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第31話(ステラ視点)

「明日はいよいよ本番だけれど、準備はいい?」


小さな家の居間でステラは、一同を見回した。

面々には恐れも焦りもない。与えられた仕事をこなす自信が見えるだけだ。


「バッチリですよ、ステラ姉…じゃなかった……小隊長!」

「カナリナは最初、小隊長って呼ぼうとして慌ててたくせに。今度は姉さんって呼び間違えるのぉ?」

「うるさい、ドーラ。こういう切り替えがなかなかできないんだよ、しょうがないだろ」

「ははは、カナリナに向いてないのは最初から分かってただろ」

「補佐官だって向いてないっすよね?」

「私はそもそも呼ばないようにしている」

「なるほどっす」


カレンが立派な胸囲を誇りながらふんぞり返れば、レイバナヤが感心した。

ミルバは無口なので目深にフードを被って、静かにうつ向いている。

もしかしたら寝ているのかもしれないが。


これが第七騎士団の第一小隊のメンバーだ。このメンバーですでに二年ほどは活動している。

彼女たちの性格は把握済みだ。そして力量も正確に知っている。

普段は言い合いをして仲が悪そうだが、任務になると連携もばっちりでどんな仕事でも安心して向かえるのだ。


「おバカな話はそれくらいにして、明日の任務の確認をしましょう」

「はいっ、小隊長」

「まずは、お店に顔を出すのはカナリナとミルバね。家を出たらすぐにドーラが足止めをしてちょうだい。突破されて門まで行かれたらカレンとナーヤで捕まえて。そこも駄目なら、私が最後に出るわ」

「そんなに警戒する必要あるんすか? あのボケボケのお兄さんっすよ?」

「念には念をいれるだけよ。そもそも、最初からこの任務はおかしいんだから、警戒しておいて損はないわ。勇者が働かなくなるから、兄を近づけるなだなんて。それも元第一騎士団の団長が強く依頼してくるんだから」


騎士団は十団あるが、数字が若いほど猛者が集う。必然的に第一騎士団が王族の警護で、第二以下が役職付き、貴族、平民と重要度が下がっていく。つまり第七騎士団は平民を警護するトップということになる。


だが、今回は要人の警護ではなく、接触しないように計らうというのだから、よくわからない。監視のために隣に家まで建てるのだから、その本気度がうかがえる。だが、正気を疑いたくなるのも仕方ない。


隣の道具屋を経営している男はどこからどう見ても人の良さそうな、という形容詞しかつかない青年だ。ぼさぼさの茶色の髪に、変哲もない茶色の瞳。容姿はさほど特徴はなく、格好も王都の平民たちがよく着ている簡素なシャツにズボンだ。つまりどこにでもいそうな男だった。街に紛れ込まれたら追跡するのが難しいと思われるほどには。だからといって一般人を見失ったりしない。

それなのに、騎士団の小隊をつけて監視させるだなんて信じられないというのが正直な感想だ。

半月ほど交流を重ね、観察してきた結果でもある。


とにかくあんな朴とつとした青年に、出し抜かれることなど決してないとステラは思う。だから、任務の失敗は絶対にありえないと確信するのだった。


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