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それぞれのマリーゴールド  作者: ゆうま
ルート⑪
21/43

ルート⑪2日目

1日目夜の指名失敗ペナルティとして開示する情報をどれにするか

A B C → A


2日目昼誰に会いに行くか

ナンバー 苺 ウサギ → ウサギ

ホース 実家:芸能事務経営

ブルー 趣味:野球

ナンバー 家族構成:父、母、兄、姉、妹、弟

苺 家族構成:父、母、祖父、妹

鴬 誕生月:2月


これが1日目の夕食会後に指名失敗ペナルティとして開示された情報だ


他の4人の管理人は既に5人目を攻略中

俺はルートが見えているとはいえ4人目

明らかに遅れている


だが、今回は俺の言動に左右されそうなことは起きそうにない

終盤に狙ったところで狙った言動が出来れば上手くいくはずだ

だから今回はまだ俺が本当に参加しているゲームのルールを聞く前、ウサギの攻略のため安全を取り、聞けなかった会話を聞きに行く


鴬が受け取った手紙はウサギが差し出したものではない

女子の字だと言っていたのが嘘でなければ、苺だ

だが、以前のルートで名前を聞いてナンバーはやっと思い出していた

対して苺は名前を聞いても思い出せない様子だった

それが、開示される情報が違うというだけでそんなことが出来るのだろうか


鴬が字について嘘を吐く理由はないが、ウサギが知らないと嘘を吐く理由はある

なので、苺が「自分が書いた」と言ったのが嘘であると仮定する

理由はウサギ関連だろう

苺はいつも自信満々にウサギを指名するが、その名前はいつも母親の名前だ

それ以外では特段目立った動きをしていない

苺が「自分が書いた」と言ったときは悪目立ちしているときだった

もし苺が特定の誰かに指名されたがっているのであれば、納得出来る行動だ


「っ!」


いつも6時にセットしている目覚ましが鳴り響く

まだ5時半だ

この時間に目が覚めたのも珍しいことだが、どうして30分早く鳴ったのか


ふと監視カメラの映像に視線をやるとホースが西棟のエレベーター内の画面に映っている

こんな早朝になんの用があって行くんだ

もし誰かの身に危険があってはいけない

この場合選んだ者以外に接触してもなにも言われないだろう


エレベーターは既に動いている

どこで止まるか確認して非常階段で駆け上がった方が早いだろう

大方鴬の部屋がある4階だろうが、どうし―――3階?

俺は今日、ウサギに会う選択をしている

3階にあるのはウサギの部屋だ

マズいかもしれない


階段を駆け上がる

なにかある前に、着けるか?

間に合え


非常階段のドアを開けるとホースが見えた

幸い気付いていない様子だ

ホースが立っている部屋のドアは開いていて、それはウサギの部屋だ

具体的になにかを予想していたわけではないが、ホースの態度は予想と違った


眠そうな顔で紙とペンを持つウサギにいつもの笑顔でなにかを言っている

ウサギは言われるままにペンを動かし、眠そうに目を擦る

それを15分ほど繰り返し、ウサギから紙とペンを受け取るとお礼を言ってエレベーターに乗り込んだ

下に向かっている


ホースがなにをしたのか、すぐに分かった

だが、それを確かめるために俺は非常階段で4階に行き、鴬のはす向かいの部屋に入って待った


30分後、エレベーターが到着した音がした

すぐ近くまで足音が来て、止まる

そしてまた遠ざかる

少しドアを開けると、やはり足音の主はホースだった

鴬の部屋には紙が挟まっている


これで手紙の謎は解けた


ウサギに会ってもなにも変わらないだろうが、変なことになっても困る

今日はなにもしなくても良いだろう




                    ***




6名が会議室Bの指定された席に座る


「ひとつ確認したいことがあるんだけど、良いかなん?」


誰もが肯定も否定もしない


「答えるかは質問を聞いてからってことで良いのかなん?」


それにすら返答はない


用心深く相手の出方を窺っているホースとブルー

興味のなさそうなナンバーとウサギ

このとき鴬だけは、妙に堂々としている


「今日の10時からの話し合いに参加したか不参加だったかと、その理由が知りたいなーって思うんだけど、駄目かな?」


提案した苺を含め3名が周囲を見渡す


「どうしてそんなことを知りたいのかしら」

「みんながどんな考えでこのゲームに挑むのか、それが知りたいんだ。いくらなんでもルール違反で死にたくないからって理由で夕食会に参加している人を指名したくないからねん」


意外な人物からの質問にほんの少し驚いた様子を見せたが、すぐにいつもの貼り付けた笑みを浮かべて言う


「本名が分かれば本名で指名するって言ってるように聞こえるけど?」

「違う違う。全然違う名前だって指名されれば誰だってドキッとするでしょ?それだけだよん」

「へぇ、じゃあアタシから言ってあげるわ。他の人たちは反対してないし、良いわよね」


ナンバーがちらりとホースを見たが、ホースはそれを無視した

他の参加者がなにも言わないのは高圧的な態度だからではなく、なにを言おうとしているのか気になるからだろう


「アタシは参加してないわ。理由はルールを読んだからよ」

「もしかして1人で生き残ることを目標にするつもりなのかなん?」

「違うわ。だけど6人全員で生き残って失いたくないものがあるのよ。だから人を殺す決意をしたの。相手は必ず話し合いに参加する。そう思ったから行かなかったわ」


視線がホースに集まった

鴬以外で参加しそうな人物となれば普通の考えだ


「話し合いに来なかった時点で分かってはいたけど…。そっか、そういう決断をしたんだね。分かったよ」


微笑みを見せるホースから視線が外されていく


「そういうことだから、ペナルティを受けたくないだけの人は安心しなさい」

「問題は1人で生き残ることを目標にしてる人がいるか、かなん?」

「いないようね」


鴬がそう言ったのは時間にすれば10秒後くらいだろうか

たったそれだけの時間なのに、随分経った気がする


「だったら今後自分が殺される心配をする必要はないわ」


このとき俺は鴬についてこう思っていた


詐欺のことを知っていて葛藤していたはずの鴬は、味方までしたはずの鴬は、どこへ行ったのだろう

誰か…いや、そんなことをするのは苺くらいか

苺になにか吹き込まれたんだ

今回は苺が多く動くことになりそうだ


だが、実際は違う

字を書いたのはウサギで、ウサギはそれがなにに使われるのか知らなかった

今思えば、苺がそんなことをする必要はない


「…………鴬、自分、考え?」

「そうよ」

「…………分かった」


それきり誰もなにも言わないので料理を運ぶ

これから人が死ぬと分かっているからなのか、空気は重く、誰もなにも言わなかった


「掛け声は俺にさせてくれないかな」


穏やかな表情をするホースに誰もなにも言えない

唯一言えるはずの鴬はどうしてか拳を握って俯いている


「せーの」


全員が誰かを指し示して名前を言う


「椎名剛」


ホースが苦しみだし、ナンバーが駆け寄って支えになる


「ごめん、本当は、話して…ないんだ…」

「……分かってる」

「優しい、ね…。あり、が…と」


ナンバーの涙を拭おうと伸ばした手が地面に落ちる

その涙はホースの目の辺りに落ち、まるでホースが泣いたかの様に見えた


「……思い出した。……ごめん、忘れてて。……剛くん」


椎名剛を床に寝かせると鴬の正面に立つ


「なによ。今まで忘れてた人の敵討ちとか言うつもりじゃないでしょうね」


涙をぼろぼろ零しながら首を大きく振る


「……伝言。……ある人に、指名されて、死んだら、伝えてほしい。……ある人は、言わなくても、分かる」

「この流れでアタシが「ある人」じゃなかったら変よね。聞いてあげるわ。どうせ言い訳か謝罪よ」

「……「俺はきっと、あの子と違って天国には行けない。だけどきっと見つけ出す。それでもう一度抱きしめたい。なにを許せなくても、それだけは許してほしい」」


そうだ、どうして忘れていた

ホースはナンバーに伝言を頼んでいた

前回の印象と随分違うが、一体どういうことなのだろうか


「それってアタシが殺そうとすること分かってないと言えないわよね」


ぐっと拳を握って俯いていた鴬がふと顔を上げて言った


「……最初から、覚悟、してた」

「そんなはずないわ。アタシ、今日までそのことを知らな―――」


慌てて室内を見回す

前のとき同様、ウサギはいない

気を付けて見ていたはずだが、いつだったのか分からなかった


「どうかしたのか」

「―――なんでもないわ」

「そんなはずないだろ」

「本当になんでもないのよ!」

「ああ、そうかよ。じゃあウサギに事情を聞くしかねぇな」


いないのは非難を免れることくらいしか考えられない

このとき恐らくホースに頼まれて文字を書いたことを思い出し、咄嗟に逃げたのだろう


「なんでウサギなのよ」

「今ここにいないからだ」

「可哀想に、とばっちりね。ウサギは関係ないわよ」

「じゃあ今ここで説明しろ。なにがあった」


鴬がちらりと苺を見たため視線が苺に集まる


「えー、ウチなにも知らないんだけどなん」

「おい、うぐ―――」

「……出て行った」

「なんで引き留めなかったんだ」

「……ウサギ、いない、不公平。……言った。……同意見」

「そうかよ」


悪態をつくと情報が映し出された壁を見て部屋を出た


ブルー 好きな動物:猫

ナンバー 好きな動物:苦手

苺 趣味:映画鑑賞

ウサギ 将来の夢:なし


「ウチらも部屋戻ろっか」

「……うん」


2人が部屋を出ていき、監視カメラの映像が消える

3日目昼誰に会いに行くか

ナンバー 苺


*ホースがナンバーに頼んだ伝言については前作「ナスタチウムの決意」の「ルート⑦2日目昼」参照

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