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第30話

「ミーニャ、そろそろ寝ないと。明日は仕事だろう?」


食卓に座って仏頂面のままの義妹に声をかければ、彼女はその表情のままアインラハトを睨み付けた。

ちなみに隣家の面々は食事を終えて、家に戻っているのでミーニャと二人きりだ。


「お義兄ちゃんは、ミーニャのことなんかどうでもいいんだ……」

「そんなわけないだろ、一体どうしたんだ?」

「だって、隣の女の子たちばかりと仲良くするんだもん」

「仲良くしてるか?」


朝に会えば挨拶をして、昼に店に来れば接客して、夜に夕御飯を食べに来れば迎え入れる。

確かに仲良くしているのかもしれない。

だが、それはミーニャに友人ができればいいとか、義妹と同じくらいの年頃で放っておけないからで、決して義妹をないがしろにしたつもりはないのだが。


「いつもはミーニャの話を聞いてくれたもん。帰ってくるの遅くなったら迎えにきてくれたもん。夕飯だって、何を食べたいか聞いてくれたもん。でもそんなことなくなっちゃったでしょう?」


仏頂面から涙が溢れてきて、ぐすぐすと泣き始めた。なんと不機嫌そうに見えていたのは泣くのを我慢していたからか。

アインラハトはぎゅっと胸が絞られるような心地になった。


なんてことだ、大事な義妹を泣かせるまで寂しがらせていただなんて……!


「ごめん、ミーニャっ! 」


座ったままのミーニャを後ろからぎゅっと抱き締めた。

小さな体は温かくて、ふわりと日の香りがする。

大好きで大事な義妹の香りだ。


「お前を放っていたつもりはないんだ。ミーニャが一番大切で大事だ」

「本当に?」

「当たり前だろ!」

「んふふ、ミーニャが一番だよ」


泣きながら笑う義妹に愛しさが募った。

ぎゅうぎゅう抱き締めていたら、ミーニャがふと真顔になった。


「お義兄ちゃんはミーニャが大事?」

「ああ、もちろん」

「だったら、明日はお仕事行きたくないな~」


気持ちの切り替えが早いのが義妹のいいところだ。

どちらも本心なのは分かっている。

脈絡がないだけで。

だから、アインラハトも拍子抜けしながらも、心を鬼にして答える。


「仕事は仕事として引き受けたんだから、しっかりやらなきゃ駄目なんだぞ」

「やっぱり、お義兄ちゃんはミーニャのこと嫌いなんだああ」

「それとこれとは話が別だ」


本当はこんなに厳しいことを可愛い義妹に言わなければならないなんて断腸の思いである。今にも口から溢れて零れて、行くなと言ってあげたい。

だが、仕事というのは無情なものなのだ。そして責任を伴う。

何より、金銭が発生していることだからだ。


アインラハトは荒れ狂う悲しさやら苦しさを押し込めて、なるべくきっぱりと義妹に告げるのだった。


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