなくなったことに落ち込みながら家に帰り、テレビをつけると
ニュースキャスターのセリフと目の前に写る写真に体が固まった
「一昨日、電車内で痴漢をした消防士が逮捕されました」
僕はSNSを開き検索をすると、
そこには、憧れの消防士が駅のホームで駅員に取り押さえられながら叫んでいた
「お、俺は悪くない…その女子高生が誘ってきたんだ!」
「諦めないぞ!こんなところで人生終わってたまるかぁ!」
どうやら火を消すはずの消防士はネットに大きな火を放っていた