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それぞれのマリーゴールド  作者: ゆうま
ルート⑨
7/43

ルート⑨4日目昼

4日目昼会いに行く人物:鴬

この流れになると分かっていなかったときは、ホースのことをどれくらい特定出来ているのか確認したくて4日目にした

最初にこの流れになったとき鴬の意志を会って確認しようとした

することは「確認」で同じことだ

それに聞くまでもなく話してくれるから問題ない


会って変なことを言って気を変えてしまうのは嫌だが、会って確認したい

それに俺が少しなにか言ったところで気が変わるなんて多分ない

人を殺すということは、それだけの覚悟が必要だ


そう思っていたが、俺が「人を殺すこと」について深く追求すれば、どうなっていたか分からない

なにせウサギが言っていた「多分裁かれることのない罪」というのは的を得ている発言だった

だが、鴬は本当の意味で理解をしていなかった

だから鴬は笑ったんだ


「おや、鴬様。こんにちは」

「こんにちは。ここにいれば会えると思いました」

「どうしてですか?」

「夕食会の準備がありますからね」


俺はこのとき気付くべきだった

鴬が3日目もここにいたことは分かっていた

それなのに会わなかったんだ

「あいつら」が俺が選択した人物以外に会えない様にしていることに、気付くべきだった

気付いたからってどうしよもないかもしれないが、参加者同士が話しているところに話しかけることをしてみるということが出来たかもしれない


「本当は今日くらい部屋でゆっくりしてようかと思ったんですけど、あなたに聞きたいことがあって」

「わたくしに答えられることであればなんでも聞いて下さい」

「城野歩さんはどうなったんですか。冷房を付けっ放しにしてたってもうすぐ梅雨ですよ。腐ってしまうんじゃないですか」

「それに答えられるとお思いなのですか」


少し低い声で言ってみる

牽制している様に思えるだろうか


「いいえ…。ただ、その…お願いがあるんです」


怯みはしたがしっかり目を見て言われる

本題はこっちで、鴬からみれば余程重要らしい


「ゲームに参加しているアタシたちが死んだらせめて物ではなく遺体として扱って下さい。ちゃんとした感じじゃなくても良いんです。少しで良いので骨が残るように焼いて、その骨は海に捨てる、とか。今時珍しくないじゃないですか」

「そうですね。管理が難しい、場所がない、故人が望んだ等の理由で散骨されるご家族様はみえます」

「それなら」

「しかし」


ぱっと顔を明るくする鴬の言葉を遮ると鴬は小さく肩を震わせた


「あなた方は既に「駒」です」

「もう人間じゃないって言いたいんですか」

「このゲームに勝ってここから出られれば、人間に戻れますよ」

「そうですか。彼は人間でないまま死ぬんですね」


俯いている鴬の表情は読めない


「あははははははははははははは」


少しキツく言い過ぎたかと反省した思いを返してほしい

そう思ってしまう展開だ


「それならいいわ」


表情を作ることは当然忘れない

相手の感想が変わってしまえば、後の発言に影響するかもしれない


「あはは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔ってこういう顔なのね」


このときこんな馬鹿にした様な顔をしていたのか


「誰かを理由に人を殺すこと、復讐ってただの言葉遊びよ。殺人はただの殺人だわ。だけど彼は人じゃない。食べるために豚を殺すことと同じってことだわ。アタシは心の闇を晴らすために彼を殺す。なにもためらう理由なんてないわ」


仮に指名に成功した者が家に帰っても、家を出る前と変わらない生活が待っているはず

だとすれば死体の処理は完璧に行われていると思われる

だから、ここで死ねば「故人」ではなく「ゴミ」になる


ウサギはそう言った

俺は参加者全員がそれを理解していると思っていた

だから鴬が笑ったとき戸惑った

だが、実際鴬は分かっていなかった


だから笑った

笑えた


「そうですか。決められたのですね」

「ええ、決めたわ。あなたのおかげよ、ありがとう」


意味をはき違えていることを言うわけにはいかない


「そんな顔しないで下さい。ゲームが進行することはあなたにとって良いことじゃないですか」

「ですが…ホース様のお気持ちをお考えになられたのですか」

「そんなの知らないわよ。人殺しの気持ちなんて、一生分からないわ」

「ゲームの参加者が人ではないからですか」

「そうよ。あなたが今言ったんじゃない」


違う

そういう意味で言ったんじゃない


「そうじゃないだろ!確かにこのゲームを考えたヤツらにとって参加者は既に人間じゃない。だけどお前たちの間ではまだ人間だろ!」


だからホースの気持ちを考えてくれ

きみを守ってほしいと言ったホースの気持ちを


「きみが相手を恨んでいることは分かっている。だけどきみはすぐに本名を言わなかったし、今回のことも考え直す様に言った。こんなこと望んでなんてないはずだろ!」

「じゃあアタシに殺されろって言うわけ!?彼は本気なのよ!」

「そうなった理由があるだろって言ってんだ!」

「どうせ殺されて罪を償うとか思ってるだけよ!死んだら罪が償えるなんて考え方、おこがましいのよ!」

「じゃあ!」


前のとき言いかけて止めたところまでで言葉を切る

なにか言いかけて止めたことは明白なのに、鴬は俯く俺から視線を逸らした


「それに…アタシが本名を言わないことが分かって、焦って、ウサギの話しの流れに乗ってあんなことを言っただけよ」

「なんだかんだ人はしぶとく生きようとするものです。ホース様があの様な発言をした理由をもう一度考えてみてはいかがでしょうか」


絶対に違うから、考えて

真剣に考えた答えなら、なんでも受け入れてくれるから


「こんなことをしてることに、しょうがない理由があることは分かったわ。だけど…」


鴬もなにかを言いかけて止めて扉を開ける


「あなたも人を殺したのね」


扉が閉まる瞬間、そう言った

今回も悲しむ様な声色だった

それにほんの少しだけ救われた様な気持ちになることは変わらない

それはいけないことだろうか

その答えをくれる人はもうこの世に存在しない

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