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第4話

「たくさん、張り切って作りすぎちゃったかな」

「お腹減ったよぅ、もう食べてもいい?」


焼きたて丸パンに、厚切りボウワの燻製肉、新鮮彩りサラダ、ピックのオムレツ、スパイシースープ(甘口)、数種類の果物。

朝食に並んだ料理の皿の数々を見て、ミーニャは切なそうに瞳を細めた。普段の朝食の時間よりも一時間も経っている。

あまりに切なげな義妹の様子に、我に返ると可哀そうになってきた。


「ごめんごめん、少し時間がかかりすぎちゃったな。ほらたくさん食べろ」

「うん! いただきます」


許可を出せば一心不乱に食べ始めた。昔から食う、寝る、遊ぶには全力を出すのが彼女だ。思い起こせば六歳の彼女が姉の後ろに隠れながらも上目遣いで自分を見上げていたときだけが一番大人しかったような気がする。


「誰もとらないから、ゆっくり食べなさい。あと肉ばかり食べない!」

「ふあふあってるぅ」

「口に入れたまま話さない」

「ふあい」

「聞く気がないことはわかった…義兄ちゃん、今日は材料とりに森まで行ってくるから、お昼はお弁当食べておいてくれよ」

「えー、ミーニャお留守番? 鎖持った知らない人が押し入ってきたらどうすればいいの?!」


なぜ、鎖?

最初に思いつくものが特殊すぎやしないか。


「なんだかどっかで聞いたか見たかしたような格好だが…いいか、誰が来ても扉は開けるなよ。隠し階段から地下室で待機だ」

「あそこ暗いからキライ…お義兄ちゃんは知らないだろうけど、オバケって暗いところが大好きなんだよ。それでね、家主に内緒でこっそり住んでるんだよ?!」

「はいはい。お前が怖がるから光石の小さいやつ壁につけただろ」


地下室なうえに隠し部屋なのであまり明るくして光が漏れても困る。そのため壁に小さな光石を埋め込んだのだ。光石は月光を集めた雫とその他は企業秘密な材料から作れる不思議石で大きさにもよるが十年ほどは輝き続ける。

淡い乳白色の光が目に優しい。

ちなみに不思議石は道具屋ハウゼンの不思議シリーズの一つで、わりと人気の商品だ。

アインラハトの道具屋は、普通の道具屋では置いていないものを扱うことが多い。そうでなければ王都の商店街から遠く離れたこんな場所までわざわざ買い付けにきてくれない。


「大丈夫、ミーニャは強い子だろ?」


涙目で見つめてくる義妹の頭をポンポンと軽く叩くと口を尖らせたまま頷いた。


「お義兄ちゃんはオバケを見たことないから怖さがわからないんだ!」

「そうだな、確かに見たことないから怖さはわからないなぁ。じゃあ会えたら俺に紹介してくれよ」

「うん、わかった」


義妹がチョロいんとか思ってはいけない。

このおバカなところが義妹の可愛らしさに拍車をかけているのだから、そっと愛でるだけだ。今日も義妹の可愛さは尊い。


「お弁当は、机の上においておくから。時間がきたら、ちゃんと食べるんだぞ。いいか、長い針と短い針が真上を向いて重なったときだからな」


ミーニャは時計を読むのも苦手だ。八時とか短い針がピッタリに数字に重なる時はなんとか覚えたので、彼女の体内時計は分刻みでなく時間刻みだ。ひどいときには太陽の位置で時間を確認している。

野生の動物のような娘だ。


そんな義妹は、ふと気が付いてうんうん唸りだした。

途端に困り顔だ。眉を寄せて変な顔をしている。

間抜けで可愛い。


「うーん、あれ、ミーニャ、その時間は家にいないかもしれない」

「出かけるつもりだったのか?」


近所の森か畑だろうか。

家の裏には家庭菜園がある。もちろん、アインラハトがせっせと世話している小さな畑だ。

なんせ活動範囲が狭いのがミーニャである。


だが彼女の一言は予想を越えた。


「うん、王さまに呼ばれたんだぁ」


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