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第13話

湖からマイネを引き上げて、家の風呂に放り込んだ。

その世話はミーニャに任せるしかない。

まさか服を脱がせて洗うわけにもいかない。


風呂場から二人のやりとりが聞こえてくるが、内容はともかく微笑ましいことだ。我が家の風呂は魔道具を駆使して多機能になっているので、家人以外の勝手がわからない者が使用すると大惨事になることがある。

だからミーニャも一緒に入らなければならいのだ。


あの我儘なミーニャが友達と一緒にお風呂に入っているなんて。

ちょっと前までは考えられなかった。


まさか、彼女は友人が欲しくて勇者になったのではないかと思いついた。


なぜ勇者なのかと今まで不思議に思っていたが、彼女が勇者パーティに入ることをどこかで聞きつけて勇者になったのかもしれない。

年頃になってようやく友人の大切さをわかってくれたのかと、アインラハトは義妹の成長に胸が熱くなった。


そのまま風呂場を離れて台所に向かう。

おやつの準備はばっちりだ。


ついでに温かいお茶も淹れようとお湯を沸かす。

ほどなくして石鹸の香りとともに、ミーニャとマイネが居間に顔を出した。


「ほら、おやつだぞ」

「わーい、パリパリだ」

「パリパリ?」

「このお菓子のことをミーニャは変な風に呼ぶんだよ」

「そうなんですね」


マイネは皿に盛られた茶色の揚げ菓子を覗き込んで、ふふっと口元を綻ばせた。

湖に落とされたことを怒らないなんて、できた子だ。

あまりの優しさに心の中で感謝する。さすが聖女様だ。


末永く義妹の友人として仲良くしてもらいたい。


「ほら、ちゃんと髪を乾かして」


ぽたぽたと髪から雫を落とすミーニャの頭を優しくタオルで拭ってやると、義妹は気持ちよさそうに目を細めた。


彼女の髪は細くて絡まりやすい。放っておくとすぐにボサボサになるので、丁寧に水を取って櫛を通さないといけないのだ。面倒くさがりのミーニャはいつもアインラハトにやらせる。彼女が不器用なので自分でできないということもあるのだが。


「仲がいいんですね」

「二人きりの家族だからね、当然じゃないかな」

「羨ましいです…あっ違うんです、取ったりしません。ちゃんとわかってます」


ポツリと呟いたマイネは慌てて弁解しだした。

どうやらミーニャに謝っているようだが、何故かはわからない。


「何をわかってるって?」

「お菓子独り占めしたいって」

「いや、そんな話じゃなかったよな。ただミーニャが独り占めしたいだけだよな。仲良く食べなさい、じゃないともう作らないぞ」


「お義兄ちゃんが酷い…なんで虐めるの」

「虐めじゃない。むしろ意地悪なのはミーニャだろうが」

「なんで、私、悪いことしてないよ?!」


ばっと勢いよく振り返って抗議してくる義妹の瞳は真剣だ。

なんとなく自分が悪いような気になってくる。

そうか、勘違いだったのかな。うん、ミーニャは何も悪くない。


「そうだな。よし、食べていいぞ」


頭を乾かし終えたので、許可すればミーニャが勢いよく食べ始めた。


あれ、なんの話だったかなとアインラハトは首を傾げた。

それをマイネがしたり顔で頷きつつ眺めていた。


「なるほど、こうして妹の我儘が通るんですね。とっても参考になります。ミーちゃんはさすがです。そしてお兄さんは可愛格好いいです」

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