ルート⑬5日目
1日目夜の指名失敗ペナルティとして開示する情報をどれにするか
A B C → C
4日目夜の指名失敗ペナルティとして開示する情報をどれにするか
A B → B
5日目昼誰に会いに行くか
ブルー ナンバー 鴬 → ナンバー
今回はここまで3回目と同じ選択、言動をしてきた
ウサギクリア後で考えれば9回目と12回目と同じ選択、言動
分けた理由はひとつ、4日目夜の指名失敗ペナルティとして開示する情報が異なるからだ
3回目はB、9回目と12回目はA
Aを選べば5日目の夕食会のときナンバーは時間差でウサギを指名する
だが、Bを選べばナンバーは苺を指名する
しかも鴬をそそのかして自分はブルーを指名すると言い、鴬にウサギを指名させる
俺はこれを現実にする
このままなにもしなければ、6日目の夕食会で全員死亡
やり直しだ
だが、一応流れを変えるだけの道筋はある
3回目、6日目の夕食会のとき鴬は「ナンバーが指名されたがっていた」という旨の発言をしている
理由はイマイチ分からないが、苺かウサギ関連だろう
手がかりがない以上、今まで行ったことのないルートを行く必要があるのは間違いない
5日目の夜の生存者が変わればなにか起こるはずだ
そんな観測的希望があるのも事実ではある
どう転ぶか全く予想出来ないが、やるしかない
「ナンバー様、おはようございます。と言っても、もうすぐお昼ですが」
「…………おはよう、ございます」
「いつも遅い時間に朝食を食べていらっしゃるのですか?」
「…………今日だけ」
「それは良かったです。普段なら既に昼食用のバイキングに変えているものですから」
「…………軽いもの、取る。……少し、待ってて」
「かしこまりました」
黙って立ってナンバーがブランチと言うにも遅い食事を取るのを見る
「…………気不味い」
「失礼しました。ナンバー様の好みを知るチャンスかと思いまして」
「…………好きな食べ物、情報、ある」
「ですが、それ以外にも好きな食べ物はあると思いますし、苦手な食べ物もありますから」
「…………いつも、美味しい」
ここね、何回聞いても嬉しいよね
「……でも、パン……なんか、違う」
「パンは出来合いのものだからかもしれません」
「…………作らない?」
「残念ですが設備がないので作れません」
「…………そう。……残念」
ここも何度見ても可愛い
犬が耳を曲げて俯いている感じに思える
「そういえば、お伺いしたいことがあるのですが、よろしいですか?」
「…………食べながら、良い」
「ありがとうございます」
ナンバーが座った席の向かいの椅子に手をかけて、止めた
ウサギが言っていたことを思い出したからだ
あの2人は窓際の席でフルーツ系の紅茶を飲むのが好きだったんです
今ナンバーが座っているのは窓際の席だ
同じ言動を心掛け過ぎて忘れていた
近くの席の椅子を持ってナンバーから直角の位置に座る
やはりナンバーの視線が不自然に動くことはない
「…………どうぞ」
これまでは「なに」だったのが変わっている
正面に座らなかったことで態度が柔和になっているのか
「鴬様と随分親しい様子ですが、昨晩のことどう思われましたか?」
「……っ」
口に入れた食べ物が気管支にでも入ったのか、むせている
キスをされたことでも思い出したのだろう
「大丈夫ですか?お水を…」
「…………いらない。……大丈夫、座って。……意味、正確に」
「正確に、ですか」
浮かしていた腰を下ろすと少し戸惑っている風を装う
「昨晩鴬様はホース様を本名で指名されました。そのことをどうお思いですか?…という言い方で伝わりますか?」
「…………伝わる。……聞く、理由」
「ただの興味本位です。気分を害されてしまったのなら、申し訳ございません」
「…………少し、驚いた」
以前での会話の流れからして質問に驚いたという意味だろうが、普通に考えれば鴬がホースを指名したことについてだろう
理由は知っているが、こうも分かりにくい話し方をしないでほしいものだ
「鴬様がホース様を本名で指名なさったことに驚かれたのですか?」
「…………違う。……それは、不可避」
なにか考える様にしてスクランブルエッグとケチャップを混ぜている
「…………ホース、わがまま、付き合った。……鴬、すごい」
「そうですか。ではナンバー様はご自身がどなたかを本名で指名する理由を探していらっしゃるのですね」
「…………どうして」
「レストランに入っていらっしゃったとき随分と考え込んでいたご様子でしたので」
「…………気を付ける」
小さく微笑むとじっと目を覗き込まれる
「…………人、死ぬ、嬉しい?」
「それ自体はとても悲しいことだと思います。それに、どなたかの大切な方が亡くなるのもとても悲しく思います」
「…………分かった」
このあとナンバーは「怒らないで」と言う
この台詞の意味が、掴み切れていない
まだ同時に指名しなくても良いということは知らないはずだから、恐らく鴬にウサギを指名させることについてだろう
だが、それでどうして俺が怒ると思うのか
「…………今日、怒らないで」
気にはなるが、この言葉に対する対応を変えるわけにはいかない
「お客様に怒るなんてことは致しません」
「…………それなら、良い。……質問、終わり?」
「これは質問ではないのですが、ひとつアドバイスを」
「…………うん」
前は面倒そうに返事をしていた気もするが、今回は箸を止めて返事をしてくれる
座る位置によってこうも対応が違うとは
「ルールをもう一度きちんと読んで下さい」
「…………どうして」
「刑事ドラマでは現場100回とよく言いますから」
にっこりと笑って見せるが、すぐに顔を逸らされる
「…………分かった。……ありがとう」
「では、失礼します」
レストランの出入口付近で立ち止まり、勢い良く振り返って言う
「本当にもう無理なのでしょうか」
「…………なにが」
「本当にもう、守ることは出来ないのでしょうか」
「…………どういう、意味」
「いえ…ただ、なんとなくです。なんとなく、危ない橋を渡ろうとされている様な気がして」
泣きそうな顔でこちらを見る
「……他の誰かに殺されるくらいなら、僕が殺す」
一筋の涙が頬を伝う
「……だけど、それは、僕じゃなく、このゲームに…殺された、ことになるのかな」
「それは―――っ」
「……ごめん、答えなくて、良い。……やっぱり、聞きたくない」
このままでは流れが変わらないかもしれない
だが、今のナンバーになにを言ったところで届くことはないだろう
俯くナンバーに一礼してレストランを出た
***
5名が会議室Bの指定された席に座る
ナンバーと鴬が一度だけ視線を合わせる
3回目にはなかった行動だ
良い方向に変わった結果だと思いたい
無言の時間が続く
「今日確認したいこととかがある人はいないってことかなん?」
苺がそう言って見回す
誰も返事をしない
「つまんないの」
少しむくれた表情をして膝にナフキンを置く
4人も倣ってそうしたので、今日の話し合いはないということで合意したらしい
「今日はウチが掛け声やっても良いかなん?」
「嬉しそうに言うな」
「え?でも鴬がホースの指名に成功したんだから、もう誰も誰のことを成功させようとしなくて良いんでしょ?実はちょっとやってみたかったんだよねん」
「それはそうかもしれないけど、そんな言い方しなくても良いと思う」
「それウサギの台詞じゃないわよ」
若干苦い顔をしながらもきちんとつっこみを入れる
「いくよん?せーのっ!」
ナンバーが指しているのは…ブルーだ!
変わった
変えることが出来た
「綾辻信元」
「金井茉莉」
2人が苦しみだす
「茉莉…」
ブルーは手を伸ばしたが、ウサギは既に机に突っ伏せていた
毎度なにも言わないのがウサギらしいが、今回はなにか言っても良かったんじゃないかと思ってしまう
だって、知っていたはずだ
互いのいない世界で生きることを互いに望んでいないことを
「………苺」
苺 好きな数字:素数
「………苺?」
画面に映し出された情報を確認するとふらふらと出て行ってしまう
当然と言えば当然だ
苺はウサギに殺されたい
ウサギに操られているブルーでも構わない
それを出来なくしてしまったのは、理解者だと思っていた幼馴染
「本当にこれで良かったのかしら」
鴬の問いに答えず、俯いて拳を握る
「愚問だったわ。自分が誰かのためを思って行動したことがその人のためになるとは限らないなんて、分かり切ったことだったのよ」
ナンバーの頭を優しく撫でる
「案外、明日になったらケロッとしてるかもしれないわよ。一先ず今晩はそっとしておいた方が良いわ」
「……うん。……ありがとう。……ごめん」
「良いのよ。アタシが自分で決めてやったことなんだから」
頭を優しく叩くと部屋を出て行く
「……茉莉ちゃんなら、分かるのかな」
力なく垂れ下がっている手を包む
「……ごめん、自分で殺しておいて、頼るなんて」
しばらくそうしていたが、やがて意を決した様に立ち上がり、部屋を出て行った
画面が暗くなる
ナンバーがなにを決意したのか分からない
ヒントを得るためにとこのルートを選んだが、運良くナンバーのエンディングを回収出来そうだ
5日目昼誰に会いに行くか
鴬
*ウサギが「あの2人」について言及しているのは「ナスタチウムの決意」の「ルート⑧10日目昼」参照。タイトルは「ルート⑧9日目.10日目」となっている
*ナンバーの話し方については「ナスタチウムの決意」の「ルート⑤3日目昼」参照
*苺が殺されたいと話していたことについては「ナスタチウムの決意」の「ルート⑦3日目」参照




