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第5話

「え、今日は王様に呼ばれているのか?」

「なんか、正式に勇者の職業認定するらしくて? お昼前にお城へおいでって言われたの。だから早めにお弁当食べるね」

「だからって十時より早く食べちゃ駄目だぞ」

「えー」

「えー、じゃあない。というか食べるつもりだったな…それより、城に行けるような格好がないけど」


食いしん坊さんはきっちり釘をさしておかないと、わりと早飯をしてしまう。

その後空腹を抱えて横たわっているのをアインラハトが帰ってから発見するのだ。

なんともやるせない気持ちになるので、時間厳守でお願いしたい。


ミーニャの格好を見つめれば寝間着は着替えているが、いつもの木綿でできたモスグリーンのワンピースだ。

そもそも着古しているので色は薄いが、本来は深緑色だった。

そんなよれよれのワンピースで王様に会いにいって怒られたりしないのだろうか。


「いつもの格好でいいって。お城で用意してくれるって言われたよ」

「そうなのか。ミーニャ一人で行けるのか。義兄ちゃんもついていこうか」

「大丈夫だよ! それに保護者付きの勇者なんて恥ずかしいよぅ」


そんな羞恥を感じるようになるなんて、大人になったなとしみじみする。

だが、一人で行かせるのは本当に心配だ。

この義妹は、わりと自由に生きている。

のびのびと大らかに育てすぎたのか、人に合わせるということをしない。

行きたい方向に勝手に行くからついてきてというスタンスだ。

城でそんなことをしようものなら不敬罪で首が飛ばないだろうか。


「離れて隠れてならついて行ってもいいだろう?」

「やだ」

「なんで嫌なんだ。あんまり我儘言うとほっぺた齧るぞ」


我が家の定番のお仕置き方法を口にすれば、ミーニャはぷくりと頬を膨らませた。なにも本当に頬を齧るわけではなく、抱っこして頬を甘噛みするようにハムハムするだけなのだが、大変不服だと水色の瞳が訴えてくる。


「子供じゃないんだから、一人でお城まで行けるもん」

「お前、初めて街までおつかいに行くみたいに軽く言うなよ…わかった、わかった、気をつけて行ってくるんだぞ」

「うん」


お仕置きするぞという脅し文句にも屈しないのだから、相当来てほしくないのだろう。

ここは素直に引き下がるしかない。強情なので一度言い出すと聞かないのだ。

義兄の心配、義妹知らず―――ミーニャは説得できたことで安心したのか、嬉しそうにニコニコしている。


「うふふう、馬車が家まで迎えにきてくれるんだって。どんな馬車かな、白いのかな。立派な馬が牽いてくるんだろうな。あっ、知らない人だよ、悪い人だったらどうしよう。どうやって見分ければいいんだろうねぇ?」

「迎えが来るまで俺も家にいるよ。そうすれば怪しい人かどうかわかるだろ」

「ええ、お弁当は?!」

「十時になったら食べてよし」

「わーい!」


結局昼食は十時になったようだ。

おやつも持たせたほうがいいのかもしれない。

だが、それよりもやらなければならないことがある。


「よし、奮発して髪飾りを新調しよう」

「髪飾り? やったあ、可愛いのにしてね」


もちろんミーニャが気に入るように可愛いものだ。身につけてもらわなければ持たせる意味がない。

アインラハトは決意すると、さっそく仕事部屋に向かうのだった。

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