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それぞれのマリーゴールド  作者: ゆうま
ルート⑨
6/43

ルート⑨3日目夜

6名が会議室Bの指定された席に座る


「今日は俺からひとつ良いかな」


全員が了承の返事をすることに苺との信頼の差が見える様に思える

そう思っていたが、ただそれだけではないと思う

2日目の夕食会がゲームを知ってから最初の夕食会

そこで全体に向かって発言する者を警戒しないなど、良く考えれば無理な話しだ


「本当は昨日聞くべきだったんだけど」

「前置きは良い。用件を言え」

「そうだね、ごめん。俺が確認したいのは、昨日鴬が話し合いに参加しない理由を話したときに鴬が言った考えの人が他にもいるか、だよ」


全員で生き残ったペナルティを避けたい

1人で生き残ることを目標とする

この2種類だ


「それはどっちだ」

「どっちでも良いよ。自分の目的のためなら人を殺しても構わないと考えている、という点ではどちらも同じだからね」


手を挙げたのはナンバーとブルー


「…………昨日、守りたい、言った。……そのため、殺す、決意、ある」

「苺が一昨日言った「殺されたくないなら殺すしかない」って、それは守りたい自分以外の誰かにも言えることだからね。ナンバーの気持ちが分からなくはないよ」


最初は周囲への牽制等だと思っていたが、本当は苺に向けて言ったことだ


「ブルーはどうなのかなん」

「俺は鴬と同じ考えだ。6人で生き残って失いたくないものがある。だから最終日に6人生き残っていれば本名が分かっている誰かを本名で指名する」

「鴬もそういうことだよね」

「そうよ」

「苺はあんなことを聞いたくらいだから積極的に参加するのかと思ったけど、どういう考えなのかな」


その場の全員の視線が苺に集まる


「負けたくない人がいるんだ。だからもしその人がこの中にいると分かったらその人にだけは負けない。分かってから準備してちゃ遅いでしょ?それだけだよん。基本的にはゲームに積極的に参加する気はないかなん」


流れが変わっても一語一句違わない言葉を俺は嘘だと思った

実際これが嘘か真実かと問われれば、嘘だ

だが、ただ単に言い換えをしているだけで、言っていることは変わらない


ずっと会いたかった人がいるんだ

だからもしその人がこの中にいると分かったらその人にだけは死なれたくない

分かってから準備してちゃ遅いでしょ?

それだけだよん

基本的にはゲームに積極的に参加する気はないかなん


こういうことだと俺は思っている

というか、願っている


「分かった。俺も出来ればゲームには参加したくないな。ウサギはどうかな」

「全員で生きて帰りたい。あんなもの、なくなってしまえば良い」


誰ひとりとして生き残りや指名成功の報酬について触れなかったことはどんな流れでも変わらない

不思議でたまらなかったが、単にお金に興味のない集団なだけだった


「つまり6人で生き残ったときのペナルティを受けたいってことなんだね」

「そこまで切望しているわけじゃないけど、なくなっても構わない。それならみんなで生きて帰ろうってこと」

「理由は少し違うけど、同じ目的の人がいて良かったよ」

「勘違いしないで。私はただ「どっちでも良い」だけ。自分が生き残りさえすれば他には興味がないから積極的に参加する気がない。そう言ったの」


最初にこの発言を聞いたときは驚いた

一体なんの利益があるのか、どんな目的が達成出来るのか、全く分からなかった


「ホース以外はその考えのはずだよね。綺麗な言葉で誤魔化さないでちゃんと言ったら?」

「そうだな。最終日前に自分が死んでちゃ俺と鴬は意味がない。なんせ失いたくないものがあるってことは帰りたいってことだからな」

「そうね。帰りたいから、そのためなら本名で指名することもあると思うわ」

「苺だって、自分が死んだら負けたかどうか分からないよね」

「うん、そうだねん。勝利に犠牲はつきものって考えの人もいるし、ウチは自分がそうじゃないって言える自信がないからねん」


全員の回答を得るとホースをじっと見る


「そういうことだけど、ホースはそれでも絶対に誰も本名で指名しないの」

「うん。俺は誰のことも本名で指名しないよ」

「理由は」

「後悔していることがあってね。それに関わっている子がここにいると思っているんだ。俺はその子に指名されるのを待つよ」

「罪悪感から解放されたいからってその子に多分裁かれることのない殺人の罪悪感を背負わせる気なの」

「そういうつもりじゃないよ。それなら…そうだね。もしその子がいて、俺が気付いたとするよ。そうしたら俺はその子にそのことを伝える。その次の晩、俺が生きていたらその子を本名で指名する。その子以外は絶対に指名しない。どう?」

「…………気味が悪い」


ナンバーが表情を変えるのを見たのは、このときが初めてだった


「たまに言われるよ」


全員それなりに人を殺す覚悟があるがお前はそれを分かっているのか、とウサギは問いかけた

だがホースはその優しさしかない問いに意図的に応えなかった

それが「気味の悪さ」を演出している

ウサギなりの優しさを無視したホースは困った様な笑顔を浮かべる


「だろうな…」


ブルーがため息と共にしたコメントに誰もなにも言わない

料理を運ぶとしよう


「せーの」


今日も部屋に入って話しかけられることはなく、食事も無言のままだった

掛け声はホース

視線で押し付け合いをしていたらホースが突然言った

5人が慌てて位置的に指しやすい者を指して名前を言い、全員がその手を自分の意志で下すと映し出された映像を見る


ホース 好きな動物:馬

ブルー 家族構成:父・母

ナンバー 好きな色:カーキ

苺 誕生月:7月

ウサギ 趣味:紅茶

鴬 好きな数字:4


「ひとつ良いかな。これはすぐに済むから」


こんなときでもホースは笑顔だ

なにを言うかなど、この流れなら誰にでも分かる


「鴬、俺はきみの本名を分かっているよ」

「アタシもよ…」


鴬が悲し気に俯く

ホースがこんなことを言ったのは、恐らく俺のせいだ

2日目に会いに行かなければ、あの約束はしない

だからもう少し様子を見るという選択をする


「考え直してはくれないのね」

「そうだね。それに鴬が俺の指名に成功すれば少なくとも鴬とブルーが動く理由がなくなるよね。そうすればナンバーと苺の心配も減るんじゃないかな。とても良い案だと俺は思うよ」


ホースの笑顔は崩れない

ナンバーと苺が自分の指針を「心配」と言われたことに少し反応する


「どちらにしても、鴬が俺を殺さないなら俺が鴬を殺すから条件は同じだよ。でも俺は生きて帰ろうとは思っていない。鴬は生きて帰りたい。どうすれば良いのかなんて、すぐに分かると思うけどな」

「…………復讐、ただの殺人、鴬、理解。……だから、嫌。……でも、帰りたい。……ホース、ずるい」

「随分鴬の肩を持つんだね」

「…………みんな、分かってる。……僕、言う、気持ち、分かる。……復讐、ただの殺人」


この発言の理由もまだ分かっていない


ホースが周囲を見回す

対峙している鴬とその少し近くにいるナンバー以外は扉付近にいて距離を取っている


「…………これ、答え」

「そっか。でも俺の考えは変わらないよ」


ホースが距離を取っている3人の方へ歩き出す

ウサギが肩をびくりと震わせるとブルーが手を引いて扉から遠ざける


「それじゃあまた明日、ここでこの時間にね」


扉を開け笑顔で去って行く


「ブルー、ありがとう」

「あ…手、悪い」

「ううん。ありがとう」

「青春なら他でやってよねん」


茶化す様に言って部屋を出る


「悪いな」

「きっと場を和ませようとしただけだよ」

「そうだな…。戻るか」

「うん。そうだね」


ブルーが扉を開けて譲るとお礼を言って出て行き、自身も出て行く

残されたのは鴬とナンバー


「…………鴬」

「ありがとう」

「…………どうする、つもり」

「少し考えるわ。きっとホースの気は変わらないからアタシが覚悟を決めるだけよ。殺すのか、殺されるのか」

「…………本当、殺される、思う」

「うん。だからこそ、あの子はあの人が好きだったのよ」

「…………2人、違う。受け止める、必要、ない」


鴬が優しくナンバーを抱きしめる


「優しいのね。あなたが傷付く必要なんてないのよ。でもありがとう」

「…………殺す、守れる?」

「それはあなたの考え方次第よ。でもアタシは救えることはあっても守れることはないと思うわ」

「…………僕、もう一度、考える。……鴬、結論、持ってる。……でも、悩んだ」

「ありがとう。ナンバーは守りたい人が守れると良いわね」

「…………うん」


身体を離すとふわりと笑った

その表情の変化はとても小さなものだったけど、ナンバーの偽りのない笑顔だと分かった


2人が部屋を出ると監視カメラを映したモニタが暗くなる


この2人はここで初めて会ったはずで、それなのになんだかお互いを分かり合っているという印象だった

だが、それは間違いだった

2人共「守る」ということに対して敏感なだけで、ナンバーがこの話し方をしなければ、鴬の勘違いを訂正すれば、この関係は成り立たない

つまり、ナンバーは一方的に鴬を動かすことが出来る

しばらくはそれに気付かず、2人に絆の様なものを感じていた

それが全員死亡という結果をもたらすルートもある


このルートではナンバーがそれを利用することはない

安心して見ていられるルートで、良かったと思ってしまう

4日目昼誰に会いに行くか

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