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それぞれのマリーゴールド  作者: ゆうま
ルート⑭
34/43

ルート⑭5日目

確かに、Bを最初に選んだとき、4日目の夕食会でホースは鴬を本名で指名した

理由も全く同じだ

流れを変えることで頭がいっぱいで忘れていた


ホースは恐らく、ナンバーが自分のことを思い出していないことを分かっているだろう

となれば今日の夕食会でホースがナンバーを指名し、ホースのひとり勝ちになる

俺のせめてもの狙いは叶うことがなくなった

鴬がいれば拮抗した状態が続くかと思っていたが、そう甘くはなかった


今ナンバーのところへ行ってもホースを思い出させることは出来ないだろう

出来たとしても、相討ちだ

先を急ぐ必要はないのだから、ここでホースに会いに行ってナンバーのことを聞いてホースのエンディングを迎えるというのはありだ


よし、そうしよう


だが、なんと言って聞けば良いものか

藪蛇にナンバーの幼少期のことを聞くのは変だ

それなら、指名に成功してから聞けば良いんじゃないか?

だったら今日はナンバーに会いに行って、適当になにか話そう

一見なんてことのない会話の中にヒントがあるかもしれない


よし、そうしよう


今ナンバーは…エレベーターに乗っている

時間は12時40分

昼食を取ろうとレストランへ向かっているのだろう


「こんにちは」

「…………こんにちは」


手には焼きたてのホットケーキを持っている

流石に手ぶらで行くわけにはいかないし、最後に好物を食べさせてあげたい

でも、安藤希和が一緒じゃないと美味しくないかな


「ナンバー様がレストランへ行かれるのを見かけましたので焼きました。良かったら温かい内に食べて下さい」

「…………どこから」

「会議室Aを出て少し歩いたところです」

「…………そう。……もらう。ありがとう」


白く細い手が伸びてくる

暗がりだったらお化けかと思いそうだ


「トッピングはなにが良いですか?」

「……チョコソース、苺」


―――だから、安藤希和は苺なのか?


「……どうかした」

「いえ…、失礼しました。苺は丸ごとですか?カットしますか?」

「……まるごと、ひとつ」


デザート用に置いてあった苺を真ん中に置くと、チョコソースをかけた


「……ありがとう」


少し微笑んでいる様に見える


「――――ブルー様とウサギ様の最期に、思うところがおありなのですか」

「…………どうして」

「穏やかだからです」


不思議そうに首を傾げて手近な椅子に腰かけるとホットケーキを口へと運ぶ


「…………同性、指名、不可。……このまま、帰れる」


そうか、追加ルールがいつまで適応なのか書いていない

ナンバーは今後も適応されると思っているのか

だが、それならそうしてしまえば良い

その方が俺にとって都合が良いんだから


だが、それでも分からない


「ですが、苺様とご一緒でないのに―――」

「別に良い」

「え?」

「……別に良い。……そう言った」


どういう意味だ

守ろうと尽力してきたナンバーがどうしてそんなことを


「……希和、笑ってた。……だから、良い」


笑った理由も知らないのにか?

いや、気付かないフリをしているだけで気付いているのか?

だが、それならウサギを殺そうとするはずがない


苺は殺されるとき、誰かを殺すとき、なにか決まったことを言うか?

いいや、そんな記憶はない

もっと範囲を広げて「死に関わったとき」ならどうだろう


―――そうか


ナンバーは「願いが絶対に手に入らない、彼女の世界に早く終わりを」と言っていたことがあった

安藤希和の世界が終わり、南京太郎が最低限望むことが叶えられた

そのとき、安藤「希和は笑っていた。だから、良い」んだ


「そうですか。では、ひとりで生きて行かれるのですね」

「……うん。……今までと、なにも、変わらない」


安藤希和に会えるかもしれないということは、南京太郎にとって希望だったはずだ

その希望がなくなったのに、なにも変わらないはずなんてない


「では、なにか目標を持ってみてはいかがですか。とても大きなものではなく、すぐに達成出来そうな、簡単なものから」

「……思い付かない」

「例えば、ホース様とご友人になる――なんて、どうですか?」

「……それは、無理」

「どうしてでしょう」

「……ホースも、僕も、一番、だから。……戦うリング、違う。……でも、一番は、友達、なれない」


どうしよう、言っている意味が分からない


「……ホース、ジュニアだけど、世界大会、優勝。……僕も」


持っていた携帯ゲーム機を指す


「どちらも大きな大会で優勝経験があり、一番を目指す者同士は例え種目が違おうとも友人にはなれない。という意味でしょうか」

「……違う、からこそ。……かも、しれない」


そこは俺には分かんないから、正直どっちでも良いや

なにかに秀でている者にしかこの気持ちは分からないのだろう


一番を目指す者同士だからこそ分かり合えることがあると、俺は思う

だが、それは綺麗ごとなのかもしれない

現実だろうと、創作だろうと、いつだってトップ争いは熱く美しく描かれる

登れば登るほど、動ける範囲が狭くなっていく

期待に応えるため、演じることを強要されるからだ


だから俺は―――


「……もう一度だけ、弾いて。……あなたが最後に、舞台で弾いた、練習曲作品10-3」


どうして、それを


「……どこにでもいる普通のピアニスト。……それが、自己評価。……でも、僕は、違う」

「どういうことですか」

「……あんなに温かい、別れの曲、初めて。……今の、あなたの、別れの曲、聞きたい」


俺が舞台でそれを弾いたのは一度だけだ

ゲームから帰った翌日に開催された、希望がテーマの発表会

それを最後に、俺は舞台から降りた

あのとき、あの場にいたのか


「報酬は後払いです。どんな手を使ってでも、ひとりで勝って下さい」

「……分かった」


会議室Aと対面しているドアを開ける

その部屋は防音室になっていて、どうしてだか様々な楽器が置いてある

そして、部屋の真ん中には大きなグランドピアノが鎮座している


椅子の高さを調整し座り、ジャケットのボタンを開ける

指慣らしに軽く猫踏んじゃったを弾く

あれから全く触っていないから、思った様には動かない

だが、気負うことはない

南京太郎が聞きたいのは「今の俺が弾く」別れの曲だ


これを聞いてなにになるのか、全く分からない

でも、こんな下手くそで泥臭い俺が弾く、忘れられていない俺が弾く、別れの曲を望むのなら、もう一度弾いても良い

二度と弾かないと思ったけど、ここなら良いかな

みんなも聞いてくれてるかな


「――――ありがとう。……必ず、勝つ」


彼は力強く、そう言った

俺が微笑むと小さく頷いて部屋を出た




                    ***




2名が会議室Bの指定された席に座る


「最後の晩餐は食べたいかな」


殺す気満々だな


「……最後?……同性、出来ない」

「それは昨日の話しだと思うけどな」

「……今日、確認した。……ずっと、言ってた」


互いにそう言うしか手がない

それはホースも分かっているはずだ

それなのにどうしてホースは殺すと宣言したのか

もしかして、ナンバーが気付いていることに気付いていない?

ホースが?

なにかおかしい


「同性2人が残ると分かっているのに、それはないと思うけどな」


一瞬驚いた顔をしたが、すぐに睨む


「もしかして睨んでいるのかな。目が見えないから分からないよ」

「……鴬、殺す、思わない」


挑発には乗らずに冷静に返す


「そうなんだね。でも俺にはそれ以外の選択肢はなかったよ」

「……どうして。……鴬、ホースのこと、殺さない」

「俺と鴬が2人で残っても、そう思えるのかな」

「……不確定、水掛け論。……話し、戻す」


ホースの煽りに少し動じたものの、平静を保って返す

その言葉になにか言われるかもしれないが、無難な返しだろう


「そうだね。死んだ人のことよりも自分の生死の方が大切だよね」


ナンバーが拳を強く握る


「……そうじゃない。……ご飯、美味しく、食べたい」

「それは賛成だよ」

「……確認、した。……ずっと、言ってた。……2人で、帰る」


ホースがくすくすと笑いだす


「……なに」

「それで終われると思っているのかな」

「……どういう、意味」

「仮にこのゲームが終わるまであの追加ルールが続くとしよう。本当に2人で帰れるのかな。帰れたとして、その後なにもないのかな」

「……それは、分からない」

「そうだよね。書いてないし、誰も聞いてない。誰かが聞いていたとしても、それを俺たちは知らないからね」

「……だから、なに」


ホースがゆっくりとナンバーを指す


「俺は、きみを殺すよ」

「……出来ない。……言ってる」

「もしルール違反によるペナルティが死なら、きみが生き残るだけだよ。ノーリスクハイリターンな賭けだ」

「……駄目。……友達、なりたい。……リスク、ある」


今度は大笑い

誰だって嘘だと分かる


「南京太郎」

「椎名剛」


ナンバーも素早く指して言う

2人がほぼ同時に苦しみだす


「ほら…、出来た…。ね?」

「……ごめん。……勝てなかった」


こうなるだろうと予想はしていた

だが、ナンバーに本気で勝つ気があればもしかしたら、と思った

実際、粘った方だろう


『随分惜しいところまで来たじゃないか』


このルートで正しいってことか?

いいや、そんなヒントを出すとは思えない

なにも言わないのも少し嫌だし、他の管理人の状況でも聞いておくか

いや、待てよ

早い者勝ちでないのなら、やっぱりあんなことを言ったのはおかしい


「「正しい終焉」を早く選んだ順番によって、ペナルティや特典はないですね」


追加ルールはないと言っていた

だが、こういうパターンもある

決まっていたが言っていなかった

そういう屁理屈をこねてくる


『ない』

「それを聞いて安心しました」


俺の考え過ぎか…

安心して気が緩んだのか、暗闇に落ちていく感覚はいつもよりも気持ち悪かった

下手な運転手の車に乗っている様だ

車異動は慣れていて余程でなければ酔わないはずなのだが


なにを考えているのか、自分でも良く分からない

今は、そんなことより、次のことを考えなくては…

5日目昼会いに行く人物:ナンバー


BAD END「全員死亡」

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