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それぞれのマリーゴールド  作者: ゆうま
ルート⑩
18/43

ルート⑩4日目昼

4日目昼会いに行く人物:ブルー

昨日のことを整理しなくては

前のときと随分違う流れだったから、当初の予定と変えなくてはいけないところがないか確認しなくてはいけない


いや、流れは違ったが、根本的な部分はなにも変わらなかった

ウサギとブルーにナンバーを裏切る理由が出来ただけだ


強いて言うのであれば、ウサギに従っただけのブルーが自分の意志を持ってナンバーを指名したということか

だが理由はウサギを守るため、というどこまでもウサギ中心の動きだ

今後ブルーに関わらないのであれば大した変化ではないが、今日会いに行くのはブルーで、説得しなくてはいけないことがある

これは頭に置いておく必要があるだろう


今回ブルーにする話しはウサギの話しだと言っても過言ではない

そして、成功させるためにはブルーが抱いているであろう疑問を否定しなくてはいけない

実際そうだと知っているにも関わらず、だ

少々心の痛む行為ではあるが、そんなことを言っていられる場合ではない


俺は急いでゲームをクリアして生き延びなければいけない

何度この場所に来ようが知ったことか

俺は何度だってゲームに勝って、みんなの分の幸せも探す

それが俺に出来ることだって、このゲームで知ったんだ

やっぱりこのゲームで背負った罪を償う方法は同じゲームの中で見つかった


なにを言うかは決まっている

考える時間が少なくても駄目、多くても駄目

昼食前か直後だな


「こんにちは」

「昼食前に嫌な顔を見た」

「そう仰らないで下さい。お知らせを持って来たんですよ」


訝し気に俺を見る


「良い知らせと悪い知らせ、どちらから聞きたいですか?」

「どうせどっちも悪い知らせだろ」

「そうではないと証明するために良い知らせからにしましょうか」


難癖をつけてくるとは思ったが、ここまで邪見にされるとは思っていなかった

今回はなにもしていないはずだし、夕食会でも話しに上がっていないはずなのにどうしてだろうか


「ウサギ様の願いを叶えて差し上げられるのは、ブルー様、あなただけです」

「それのどこが良い知らせなんだ」

「大切にしたい人物の願いを叶えられるなんて、幸せなことではありませんか?」

「ウサギの願いを知っていて、本気で言っているのか」


その返しが来るってことはまさか気付いているのか

ずっと気付いていないと思っていた

だから殺す機会がいくらでもあったあの回でも指名しなかったんじゃないのか


「悪い知らせは、もうひとりの方が今夜動きそうです」

「だろうな…。今日の夕食会で鴬が俺、ホースがウサギを指名。明日の夕食会でホースが鴬を指名。それでホースのひとり勝ちだ」


ブルーもホースが鴬を裏切ると思っているのか

ナンバーも最後までそれを懸念し、鴬を心配していた

それにしても、どうして自分が今夜死ぬと分かっていてこんなに落ち着いているのか

俺には理解出来ない

どうして死を受け入れている


「母さんは俺がこのホテルに出発する前珍しく店のケーキを食べさせてくれて、こう言った「帰ったら同じケーキを食べよう。でもきっと、そのケーキは今よりもっと美味しい。だって、魔法の液体があるから」ってな」


ウサギに会うことが分かっていたのか

というかこのホテルで起きることが分かっていたのか

まさか、過去の参加者


「デモンストレーションのとき全て理解した」

「本当に全てなのでしょうか」

「どういう意味だ」


そのゲームのゲームマスターになる基準は分からないが、クリアして終わりではない

ではどうしてブルーの母親は改めて徴集されることがなかったのか

可能性としてあるのは、自分の子供を参加させるという条件で免除された

だから移店させたのかもしれない

これはブルーに言うべきではないな


「ブルー様は全体像をもう少し掴んでみえると思ったのですが、過大評価だったようです」

「だから、どういう意味だ」

「そのままです。誰が誰を本名で指名出来たのか、出来るのか、分かっているはずです」


考えなしに「本当に全てなのか」と言ってしまったことは若干後悔している

だが、考え込むブルーの様子を見るに、話題をすり替えることには成功した

なんとでも取れる、なんとなく思わせぶりな台詞だったことが不幸中の幸いというやつだ


「分かった。今夜ホースは鴬、鴬はウサギを指名する。そういうことだな。だが、そうなると俺とホースが残ることになる。ホースはそれで満足なのか」


考えはそのままでいてほしい

だが、それでホースが満足するのか、という疑問は良い疑問だ

実際、妥協点だろう

どうしても本名で指名出来ないのだから仕方がない


「ホース様が鴬様を本名で指名されるのかは、わたくしには分かりかねます」

「ならどうして鴬は分かった」

「さて、どうしてでしょう」


顔を逸らして舌打ちをされる


「ただ、問題は「誰が誰を本名で指名出来るのか」ですから」

「どうしてそれを俺に言う」

「お客様には平等に接するべきではあります。しかし、わたくしはホテルマンである前に人間ですから」

「答えになっていない」

「全ての質問に正直に答えなければいけないというルールはありませんので」


にこりと笑ってみせる

ただ、これは「個人的に誰かの願いを叶えたい」や「誰かの勝ちを願っている」という風にしか取れないだろう

だからこそ、ブルーはその続きが聞きたい

でも言わない


「そういえばお食事に行かれるところでしたね。引き留めてしまって申し訳ございません」

「いいや、昼食よりも重要なことがある」

「なんでしょうか」

「お前と話すことだ」

「わたくしは三大欲求に勝ってしまったのですね。罪な男、というやつですね」


あからさまに顔をしかめる


「気持ちの悪い言い方をするな。俺はお前の答えが聞きたいだけだ」

「ご自分でお考え下さい」

「じゃあひとつだけ答えろ。これはルールについてだ」

「わたくしに答えられる範囲でしたら考えます」


舌打ちをするが俺をじっと見ている

考えるという言い方が気に入らないのだろう

だが、言っても無駄だと分かっている


「それは答えられない範囲の場合「答えられない」と答えるということで間違いないか」

「確かに、そうなりますね」


揚げ足取りめ


「互いに指名が成功した場合や3人が右回りで指名し、各々成功した場合どうなる」

「指名に成功した順に死にます。2名に同じ日の夕食会で指名に成功された場合は先に指名に成功した方にのみ賞金が付与されます」

「俺たちは同時に指名している」

「では実演してみましょう。せーので田中太郎と言って下さい」


小さく首を傾げたがやる気はあるらしく、俺の掛け声を待っている


「せーの、たーなーかーたーろーうー」

「田中太郎」


今度は眉を寄せた

顔や態度に出るタイプはこういうときに便利だが、普段ならあまり関わりたくはない


「どちらが早かったですか?」

「俺だな」

「大袈裟に表現すると、こういうことです」

「言い終わるのが早い方が早く指名したという解釈なのか」

「そうです」


腕を組んで俯く

なにをそんなに考える必要があるのか


「分かった。ありがとう」

「いいえ」


レストランへ入って行くブルーの背中を見送る

そういえば前お礼を言われたときはブルーがお礼を言うイメージなんてなかったから驚いたな

だけど、それはこんなところにいるからかもしれない

このゲームの参加者は全員どこかおかしい

それは確かだ

でも、このゲームに参加しなければ、普通の人生を送る普通の人のはずだったはずだ

それは多分、確かだ

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