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それぞれのマリーゴールド  作者: ゆうま
序章
1/43

チェックイン

この作品ではとあるひとつの設定を設けた上で選択肢は作者が選ばせていただきます。

*ループは1日目の夕食会以降にしか起きないので、序章は「ナスタチウムの決意」と同じ内容となっております。

現在時刻は14時03分

チェックインの時間は14時から16時

そう「5名」には案内してある


進行役は初めてで肩に力が入ってしまう

あんな怪し気な案内で今回も全員集まるのだろうか


…多分集まるんだろう


自動ドアが開く

姿を見せたのは少し長髪だが清潔さを忘れない、背の高い爽やかな青年

真っ直ぐフロントへ向かって来る


「いらっしゃいませ。招待状はお持ちでしょうか」

「はい」


笑顔で差し出す


「ホース様ですね。お部屋は東棟209号室です」


鍵をフロントテーブルに置いて左を掌で指す


「エレベーターで2階へ上がっていただいて、廊下を右へ行っていただくとございます」

「分かりました。ありがとう」


鍵を取ると爽やかに微笑んでエレベーターへ向かって歩く

それは颯爽と表現出来る様な気もしたし、優雅とも表現出来る様な気がした


それは俺にあることを確信させた

「なにかの世界」で「それなりの地位」にいる親を持っている

こんなことに巻き込まれる様な人間が「普通」のはずなんてないんだ

あのときだって―――


「あの…」


その声にハッとしていつの間にか俯いていた顔を上げる


「失礼致しました。いらっしゃいませ」


招待状はお持ちでしょうか

そう尋ねようとしたが既に差し出す準備をしている


「お待ちしておりました。拝見させていただきます」


少し周囲を見回してからおずおずと招待状を出す

こんな怪し気な招待状で余裕すら見せていたあのホースという青年の方が俺からしてみればおかしい


―――ただ、外見に似合わない

金髪っぽい、でも茶色の部類に入る色の髪を縦に巻いている

服装は派手で今時

一言で言えばギャルっぽい


なのに立ち振る舞いはただの普通の…というより、おとなしい部類に入りそうな女子高生

不安そうな表情で周囲を気にしている


「鴬様ですね。お部屋は西棟403号室です」


鍵をフロントテーブルに置いて右を掌で指す


「エレベーターで4階へ上がっていただいて、廊下を左へ行っていただくとございます」

「あ、はい。ありがとうございます」


恐る恐る鍵を手に取ると周囲を見回してエレベーターへ向かって行く

警戒するならエレベーターは使わない方が良い

なにかあっても「電気系統のトラブルによる故障によって起こった事故」で片付けられてしまう

恐らくどんな声を上げようともそれは無視されてしまうだろう

それが権力というものだ


だけど今はそんな警戒も無意味

ゲーム以外で死ぬことはない

それは、俺が知っている

だけど今それを伝えることは出来ないし、俺自体にも不信感を持っているだろうから不用意な干渉は避けた方が良い


エレベーターが4階に着いた表示を見てなんとなくほっとする

あの子はどこまで生き残れるだろうか

とても人を殺せるようには思えない


自動ドアの開く音がして視線を向ける

日に焼けた黒い肌、良い体付き

服装は少しスポーティーで黒髪の短髪

スポーツをしているのは間違いない


「いらっしゃ」

「これ、ここで良いっすか」


招待状を見せる


少年、スポーツをしているのなら尚更分かるだろう

人の話しは最後まで聞きなさい


「はい。拝見させていただきます」

「ん」


ぶっきらぼうに差し出す

尋ねたということとこの態度…

もしかして場違いとか思っての照れ隠しか?

それなら理解出来る範囲内だ


「ブルー様ですね。お部屋は東棟302号室です」


鍵をフロントテーブルに置いて左を掌で指す


「エレベーターで3階へ上がっていただいて、廊下を左へ行っていただくとございます」

「ども」


鍵を手に取ると小さく会釈してエレベーターへ向かう

場違いで照れるスポーツ少年…か

場面によっては上手く動いてくれそうではある


というか鴬は明らかに一般人だ

そしてブルーも両親どちらかがスポーツ界のレジェンドだとしても、恐らくあまりその世界には触れていない

選定基準が分からない


現在時刻は14時半

16時までに来ると言われているのがあと2名

どんな子たちだろうか




                    ***




再び自動ドアが開いたのは15時半前だった

1時間近く誰も来ないし、あと30分くらいだし、もう来ないのかと思って不安になっただろうが


「いらっしゃいませ。招待状はお持ちでしょうか」

「…………………」


なにも言う気配がない

どうしたら良いんだ


「…………忘れた」


少しは悪びれようよ、少年

なんでゲームしながら真っ直ぐフロントに来れたのかも謎だけど、人と話すときはゲーム止めよう?ね?


「…………ナンバー」


確かにその名前はある

でも本人だと確認する手段はない

まぁ招待状持ってたって本人かどうかなんて分かんないけどね

でも多分、本人じゃなかったら消される

これは俺の勘だけど、間違いないと思っている


内線が鳴った

一言「通せ」とだけ言われて切られるに違いない


「恐らく確認の電話です。少々お待ちくださいませ」


あの声を聞くのは嫌だ

でも仕方がない


「はい。フロントです」

『通せ』


予想通りその一言で内線を切られる

だが今はまだ「ある程度」普通のホテルだと思っていてもらわなくてはいけない

普通ならフロントから確認の連絡入れないとそんな連絡来るわけないんだけどね

だけど出来ればこの俺がゲームの主催者、又は共犯者だと思ってもらわないと


「分かりました。確認ありがとうございます」


通じてもいない電話に向かってそう言うと受話器を置く


「お待たせ致しました。確認が取れましたので、招待状の確認はさせていただかなくても大丈夫です」

「…………どうも」

「いいえ、ナンバー様のお部屋は東棟418号室です」


鍵をフロントテーブルに置いて左を掌で指す


「エレベーターで4階へ上がっていただいて、廊下を左へ行っていただくとございます」

「…………ありがとう」


フードを被っている上に前髪が目を隠していてどこを見ているか分からない

けれど確かに目を見て言われた気がした


鍵を持ってエレベーターへ向かう

左を向いたときにちらりと見えた目は綺麗な緑色をしていた

小柄で顔立ちは幼そうだったけど白髪だし、ハーフかなにかなんだろうか

あと萌え袖が気になる

もうすぐ梅雨なのに、暑くはないのだろうか


自動ドアが開く音で前を向く

瞬間、目が合う


「こんにちは」


高身長、元気の中にも清楚を忘れない服装、綺麗な顔立ちに似合うショートヘア

それに似合わない人懐っこそうな笑顔と少し甘い声


「いらっしゃいませ」

「どーも。はい、招待状。お願いします」


軽い口調と敬語が入り混じる

不思議な子だと思うのと同時に、気味の悪い子だとも思った


「苺様ですね。お部屋は西棟の212号室です」


鍵をフロントテーブルに置いて右を掌で指す


「エレベーターで2階へ上がっていただいて、廊下を左へ行っていただくとございます」

「ありがとう」


鍵を取ると小さく笑ってエレベーターへ向かう

まるで第一印象を見透かされた様な感じ

それに、こういう場所に慣れている

そういえばナンバーも慣れてはいそうだったな


2人とも第一印象は簡潔に一言で言ってしまえば「良く分からない」だ

それだけで結びつけるのは良くないが、2人にはなにか似ているものを感じる

そんな気がする


…ところで、だ

16時前に招待した5名が揃ったのは良い

だがあと2名は何時にチェックインの時間を指定したのか聞いていない

夕食の時間は18時だと聞いているから17時半までには来るだろう

だけどそれまでずっとここで立ちっぱなしか…

あの人はあの人で大変だったんだな


そう思って1年前を顧みた


自動ドアが開く音でハッとして時計を見ると17時

確かに、16時までの5人が遅れて来たとしても被るような時間ではないだろう


黄色を差し色にした「良い服」を着て、長い黒髪をひとつに結った少年がずんずんとこちらに歩いてくる

俺にはこの少年がどんな役割を持っているのか分かっている

やりたくないことをやらなければいけないときが人にはある


「いらっしゃいませ。招待状はお持ちでしょうか」

「なんで俺様が、この城野歩が、こんなふざけた名前でこんな僻地にあるホテルに招待されなくてはいけないのだ!」


じゃあなんで来たんだよ

しかも多分時間通り


「決して本名は名乗らぬ様にお気を付け下さい、と記載させていただいたと存じますが」

「それは何故だと聞いているのだ!理由を説明しないのなら帰るぞ!」


あー、めんどくせぇー

なんでこのガキこんなに上からなんだよ


「…本日はどの様に当ホテルへいらしたのですか?」

「お前等が寄越した車で来たに決まっているだろう!そんなことも把握出来ていないのか」

「いいえ、確認の為聞かせていただきました」


笑顔を崩さない俺にこれ以上吠えるのが無駄だと思ったのか大きなため息を吐く


「で、それがどうしたと言うのだ」

「車は既に車庫へ向かっております。どの様にお帰りになるおつもりですか?」


振り返って自動ドアの先を見る

当然この少年が乗って来た車はない


「待っておけと言ったのにそんなことも出来ないのか」


そう言う者がいるかもしれないと思って予め全ての運転手に降ろしたらすぐに車を出す様にと言っておいたから当然だ


「…専属運転手が今日はどうしても外せない用があって休むと言ったのだ。今月が奥さんの命日だとは知っていたからな。暇をやった」


少年は俺に向き直ると下を見て小さく呟く様に言った


「このホテルの運転手は見直した方が良い。危なっかしくて眠れなかったのだぞ」

「専属の運転手さんのことを信頼していらっしゃるんですね」

「誰があんな狸髭爺」


専属運転手が言う外せない用というのは奥さんの命日のためではなく裏工作だけど優しいところがあるんだな

しかも可愛いところもあるじゃないか


「だから明日専属運転手に迎えに来る様に言う」


俺の感想返せ!


「昼食は1人分余分に用意しておけ。このぐねぐねの長い山道をすぐに往復するのは危険過ぎるのでな。必要だと言えば休める様に部屋もどこか用意しておけ。当然だが宿泊も想定しておくのだぞ」


訂正

言い方はあれだけど、やっぱ優しいわ

ここだけ見れば少し我儘でぶっきらぼうだけど優しいって感じだけど…

なにか問題があるんだろうなぁ

それに今の俺の感想だって少しは話さないと分からないことだし


「かしこまりました。招待状をお見せいただけますでしょうか」

「ああ、これか」


胸ポケットから適当な動作で取り出す

それはひらひらと舞い、ぎりぎりフロントテーブルへ着地した


「イエロー様ですね。お部屋は東棟の…」


イエローが文句を言うためか息を吸ったのを無視して進めようとする

そのとき自動ドアが開いた

現れたその少女は小柄で可愛らしい顔立ちをしている

弱い風に少し揺られる黒いロングヘアは美しい

ジーンズにTシャツと薄い羽織ものという普通の出で立ちが妙に良く似合う、普通にどこにでもいそうな少女だ

それなのに、何故か目を引いた


「俺様の名前は城野歩だ。二度とその奇妙な名前で呼んでくれるな」


俺は小さく笑って鍵をフロントテーブルに置く


「お部屋は東棟の514号室です。右側のエレベーターで5階へ上がっていただいて、廊下を左へ行っていただくとございます」


俺から見て左にあるエレベーターを掌で指す


「ふんっ、用意しておけよ」


しねぇよ

だってお前は今晩―――


「お願いします」


イエローは鍵を持ってエレベーターを待っている

今俺の前にいるのはさっき入って来た少女だ


「ウサギ様ですね。お部屋は西棟の309号室です」


鍵をフロントテーブルに置いて右を掌で指す


「エレベーターで3階へ上がっていただいて、廊下を右へ行っていただくとございます」

「ありがとうございます」


鍵を手にして歩き出すがエレベーターの前に着く前に振り返る

なびく髪が綺麗だ


「私に―――」

「すみません、聞こえなかったのでもう一度お聞かせ願えますか」

「いいえ、大丈夫です」


エレベーターの前に立って上へ行くボタンを押すとすぐに扉が開く

こちらを一度も見ずに乗って行ってしまった


「…なんだったんだろう」


考えても分からないことを考えても仕方がない

一先ず、役者は揃った

ウサギがどう出るか、それが肝にもなる

だが「あいつら」の人選はきっと正しい

ゲームは必ず動き出す

1日目夜の指名失敗ペナルティとして開示する情報をどれにするか

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