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それぞれのマリーゴールド  作者: ゆうま
ルート⑮
37/43

ルート⑮最後の部屋

花瓶の花をどうするか:生き残った参加者に話す

ナンバーは自分を指名することなく10日目を迎えた

これで全員のエンディングを回収することが出来る

だが、喜んではいられない

まだ「正しい終焉」を選ぶという自分が参加しているゲームの課題が残っている


『ゲームの勝者をここに呼べ』


これ以外を言わないことは分かっているので素直に従う


「ナンバー様、このゲームに勝利いたしましたので、別室へご案内いたします」

「……うん」


ナンバーはどうしてか、7日目以降俺と顔を合わせると少し微笑む様になった

理由は全く分からない

この広いホテルにひとりでないことを確認して安心しているのだと思うことにしている


「この花瓶…」


管理人室に入るとやはり見慣れない花瓶があった


「なんとも統一性のない花たちですね」

「……酷い、センス」

「詳しいのですか?」

「……そこまでは。……半年くらい、華道、習ってた、だけ」


同じくらい習っていたということは、同じ時期に習っていたのだろう

その頃は楽しかったんだろうな


「……でも、素人同然」

「確かに、僕も花に関するなにかに詳しいわけではありませんから、そうなんでしょうね」

「……一人称、僕?」

「あ、失礼しました」

「……多分、素の方が、素敵」


可愛い顔をした小柄な男の子

普段は無表情に近いが、分かってこれば表情が読めてくる

そんな子が、微笑んで言った言葉

それに顔が緩まないことなんて、あるか?

いや、ない


『ボタンを押してそのドアから入れ』


ナンバーを見ると、視線が返ってきた

恐らく聞こえていないだろう


「どうぞ」

「……その、前に」


花瓶から一輪抜き取って、花びらを一枚ずつ千切っていく


「なにをなさっているのですか」

「……花占い」


南京太郎らしからぬ行動に、思わず笑ってしまう


「……僕は、これからの、命運を。……霧島さん、あなたは」


名前まで覚えていたのか

余程演奏が印象的だったのだろうか

そう思ってくれる人がいるなら、また弾いても良いかもな

それに、みんなだってそう言ってくれた


「……早く」


気付けば花びらは全て千切られていた


「では、「ピアノを弾く、弾かない」で」

「……もう1回」

「南様、占いは良いことだけ信じれば良いんです」


こくりと小さく頷く


「では行きましょう」

「…ありがとう」


ドアをくぐった先の部屋は最初に来たときとなんら変わらない

だだっ広い、ただの大きな空間


『勝利おめでとう、南京太郎』

「…………ありがとう。……言う気、ならない」

『このゲームは5つの会場で同時進行されている。終焉に辿り着くまで、何度でもやり直しだ』

「…………彼、最初?……勝ち?」

『これはひとつの正解だ。終焉はこのゲームの参加者が決める』

「…………そう」


俺を見る

こちらから目が見えなくても、目が合っていることが分かる


「……知ってた?」

「はい。ここに来るまでは知りませんでしたが、ここに来るのは6回目なので」

「……そう」


そう言ったきり身体すらこちらに向けない

どうしたら良いのか


「……どうした。……僕、最後じゃない?」


ああ、誰を選ぶか決めるところだから黙って待ってくれていたのか


「最後です。決めなくてはいけません。――あ、少し触りますよ」


耳の辺りのフードに花びらがついている

この花びら、他でも見た気が…


「……ありがとう。……花言葉の通り、この先、絶望、かも。……でも、取ってくれた。だから、きっと、大丈夫」


花言葉…

そうだ、この花はウサギが好きだと言っていたとブルーが言った花だ

そして、ネイルの話しをするときに鴬が触った花でもあり、ホースが食べた花でもあり、苺がこの部屋に投げ入れた花でもある


「はい」


ウサギだけ吐出して違う行動をしている

これがなにを意味するのだろう


『やり直すか?やり直さないか?』


ナンバーが俺の服の袖を引っ張る

小さく頷くと天井付近を見上げる


「やり直しはしません。決めます。ただ、少し時間を下さい」


少し待ったが、返答はない

良いということだろう


時間をくれと言ったものの、考えることは多くなかった

ウサギの行動をどう見るか

そして、花言葉も考える必要があるだろう

ウサギが意味もなく花を選んだとは思えない


「南様、あの花瓶にあった花の名前と花言葉を分かるだけ教えて下さい」

「……えっと、3輪、同じ種類、分かる?」


言われてみれば同じ感じの花があったかもしれない


「……それが、オダマキ。……全体の意味、愚か。……色は、分からない。……オダマキ、1輪白。……それじゃない白、トルコキキョウ」


ウサギが俺にくれた花だ


「……オダマキと、違う、紫、バーベナ。……花占い、マリーゴールド。……それと違う、黄色、ナスタチウム」


花言葉を言わないということは分からないのだろう

マリーゴールドはさっき絶望だと言っていた

ブルーは予言だか予感だかと言っていたが、色によって違うと聞いたことがあるし、今ナンバーもそう言った

どちらかが覚え違いか、色のみの意味と全体の意味とかそんな感じだろう


「……もう1輪、思い出せない」


ウサギが俺に渡したのがトルコキキョウ、ここに持ち込んだのがナスタチウム

花瓶にあったのは8輪

あと1輪

俺はその花の名前を聞いたはずだ

花瓶に挿したままの花の名前は…


「ジニア」

「……あ、うん、そう。……でも、花言葉は…」

「分かりました。もう大丈夫です」


南京太郎と綾辻信元以外の参加者が花言葉を知っていたか、なんと思っていたのか、やはりそれは大して重要ではない

ウサギのみがマリーゴールドに積極的に触れていない

それが重要なんだと、俺は思う


「正しい終焉は、ウサギ――金井茉莉だ」

『理由は』

「ウサギ以外の参加者は管理人室にあった花瓶のマリーゴールドにのみ触れている。でも、ウサギだけは積極的にマリーゴールドに触れず、吐出して違う行動をしている。だからだ」

『良いだろう』


ナンバーを見ると大きく頷いてくれた


「……どうなる」

「分かりません」


俺よりも不安であろう南京太郎は、それでも妙に落ち着いている


「……8人、帰れると、良い」

「はい、ありがとうございます」


微笑んだ瞬間、視界が揺らめいた

意識が遠のいていく

暗闇に落ちていく


正しい終焉を選べたはずなのに、どうしてまたループが…




                    ***




「大丈夫。きっと大丈夫だよ」


これは俺が言ったのか

こんなことを言ったのは確かウサギと最後の部屋に行ったときだけだ


「あれ…」


ウサギの声がして、指す方向を見る

なにもない広場の中央に台座の様なものがある

部屋に見覚えがあると思って見回すと、最後の部屋だった


『金井茉莉、それを手に取れ』


会話が自然と続いているということはウサギにしてみれば俺が他の参加者のひとり生き残りのエンディングを進めている間の時間はなかったことになっているのか


「金井さん」


言う通りにしないとなにが起こるか分からない

そう言いたいところだが、無意味に怖がらせる必要はない

小さく頷いた俺に応えて小さく頷くと台座に向かった


『それをあいつに向けろ』

「でも…」

『向けろ。撃つか撃たないかは、お前次第だ』


どっちでも良いのに俺に向けることは強制?

意味が分からない

だが、迷っている暇はない


「金井さん、俺は大丈夫だよ。だから向けて」

「でも…こんなの…」


どうしてそんなに躊躇しているんだ


「それはなに?」

「……拳銃」

「女の子になんて物を持たせようとしてるんだ!」


思わず天井に向かって叫んだ


『向けろ。撃つか撃たないかは、お前次第だ』

「金井さん、迷っている時間はもうない。こいつらは3回言ってから少ししたら躊躇のないことをしてくる。良いから一先ず向けるんだ」

『向けろ。撃つか撃たないかは、お前次第だ』


3回目の同じ言葉に少し涙目になって、俺に銃を向ける


『お前は物語の終焉に選ばれた。他の者は死ぬ』

「え…どうして」

『こいつを殺すか?』

「殺さない」


無視されたことについてなにも言わない

ウサギは順応性が高いな


『何故だ』

「どっちでも良いならどうして殺さなくちゃいけないのか分からない」

『お友達の仇は良いのか』

「この人にやらせたのはあなただから」

『分かった。では次のゲームの説明をしよう』


は?!

俺はこんなのなかったし、次のゲームだってなかった

なんでこんなにも違うんだ


「聞いてないんだけどなぁ」

『銃を降ろして良いとは言っていない』

「あー、はいはい」


すっかり元のウサギだ

頼もしいな


『次のゲームでは5つのゲームで勝ち残ったプレイヤー同士でやってもらう』

「どんどん人数が減っていって、最後のひとりになったら解放ってところかな」

『ここは既にその会場だ』

「安定のスルースキルだー」


なにかの破裂音がして、俺に衝撃が走る

撃たれたな


「えぇー」


この声の感じと慌てて駆け寄って来る辺り、ウサギではないだろう

銃には詳しくないが、明らかにあの銃の音ではない


『ゲームの参加者以外をホテルに泊めたな』

「そのときから俺の負けは確定していたってことか」

『正しい終焉を導いたのに残念だったな』

「本当だよ、全く」


それが俺の勝敗に関わるんだったのか

聞いてみればあっけない

そっか、そこから間違いだったのか

どうやってループを発生させていたのか気になるけど、もう知ることは出来ない


「金井様、次のゲーム開始までこちらの待合室でお待ち下さいませ」

「待って下さい。あの人の手当てをお願いします」

「お部屋には1000万円がご用意してあります、次のゲームで大切なアイテムになります」

「あの、」

「死亡者が5名×100万円と、指名成功報酬の500万円、合計で1000万円です」

「そ、それより」


気になることがあったのに、それより俺か

優しいな

俺に手当てをしたって意味がない

この部屋からきみが出て行けば、俺はすぐトドメを刺される

いや、それならまだ良いかもしれない

このまま放置されて苦しみながら死んでいくしかないかもしれない


「大丈夫…。この、花が…あるから…」

「そんなものなんの役にも立たない!」

「大丈夫…忘れない…」

「っ!」


ぐっと拳を握ると俺に背を向け、新しい管理人を見る


「どうして死亡者数が5なんですか。もしデモンストレーションの人が入らないって言うなら指名成功報酬もないはずです。それに指名成功報酬は1000万円のはずですが」

「デモンストレーションの方は正確に言うとゲームの参加者ではないので死亡者数にカウントされません。ですが、最初に指名をするというのはリスクのあることなので特別に指名成功報酬をご用意させていただいております」

「名前が分かっているから「最初」っていうリスクだけってことですね」

「その通りでございます」

「分かりました」


一度俺を振り返る

頷くと頷き返してくれた

覚悟を決めた良い顔だ

俺には一生出来ない


新しい管理人に向き直ると待合室まで背筋を伸ばして歩いて行く

一度立ち止まって深呼吸


その手にはナスタチウムが握られていた

「正しい終焉」に誰を選ぶか:金井茉莉

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