表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

中規模ですか?

「え?リベレッタさん、魔技(スキル)を使えないんですか!」


 リベレッタの告白に、何故か驚きよりも喜びを強く見せるペトラ。


「潜入の話とか、さっきの凄いパンチからてっきり偵察者(スカウト)みたいな物理系の職業(クラス)なのかと思ってました!」


(物理系…パンチが物理という事は、この世界で対になるのは魔法系でしょうか)


 しかし リベレッタが魔法系だとして、何故それでペトラが喜ぶのか。


 その答えは、すぐにペトラの口から語られた。



「じゃあ、リベレッタさんが使える一番強い魔法を見せてもらえませんか!?」



 なるほど、魔技(スキル)が駄目なら魔法…当然の流れだ。


(ペトラが喜んでいたのは『魔法を見れるかもしれないから』ですか…)


 ただ魔法が好きだから見たいのか、それとも何かの参考にするためか…


 どちらにせよ、今度は魔法を見せなければならない様だ。


(ここでまた断って、もしペトラに悪い印象を与えてしまったら 今後の情報収集が円滑に行えなくなるかもしれません…)


(それに、あまり力を隠し過ぎても足手まといと判断されて行動範囲に大きな制限をかけられる可能性もあります)


 まず何よりも情報が最優先…そう考えたリベレッタは、もう少しペトラに自分の力を披露する事にした。


(そうだ、またマナの事を聞かれるでしょうし攻撃と同時に説明しましょう)


 パンチを見ただけで あの固まり様だ。


 恐らく攻撃のインパクトで誤魔化せる…リベレッタはそう考えた。


「分かりました。では私から少し離れて、適当な木にしがみついていてください」


「はいっ!」


 ペトラは元気よく返事をすると小走りでリベレッタから離れていく。


 15m程離れた木の裏に隠れると、ヒョコっと頭を出して手を振った。


「はぁ…ですが、まぁ良い機会でしょう」


 少々気は重いものの、見方を変えれば これは武装の試運転だ。


 スペック情報でデータを知り、エラーチェックで異常がない事は確認している。


 しかし、実際に動かしてみなければ万全の状態であるとは断言できない。


(もし、いざという時に想定通りの挙動をしなかったら困りますしね)


 リベレッタはペトラと反対方向にある森を見つめた。


(…目標周囲に木や草以外の生命反応は無さそうですね)


 センサーで感知できない存在が居る可能性も考え、一応 警告をしておく。


「では、今からそこの森に中規模の攻撃を行います!」


「はーい!…中規模ですかー?!」


 リベレッタの警告に合わせたのか、ペトラも大きめの声で返事をした。


「流石に一番強力な攻撃は危険なので、今回は中規模のモノをお見せします!」


(最大火力だと範囲が広過ぎて、環境破壊もいいところですしね。それに…)


 リベレッタは自身の動力が収まっている胸部に目をやった。


(私に搭載されている重力(グラビティ)エンジンは、汎用の物ではなく庵藤(あんどう)博士が強化改修した試作品…恐らくこれが、私がこの世界に来る事になった原因でしょう)


 マニュアルにも『安全出力は70%まで、以降レッドゾーン』と記されている。


 兵器に搭載される一般的な重力(グラビティ)エンジンは大体90%までが安全出力だ。


(スペックから計算すると、約40%の出力でペトラの中級魔法(ミッドマジック)をやや上回る程度の威力になるはず…)


 あらかじめ『中規模』と宣言しているので、ペトラの力を僅かでも上回る火力を見せれば、危険を冒してまで無理に大規模を披露しなくても良いだろう。


 リベレッタは重力(グラビティ)エンジンの出力を上げ、身体に6基あるうちの2基…左右の手に搭載されているリアクターにエネルギーを集中させた。


「…動力伝達異常なし…発熱、振動、ノイズ…オールクリア」


 両手のひらを前に伸ばし、攻撃点に照準を定める。


 すると、そこに向かって ゆっくりと風が吹き始めた。


「…もう始まってる、のかな? でも魔法詩(スペル)も聞こえないし、マナも全然―」


(…では、いきますか)


 リベレッタがペトラの様子に合わせ、すかさず説明を重ねる。


「言い忘れていましたが、私が行う攻撃は魔法ではなく…」


「えっ?」




―ヴォン…





 瞬間、周囲の色が一点に集まる様に抜ける感覚。


 そして、その点には いつの間にか大きな薄黒い球体ができていた。


「魔法ではなく、生まれ持った特技の様なモノです」


 色だけでなく、音も飲み込まれていたのかと思う程リベレッタの声がよく響く。


 あまりにも静かで、一瞬 時間が止まっているかの様な錯覚に陥るペトラ。


 しかし、リベレッタが開いていた両手を握るとその静寂は一変する。


「…収縮」


 薄黒い球体から色や音、風が一気に吹き出して戻って来る。


 ただ、球体の中の景色はどんどん小さく歪み そして消えていった。


「…対象の消失を確認、内部環境を調整…完了。隔離解除」


 リベレッタが手を下ろすと、中が真っ黒になった球体がゆっくりと消えていく。


 そして、そこにあったはずの森も同じ様にぽっかりと消えてしまっていた。





 その大きさ、直径約30m





「…え?あ…え?」


 一瞬で消え去った森と地面を前に、ペトラは上手く言葉が出てこない様だ。


 それも当然だろう何故なら…





(スペックと全然違うじゃないですか!?)





リベレッタもまた、想定を遥かに超えた火力に驚愕していたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ