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それぞれのマリーゴールド  作者: ゆうま
ルート⑫
28/43

ルート⑫最後の部屋

花瓶の花をどうするか:生き残った参加者に話す

結局ブルーは自分を指名することなく10日目を迎えた

前回苺が「ここで人の死を無駄にしない方法は殺した人間が生き残ること」だと言っていた

7日目の最後の言葉は、それを自分で思ったときの言葉だろうか

それとも、ゲームが10日目の夕食会が終わるまで続くと分かったときの言葉だろうか


『ゲームの勝者をここに呼べ』


これ以外を言わないことは分かっているので素直に従う


「ブルー様、このゲームに勝利いたしましたので、別室へご案内いたします」

「ああ」


俺を睨む様に見ると、しっかりとした顔つきで応える


「この花瓶…」


管理人室に入るとやはり見慣れない花瓶があった


「なんとも統一性のない花たちですね」

「これ…」


一凛の花に触れる


「確か、茉莉が好きだと言っていた花だ」


だが、金井茉莉はその花を放り投げたぞ


「そうなんですね。なんという花なんですか?」

「花の名前は知らないが、花言葉は確か「予言」だったな」


小さく笑う


「あの頃からなにか勘付いていたのなら、怖いヤツだ」

「確かにそうですね」


つられて俺も小さく笑う


『ボタンを押してそのドアから入れ』


ブルーを見ると、視線が返ってきた

恐らく聞こえていないだろう


「どうぞ」

「ありがとう」


ドアをくぐった先の部屋は最初に来たときとなんら変わらない

だだっ広い、ただの大きな空間


『勝利おめでとう、綾辻信元』

「ひとりで生き残ったときの報酬の変更を求める」

『一先ず聞こう』


一先ず、ね

今のブルーは知らないが、ブルーに同じ手を使われないとも限らない


「俺が、俺たちが選ばれた理由を教えてくれ。俺の母さんのことが関係しているのか。詳しく教えてくれ」


そういえば、いつだったかブルーの母親が過去の参加者ではないかという疑念を俺が持つ言葉をブルーは言った


『お前の本当の母親と育ての母親は同じゲームに参加していた。お前の本当の母親を殺した育ての母親は産まれたばかりのお前を引き取って育てることにした。当時の夫は赤の他人のお前を愛せず、離婚。今の夫と出会う。それだけだ』

「それだけって…」

「これは俺の問題だ。黙って聞いていろ」


確かに、この問題に関して言えば、俺は部外者だ


「それで、選ばれた理由は」

『このゲームは5つの会場で同時進行されている。終焉に辿り着くまで、何度でもやり直しだ』

「答える気がないってか。まぁ良い。どうせ大した理由がないから答えられないんだろ」


これは悪態をつきたくもなる


「この場に誰もいないってことはこいつが最初に終焉に辿り着いたってことか」

『これはひとつの正解だ。終焉はこのゲームの参加者が決める』

「このゲームの参加者は俺だけになっている」

「今言った「このゲームの参加者」っていうのは、俺を含む5人の管理人のことだと思います」


これまで通り知っていたと悟られる様なことは言わない


「思うって、知らなかったのか」

「察していた部分はありましたが…」

「そうか」


言葉を濁したことに気付きながらも、なにも言わない

ホースの場合は楽しんでいたのだろうが、ブルーは気遣いだろう

だとすれば俺が知っていたという仮説を立てているはずだ


『やり直すか?やり直さないか?』


お決まりの台詞

だが、ここでどちらかを選択するわけにはいかない


「その前に他の管理人の状況を教えて下さい」

『早い者は6人目、遅い者は5人目の説明中だ』


全員6人目と同じ意味だ

終焉を決められるのはここだけ

慎重に行くならナンバーと苺のエンディングも回収したいが、如何せん道筋が見えていない

2人のエンディングを見るのは諦めた方が良いのか?


「なにを悩んでいるんだ」


自分が残ったんだから自分が正しい終焉だとでも言いたいのか?


「他の管理人の状況なんて聞いてどうする。これは早い者勝ちなのか?前にここに誰かと来たときにそう聞いたのか」

「え…?」

「早い者勝ちでないなら、レースでないなら、確実を求めるべきだ」


確かに、誰にもそう言われたわけじゃない

最初に他の管理人の進捗状況を聞かされたのは、俺が全く進んでいないときだった

もう少しペースを上げろ、くらいの気持ちだったのかもしれない


「これはレースなんですか」

『今言ったルール以外はない。追加ルールもない。正しい終焉を導け』


ブルーを見ると、にたりと笑ってこっちを見ていた


「ありがとう」

「お前のためじゃない。お前は正解すれば生きてはいられるだろう。だが、俺たちは分からない」

「探すよ。頼りないかもしれないけど、信じてほしい」

「乗る船がそれしかないんだから仕方ないな」


再びにたりと笑うと背中を少し強く叩かれる


「やり直します」


ブルーが船が港から出るときの合図をしてくれる

返そうと腕を伸ばしたが、俺の意識は暗闇に落ちていき、そうすることは出来なかった

「正しい終焉」に選ぶか選ばないか:選ばない


*ブルーが母親について話したのは「ルート⑩4日目昼」のみだが、過去の参加者については「ナスタチウムの決意」の「ルート⑤2日目昼」でも聞いている

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