表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

謎の少女と俺のなくした記憶

作者: 優優

初めて小説をまともに書きました。

いろいろあるかと思いますが、アドバイス等どんどんください!!

 「今年の夏は例年に比べて気温が高く、湿度も高くなりますので熱中症に注意しましょう。」

テレビからそんなアナウンサーの声が聞こえる。そう、今はもう七月も終盤。夏本番になり気温も三十度を超えていた。そんな中で俺は学校がない夏休みを利用し京都へ帰省していた。


「卓也!いつまで寝ているの。もうすぐ京都へ着くよ!」


「もうそんなに時間がたっていたのか・・・」


 新幹線に乗ってからそれほど経っていないと思っていたがもうすでに三時間も寝ていたようだ。やっぱり日本の新幹線は戒出来だな。そんなことを考えているとホームに立つ一人の少女と目があった。彼女はこちらを気にする様子もなく何やら人を探しているようだった。


「はぁ~ やっと着いた。」


母方の実家へ着くと祖母と祖父が迎えてくれた。その後ろには嫌々玄関に来たであろう従妹の静が隠れるようにして俺をにらんでいた。そう、俺は静に嫌われているのだ。あれは二年前の夏、俺が彼女と近くの山でかくれんぼをしていた時だった。俺は彼女を探していたがなかなか密あらず先に帰ったのだと思い、家に帰ったのだが、彼女はその後もずっと隠れていたようで・・・とまぁそんなことがあった。


「ねぇ卓也、静の宿題に付き合ってやってくれんか?」

「いやいや、さすがに俺が行くのはあいつも嫌がるだろ」

「そうなのだが、私たちではできなくてね・・・」

「まあ一応内容だけでも聞いてみるか。」


そういって祖母に静の宿題に付き合うように言われた。


「なあ静。まだあの事怒っているのか?」

「当たり前じゃん。あの時どれだけ怖かったか。」

「なあもう許してくれないか?宿題手伝ってやるからさ。」


この時の俺は、この後後悔することになるとは思いもしなかったのだ。

 翌日、静に宿題の内容を聞きに行こうと彼女の部屋に行くと彼女はどこかに出かける様子だった。


「どこか行くのか?」

「うん。宿題の調べ物とか現地に行って聞いたりしないとね!」

「ふ~ん。がんばれよ!」

「えっ?何言っているの?卓也も行くんだよ。」

「もしかして俺が言った手伝う宿題ってそれか?」

「うん。宿題の内容は外国人に向けた京都観光マップを作ることだよ。」

これはとてもめんどくさそうだ・・・

 


そのまま静に連れられてまず向かったのは金閣寺(鹿苑寺)だった。俺と静はまず普通に鑑賞してみることにした。その間も静は一生懸命にメモを取っていた。その後静と別れて、

「確か、足利義満が建てたっていうのは学校で習ったような気がするけどそれ以外はあまり知らないな。」

そんなことを言いながら金閣寺の境内を散策していると、京都についたときにホームで見た少女がまた誰かを探すようにしてあたりを見回していた。あれ?駅では見つからなかったのかな。


「ねえ君。もしかして誰かを探しているの?」

気づかぬうちに少女に話しかけていた。


「ええと、まぁそんな感じです。」

「大丈夫? 手伝おっか?」

「いえ・・・。一人で十分ですから。」


少女が何かを隠そうとしているのは表情で明らかだったが、これ以上聞く必要はないと思い彼女に突然話しかけたことを謝り、その場を後にした。

 そうこうしているうちに近くの外国人観光客にインタビューしていた静が帰ってきたので金閣寺を出て次の目的地へ向かった。

 次に向かうのは銀閣寺(慈照寺)だ。銀閣寺は足利義政が建てた寺で金閣寺よりは和風な感じで趣深い感じだ。金閣寺と同じような流れで俺と静は二人で銀閣寺を鑑賞した後、静と別れ一人で境内を散策していた。


「はあ~ 面倒だな。まさか宿題の手伝いが京都の観光名所を一緒に回ることだもんな・・・。」

「ん?何か言った?」


声のした方を見ると静が立っていた。


「いや、何も言ってないな。それよりもうインタビューはいいのか?」

「うん。もう大体聞き終わったし。そうだ、お昼ご飯にしよう!」

 そうして俺と静の二人は持ってきた弁当を食べるために鴨川の川岸にやってきた。

「そういえば、ここもある意味観光スポットだよな・・・」

「え?なんで?」

「だってそうだろ?日中に来れば毎日カップルが川岸に座っているし外国にはあまり川岸に座るっていう文化がないからな。」

(まあ俺には一緒に座ってくれる彼女はいないんだけどな・・・)

「まあそうだけど。っていうかカップル?じゃあ私たちはそう見えているかな・・・」


なぜか静の顔が赤くなっていた。


「どうした、顔が赤いけど大丈夫か?」

「えっ?あぁ大丈夫だよ?」


そう答えた彼女の顔は少し怒っているようにも見えた。

(もしかして俺がカップルとか言ったから怒ってるのかな?)


「ねえ、もしかして怒ってる?」

「いいえ、怒ってませんよ。ただ・・・」


何やらぼそぼそ言っていたが気にしないことにした。


「とにかく昼ご飯にしよう。」


そういって俺と静は二人で作ってきた弁当を食べながらいろいろと話し始めた。その中で一応駅のホームと金閣寺であった少女のことも話してみた。なぜかまた彼女に会いそうな気がしていてもしまた会ったのならどうすればいいのかを静に相談してみた。


「でさ、静はどう思う?」

「う~ん、まぁその時考えたらいいんじゃない?もしかしたら次ぎ会う時にはその探していた人に会っているかもしれないし。」

「そうだね。」


そういって彼女のことは考えないようにした。


「そろそろ次のところ行こうか。」

「そうだな。あまり遅くなると怒られちゃうからな。」


そういって俺たちは次の目的地に向かった。

 次の目的地である平等院がある宇治市についたころにはもう日は傾き始めていた。


「急がないと平等院がしまっちゃうね。」

「あぁそうだな。それじゃ少し急ぎ目に行きますか。」


そういって俺たちは急ぎ目に平等院へ向かった。何とか最終の案内に間に合い金閣寺や銀閣寺と同様に鑑賞し静がインタビューを終えるとすでにあたりは暗くなっていた。


「家に帰ろうか。」

「うん!」


帰りの電車は帰宅ラッシュに時間と重なってしまい混雑していた。


「静、あんまり俺から離れるなよ。降りる人の波に飲み込まれるぞ?」

「えっ?あっうん!じゃあ手つないでてもいい?」

「ん?あぁ別にいいけど?」

「ありがとう」


なぜかこの時の静の顔は今まで見たことないような笑顔だった。

(一体何がそんなにうれしいんだろうな?)

そんな事を卓也が考えているとき静は卓也と手をつなぎながら顔を真っ赤に染め上げていた。

(はぁ~なんで卓也は自然にしていられるの? やっぱり気づいてないよね・・・) 

その日は特に何もなく一日が終わろうとしていたのだが・・・


「ねぇねぇ卓也、今日静となんかあった?」


何か面白いものを見るよう顔で母が俺に聞いてきた。


「え?いや特に変わったことはなかったと思うけど?」

「そうかい。まあそれならいいんだけどね。」

やっぱり母の考えてることは、いまいち理解できないな・・・

 自室でのんびりしていると静が部屋にやってきた。

「ねぇ卓也。」

「ん?どうした?」

「明日も一緒に行って欲しいところがあるんだけどいいかな?」

「あぁ明日はちょっといけないかな。ごめんね。」

「えっ。」


俺が行けないことを告げると静はとても悲しそうな顔をしたので、

「明後日ならいけるよ?明後日でも大丈夫?」

そう言うと静は笑顔で

「うん!」

と答えて部屋へ戻っていった。

 翌日、俺は地元の友達と久々に再会し、楽しい一日を過ごした。ただ、地元の友達に静と仲直りしたことを言うと、

「おぉ~やっとか!これから楽しみだな。」

「え?何が?」

「何がってお前そりゃあれだろ・・・」

友達は最後になんて言ったかは結局教えてくれなかった。

「なんなんだろう。あいつも静も言いたいことがあるならはっきり言ったらいいのに。」

 その翌日俺は静と約束通りに静と京都観光マップを作りに出かけた。今日の予定では確か、清水寺と嵐山に行くって言ってたな。意外と京都生まれだけど行ったことないんだよなぁ。電車の窓から外を見ながらそんな事を考えているとすぐに目的地に着いた。両方とも二日前と同じように俺と二人で鑑賞した後静がインタビューしている間に近くを散策して軽く食べれる団子を買い早めに家に帰った。

 帰りの電車で俺は不思議な感覚に襲われた。それはこの静との京都散策は初めてのはずなのに全く同じルートで誰かと観光したことがあるような気がしていた。まあ気のせいかな・・・。


その日の夜、俺は不思議な夢というか自分の過去を見た。


夢の中での俺は幼稚園児らしく誰かと向き合っていた。

「ねぇ将来私と結婚して!」

確かに俺と向かい合っている誰かはそう言った・・・


 目が覚めるともう朝の八時を回っていた。なぜか見ていた夢が思い出せない。まあよくあることか・・・


 「今日はみんなで地元の祭りに行こうと思っているけど予定大丈夫?」

「やったー祭りだ!祭りだ!楽しみだね卓也!」

「あぁそうだな。」


そうして俺たち一家は祭りへ向かうとこになった。

祭りといっても所詮は田舎。そんなに豪勢なものではないがなかなか楽しめるものだった。その祭りで俺はまた会った。彼女に。


「また会ったね卓也。」


 そういって俺に笑いかけてくるのは金閣寺であったあの少女だった。

「ねえ君は一体誰なの?何で俺の名を?」

「やっぱり覚えてないか・・・」

「どういうこと?なんで俺が行く場所に毎回いるの?」

「それは今は秘密。君が思い出してくれたら教えてあげる。」

そういって彼女は一瞬で人ごみの中に紛れ込み消えてていった。

「一体何だったんだろう・・・」

俺自身全く理解が追い付いていなかった。まず俺は彼女を知らない。それに俺の行くところを知っていることが不思議でしたかがなかった。ただ、わかることは彼女は誰かを探していたのではなく俺を追いかけてきていたということだけだ。

「何が何だか全くわからん。」

そう呟いて俺は静達のもとへ戻った。

「ねえどこ行ってたの?」

「ごめん、ちょっと知り合いに会ったから。」

「そっか。まあいいや、金魚すくいしない?」

「やろうか。」

こうして俺たちは最後の花火が終わるまで祭りを楽しんだ。

 家に帰ると今日起こったことを整理してみた

今日起こったこと

例の彼女に会った

彼女の目的は俺だった

その彼女と俺は何らかの関係があるようだ


「はぁ。考えたって全くわからん。」

一人でずっと考えているとまた寝れば何らかの夢でも見れるかも!ということで俺は意識を手放した。


 夢の中で俺は自分の過去を見ていた。

「君は誰なんだ?」

俺が話しかけている相手にはなぜか白い靄がかかっているようだった。

「やっぱり覚えてないよね・・・」

「じゃあもう教えてくれてもいいんじゃないか?」

「それはできない・・・」

「なんで?」

「卓也がそう決めたんだよ」

「どういうこと?」


 相手が何かを言っているが聞き取れないまま俺は目が覚めた。


「一体何なんだよ・・・」


自分でもいろいろ整理してみたが全く思い出せない。昔の俺のアルバムを見てみるか。そうして俺は昔、小学校に通っていたころの写真を見始めた。

「いた。あの少女だ。」

俺は一枚の写真を手に取った。その写真には俺とあの少女が手をつないでいる様子が写っていた。

俺はとりあえず母に聞いてみることにした。

「母さん、この子だれ?」

「あぁ懐かしいねぇ。この子は確か卓也と同じ小学校にいた・・・」

母も名前は思い出せないようだった。

「ねえ小学校の卒業アルバムってある?」

「ええっと・・・多分押し入れにあると思うよ。」

俺はとりあえず押し入れからそれを取り出した。

「なんだこれ?」

俺が見ているとひとりの少女のページになった。なぜか彼女の名前だけ白く見えなくなっていた。何かがおかしい。

「なんでこの子は名前がわからないんだ・・・」


もう何が何だかさっぱりわからない。これ以上考えてもわからなさそうなのでとりあえず考えるのは後にして静と宿題の続きにをするため東寺へと向かった。


 東寺で必要なことを済ませ静がインタビューをしている間俺はあの少女を探してみることにした。歩き回っていると・・・


「また会ったね?」


振り向くと少女が立っていた。

「名前。思い出せないでしょ?」

「あぁ思い出せない。何を見ても俺は君の名前を思い出せない。」

「じゃあヒントをあげる。」

「ヒント?」

「うん。私の名前を思い出せるかもよ?」

「じゃあ教えてくれ。」

「ヒントはね・・・」

俺は渡された紙を見た。そこにはこう書かれていた。


 {この旅の終点に行ったらわかるよ}


「どういうことだ?」

「そのまんまだよ。この旅をしていけばきっと思い出せるはずだよ。」

そういって少女はどこかに消えた。

「卓也~帰ろう?」

いつの間にか静が戻ってきていた。

「あぁそうだな・・・」

「ねえ何かあったの?」

「あぁ実はな・・・」

俺は今日あったこと、そして今までで分かったことを静に説明した。

「なるほどねえ・・・」

「まああまり気にしない方がいいんじゃない?」

「そうだな。」

俺はあまり気にしない方がいいと思い、家に帰った。


 東寺に行った日から一週間、俺は静と様々なところへ行ったり地元の友達と遊んだりと夏休みを満喫していた。少女のことなど考える間のないほどに・・・

「ねえ卓也、明日が最後のところだよ。」

「おっそうか。やっと宿題終わりそうだな。」

「うん!そうだね。なんか寂しいかも・・・」

「あぁそうだな意外と二人で回るのも楽しかったな。」

こうして俺たち二人の短い{旅}は終点へと向かった。

 静と最後の目的地である伏見稲荷大社へと向かった。そういえば昔来たことがあったな。

「なあ静、ちょっと今日は別行動でもいいか?」

「えっ?あぁあの紙のこと?」

「まあ一応な・・・」

実を言うと結構気にしていた。なぜかはわからないがここに来れば少女の名前がわかるような気がしていた。

「じゃあ一時間後に駅のところで待ち合わせでいいね!」

そういって俺は一人歩き始めた。少し経つと俺は自然と見覚えのある社の前にいた。


「やっぱり来てくれたんだ。」


社の裏から少女が顔を出した。なぜだろう、見たことある光景だ。

「今不思議に思ってること当ててあげようか?」

「いや俺から聞くよ」


「「僕は君にここで会ったことあるよね」」


俺と少女の声が重なった。え?なんで?なんだろうこの感覚。

「やっぱりね。いや~思った通りだ。」

さっぱりわからない。けど少女と話すのがとても懐かしい感じがする。

「私はね、君と同じ小学校に通って君と友達になって、将来を誓い合ったんだよ? 此処で。」

え?なんて言った?将来を誓い合った?どういうことか全くわからない。

「やっぱり覚えてないって顔してるね。」

「あぁ何もかもがわからない。」

「じゃあ一から説明してあげるよ。」

こうして彼女は語り始めた・・・


「私の名前は西城彩夏。一応君と同い年になっているね。私と卓也は同じ小学校に通ってた。卓也はいつも男の子にいじめられてる私を助けてくれて、いつも私と遊んでくれた。私はそんな強くて優しい卓也のことが好きだった。でも中学校にあがる時、卓也が引っ越して私はまたいじめられた・・・」


 俺は話を聞いているときすべてを思い出かけた・・・


 俺は小学校いたころいつも一人の少女を見ていた。いつもいじめられて逃げていて、ずっと独りぼっちだった。そんな少女を俺は放っておけなかった。少女を助けてずっと一緒にいてやるって言ったとき少女は泣いていた。そのまま毎日遊んでそのあと・・・


「だめだ。そのあとが思い出せない。」


 俺を急に激しい頭痛が襲った。


少しして痛みが引くと俺はすべてを思い出した。

「思い出してくれたんだ。」

「あぁすべて思い出した。俺はあの後何も言わずに引っ越して新聞で彩夏が自殺したって。しかもいじめが原因で。それで俺はずっと俺を攻め続けた。俺が何も言わずに引っ越して彩夏を一人にしたからだって、俺が守ってやれなかったからって・・・」

そうだ、俺はずっと一人で後悔していたんだ・・・


「彩夏、なんで俺の前にいるんだ。生きていたのか?」

「そんなわけないでしょ。」

「じゃあ一体・・・」

「それはね私が自殺してから卓也はずっと人を助けるのも人とかかわることもしなくなったからだよ・・・」

「それは・・・」

俺は彩夏が死んだっていう現実を受け止められなかった。いや、おれは自分のせいで彩夏が死んだっていう現実から逃げていたんだ。

「でもね私は卓也のせいで死んだんじゃないよ。」

「でも彩夏はいじめが原因だって・・・」

「それはそうなんだけどね私は卓也のせいだなんて思ってないよ。それに卓也は私を救ってくれてずっと一緒だって言ってくれて」

「でも俺はその約束を守れなかった・・・」

「でも私は卓也がずっと心の中で一緒だって思ってたよ?」

「それはそうだけども・・・」

「ああっもう卓也!自分を責めるのは卓也らしくないよ!」

「でもそれが現実だ!俺は彩夏を救えなかった。なにも言わずに勝手に引っ越して彩夏を一人にして・・・」

「はあ~私がこんなんになっても卓也の前にいる理由がわからないの?」

「それは俺を恨んでるから?」

「ばっかじゃないの!私はね卓也がそんなんになっているのが悔しくてもとの卓也に戻ってほしいからここにいるの。」

「いい?私は私を救ってくれた優しくて強い卓也が好きだったの!でも私が死んでから卓也は全部ひとりで悩んで自分のせいだって、ずっと自分を責めつづけて・・・。だから私はここに残ってるの。卓也が私にずっと一緒にいてやるって言ってくれたこの場所で。」


俺は彩夏の言葉を聞いてずっと泣いていた。


「もう俺は戻っていいのか?」

「ええもちろんよ。そうじゃないと私、成仏できないからね。」

「ごめんなあの時何も言わず勝手に引っ越して。」

「もういいのよ。それに、あなたは笑ってる方がかっこいいんだから泣かないの!」

俺は今まで思い出さないようにしていたんだ。この時まで何も思い出せなかった俺が情けなかった。

「ごめんな思い出すまで時間かかって。」

「いいのよ。最後に思い出してくれたんなら。」

「何か俺にできることはないか?」

「あるよ。それも言わないとね。」

彩夏は俺にあることを教えてくれた。

「それで俺はどうしろと?」

「それは卓也が決めることじゃあない?」

「でもそれで彩夏はいいのか?」

「ええ。今の卓也にならできるでしょう?」

「まあな。」


すると不意に彩夏の体が光りだした。


「時間みたいだね。最後に卓也が元に戻ってくれてよかった。」

「俺は彩夏に言わなければならないことがある。」

「ん?何?」


「好きだよ彩夏。」


これは俺に素直な気持ちだった。今まで俺はこんなに自分のことを見ていてくれて、俺のことを思ってくれる人に出会うことはなかった。そんな彩夏が俺は好きだった。


「私も好きだよ卓也。」


そういった彩夏の頬には涙が流れていた。

「じゃあ最後に言ったことがんばってね?」

「あぁ任せろ。」

そういうと彩夏の体が消え始めた。

「楽しかったよ。ありがとう。」

「あぁ俺も楽しかった。もう二度と忘れない。」

「それじゃあね。」

彩夏が消えた。俺は泣いた。今までずっと我慢していた。でももう我慢しなくていいんだ。そう思えると自然に涙が出てきた。


「これからもずっと一緒だよ」


そう聞こえたような気がした。


ずっと泣いていたが体が泣くことをやめたとき気が付くと静との約束の時間になっていた。

「行くか。また来るよ。」

俺は彩夏に言うようにつぶやいて駅へと向かった。


 駅に着くともうすでに静が待っていた。

「遅いよ~卓也。何してたの?」

「ごめん。俺の大切な人に会って伝えたいことを伝えてきた。」

「そっか。じゃあ帰ろっか。」

こうして俺と静は家に帰った。


 家でアルバムを見てみるとちゃんと{西城彩夏}と書かれていた。そしてそのページには一言{私を守ってくれた人はとても強くて優しくて・・・でも私が支えないと彼はきっと・・・}と書かれていた。押し入れになそうとして俺は一通の手紙に気が付いた。差出人は西城彩夏となっている。その手紙は封が開いていなかった。俺は部屋に戻り手紙を読んでみることにした。手紙にはこう書かれていた。


{さっき最後って言ったけどやっぱり最後じゃなかった笑笑。でもこれはずっと残るものだから。卓也のそばに。あと、伝えたいことがあります。それはね最後の約束あるでしょ?あれを果たすとき私のことは忘れてもいいからね?卓也は忘れないって言いそうだけど私は彼女の邪魔はしたくないからさ。まあ気が向いたらあの社に来てくれるだけでいいからね。じゃあね。 西城彩夏}


(はあ。どうしたものか。完全に思ってること筒抜けだな・・・)

 それから五年後・・・


「行くぞ静!」

「はいはい、待って~卓也。」

俺は京都に戻った。理由は静と一緒にいるため。これは彩夏との約束?というかお願いだから。彩夏との最後、彩夏は俺にこう言った。


「静ちゃんがね、卓也のこと好きみたいなんだ。だからさできれば一緒にいてあげて?」


なんで彩夏がそんな事言ったのかはわからない。けれどもきっと彩夏がそういったのだから意味があるのだろう・・・

彩夏が消えた翌日、静に彩夏のことを全部説明した。静は全部聞いてくれて俺のことを慰めてくれた。そして静は俺のことを理解してくれて・・・と気が付けば俺と静は恋仲になっていた。


俺は毎年あの社に通っている。そして毎年彩夏に感謝と報告している。面白い事や楽しかったことなんかを・・・



彩夏と会ったあの日から七年後、俺と静は結婚した


よければ今後も作品を少しづつ書いていく予定なのでそちらもよろしくお願します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ