表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それぞれのマリーゴールド  作者: ゆうま
ルート⑬
30/43

ルート⑬6日目

6日目昼会いに行く人物:鴬

3回目のときはナンバー、ブルー、鴬の3名だった生き残りが今回はブルーと代わって苺が生き残っている

ナンバーの心境の変化が俺の言葉だけだったのか、分からない

正直弱いと思っていた

変わらないと思っていた


だが、事実として生き残りは変わった


今日会いに行くのは鴬

ナンバーに会いに行っていて、ブルーは死亡

行けるのは鴬のみ

ここで鴬と話してもなんの収穫もないだろう

だが、会いに行かなければ益々なにもない


この組み合わせは初めてだ

なにが起こるか分からない

会いに行かないという選択肢はない


鴬は昨日、ナンバーに協力してウサギを本名で指名したことをどう思っているだろう

それを聞いてみるのも良いかもしれない


「こんにちは」


鴬は珍しく展望ラウンジにいた

どこか遠くを見ている

恐らく、どこを見ているというわけではないのだろう


「こんにちは」

「こんなところで、どうされたんですか?」

「昨日の夕食会での出来事を思い出していたんです」

「ブルー様とウサギ様の指名にどなた様かが成功された様ですね」

「知らないんですか」


驚く鴬に向かって不思議そうな顔をして首を傾げる


「はい。わたくしの仕事は夕食会の準備までですので」

「じゃあ、誰だと思いますか?」


楽しそうな顔をして尋ねてくるとまでは思っていなかった

昨日自分が殺したんだぞ


「そうですね…。ブルー様はナンバー様、ウサギ様は苺様でしょうか」

「どうしてですか?」

「お2人共各々に因縁…と言えば良いのでしょうか――そういったものがありそうでしたので」

「違います」


違うことも、誰が指名したのかも、知っている

だからそんな風に笑わないでくれ

どうしてこんなにも狂ってしまえるんだ


「ブルーをナンバーが指名したのは正解よ。でも、ウサギを指名したのはアタシ」

「そうでしたか。ウサギ様を指名なさったことを後悔されているのですか?」


きょとんとした表情を見せると急に笑い出す


「確かに。確かにそうかもそれないわ」


それなら笑うところじゃないと思う


「―――あのね」


急に落ち着いた声色になる

視線は窓の外


「ブルーとウサギが本名で指名された瞬間の苺の表情が気になってるのよ」


苺の表情?

気を付けて見ていなかったな


「あれは多分、絶望…だわ」


ガラスに反射した鴬の目は涙で潤んでいる様に見えた

どんな気持ちでその涙を――


「ナンバーは苺を守るつもりで、脅威である2人を排除したんだと思うわ。でも、それが苺の希望だったのよ。苺はウサギに殺されたかったのよ」


ゆっくりと一筋の涙が頬を伝う


「ナンバーはなにも分かってなかったのよ。アタシはナンバーを信じたのに」

「――その涙は、信じた自分を責める涙ですか」

「分からないわ…。どうして苺に肩入れしてるのかも分からないのよ」


ハンカチを差し出すと小さくお礼を言って受け取った


「難しい問題ですね。殺されることが希望…ですか」

「辛い世界から逃げる方法がそれしかないのなら、アタシもそれを望むかもしれないわ」

「そうですか」


以前俺に償えない罪を償う方法を教えてくれた鴬と同一人物だとは思えなかった

たった5日間の間になにがあったかで人がこうも変わってしまうとは、恐ろしい


「心配は心配だけど、今は自分の心配をしないといけないわね」


勢い良く立ち上がると、軽くお礼を言ってハンカチを返却される


「元々言動が読めなかったのに、今は更になにをするか分かったものじゃないわ」

「確かにそうですね。でも、どうするのですか」

「このままでも良いかもしれないわね」

「それは…」

「冗談よ。真面目なのね。…ありがとう」


微笑みを残してエレベーターへ向かう


「あの!ひとつだけ良いですか」

「なにかしら」

「どうしてブルー様ではなくウサギ様だと思われたのですか」


小さく笑う


「劣等感と一緒に生きてきた者の勘よ」


エレベーターに乗り込むとこちらを見て再度微笑む

なにも言えないまま扉が閉まる


理由が本当にそれだけなら、鴬は間違いなく今日なにもしないだろう

ただ、鴬はひとつ間違っている


劣等感を少しも持たずに生きられる者なんて、いない




                    ***




3名が会議室Bの指定された席に座る


「今日こそはきっと平和だよねん?」


鴬を見てにこにこと笑う

これが笑顔の圧力

だが、実際仕掛けるのは苺のはずだ


「そうね。だから、夕食の前でも良いんじゃないかしら」


鴬がゆっくりと指したのは、苺


「そうだねん」


にやりと笑って鴬を指し返す

ナンバーが指したのも鴬

当然だろう

鴬はどうするつもりだ

本当になにもしないのか

それで良いのか


「厚地加奈」

「安藤」


鴬を指名したのはナンバーだけで、苺はなにも言っていない

苺を指していた鴬は苗字だけを言って下の名前は言わない


鴬が苦しみだす


「安藤…アタシも…アンタに、負けたくなったわ…。勝ったって、辛い世界が…続くだけ、だもの…」

「うん。ウチのミスだからね、ウチが勝つよ。それで、お墓作るから」

「どこかから、見れたら…嬉しい、わね…」


力尽きた鴬をしっかりと受け止めるとナンバーを指す


「こんなところで守るなんて出来はしないんだよ」


涙がゆっくりと零れ落ちる


「だったらどうしてせめてあの2人に殺させてくれなかったの。せめて、どうして殺してくれなかったの」


ナンバーは視線を逸らしたままなにも言わない


ごめん…

理由は違っても、そうしようとしたナンバーを止めたのは俺なんだ

2人のエンディングを回収するヒントを得るという目的のために、そうしたのは俺なんだ

だけど、そうしなくちゃ誰も助からない

俺はまた、誰も救えない


「お願い、なにか言って」

「……ごめん」

「違う!そんなことが聞きたいんじゃない」


指定された席から立ち上がり、鴬ごと苺を抱きしめる


「好きだよ。ずっと、好きだよ。忘れたことなんてなかった」

「ウチもそう。ずっと好き。忘れたことなんてない。ずっと、忘れないから」

「うん」


離れて、鴬を床に横にする

向かい合い、見つめ合い、苺が再度ナンバーを指す


「南京太郎」


ナンバーが苦しみだす


「いつもウチのこと考えてくれてありがとう、京太郎」

「希和…」


微笑むと力なく倒れ込む

支えながら床に横にすると空中を見上げる


「早く家に帰して」


叫ぶ様にして言うが、当然返事はない


「そう、10日間は絶対にゲームをするんだねん。分かったよん」


2人と一度見ると、部屋を出た

この様子なら自分を指名することはないだろう


ヒントを得られれば、と思っていたが、まさか苺のエンディングを回収出来るとは思わなかった

それに、苺の意外な一面も見れた

劣等感と生きてきた…か


暗くなっている画面をいつまでも見つめていた

花瓶の花をどうするか

・そのままにする

・生き残った参加者に話す

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ