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さすがは天才科学者ですね

 どうやら あの悲鳴から落ち着き、さらに声をかけるという決断ができる程度には時間が経過していたようだ


(倍速処理したとはいえ、映像確認に時間を取られましたか…)


 無視するわけにもいかないので、ペトラの方を向き正座に座り直す。


「はい、何か御用でしょうか」


「わ!やっぱり生きてます…よね!?」


 ペトラは珍しいものでも見るかのようにリベレッタを眺めた。


「全然動かないし、まばたきもしないから不安だったんですよ? 『マナ』だって ちっとも感じなかったし…」


「マナ?」


 通常の会話では聞かない言葉の流れに思わず聞き返してしまう。


「あれ?マナを知らないんですか…?」


「んー…変わった格好だし、どこかの民族の人なのかな? それで、マナの呼び方が違う…とか?」


 ペトラは、リベレッタの容姿から異国の人間の可能性を考えていた。


(…そういえば博士が『場所、時間、次元、空間…いずれかは不明だが、遠い所』に私は居るはず、と言っていましたね)


(私を人間と判断し、日本語での会話が可能…そして、少女の着衣…ネットワークやGPS等の反応が皆無である事を踏まえると、ここは…)




―異世界




 と、判断するのが妥当だろう。


 リベレッタの感情モジュールが再び揺らぐ。


(博士は『なるべく対応できるように準備はした』と、言ってはいましたが…)


 自身のスペック情報から、海中や真空といった物理的な環境への適応性が高い事は理解できた。


 しかし ここが異世界となれば、常識はおろか元の世界の法則すら通じるかどうか怪しくなる。


(…これは、ライブラリの常識や法則を乱雑に書き換えた斬新な対処マニュアルでも作るべきでしょうか)


 リベレッタは、ネットワークの無い今の状況で唯一の頼りとなるライブラリ内のデータを検索してみた。



『異世界かな?と思ったら』『異世界チートの使い方』『異世界シミュレーター』『異世界あるある』『本当は怖い異世界』『タイプ別異世界診断』etc...



(フフッ…さすがは『天才科学者』ですね、博士)


 不思議な高揚感を感じながら、リベレッタは素直にそう思った。


「私は、ずっと遠い所から来ましたので…その『マナ』とはどういったモノの事を指しているのでしょうか?」


 違和感を与えないよう会話に答えながら、並行して情報の詳細を確認していく。


(…真偽不明な物もありますが、やはり殆どが創作ですね)


(しかし、現状ではフィクションの方が状況対応の参考になりそうです)


「あ、はい!えっと…マナっていうのは、生き物や自然が持つ力の素の事ですよ」


「生きている人や動物、植物なんかが持っているのを命のマナ(ライズマナ)


「泉や川…あと、鉱石なんかが持っているのを澄のマナ(クリアマナ)と私達は呼んでます」


 人当たりの良い性格なのか、説明を終えたペトラは柔らかな表情を見せる。


(動植物の方は魂や感情、生命力の具現…といったところでしょうか)


(泉や鉱石は、パワースポットやパワーストーンの概念が近いようですね)


 ペトラの話を参考に、ライブラリ内にある近い概念を当て嵌める。


(大気も重力も かなり地球に近いですが、マナの有無…これだけで一体どの程度の差異が生じるのでしょうね)


 そう考えるリベレッタだが、感情モジュールに不安感は無かった。


「でも本っっっっ当に驚きました!生きてるのに全くマナを感じない人なんて私、初めて見ましたから!」


 どうやら、人工物であるリベレッタにはマナが無いらしい。


(さて、何と説明しましょうか…『異世界からの来訪者が珍しくない』という創作も幾つかありましたが…)


 まだ この世界がそうだとは断言できない。


 植物や自然にすらマナがあるなら、人種を理由にするのも難しいだろう。


 会話テンポを崩さないギリギリの時間まで演算を重ね、リベレッタは一つの答えを導き出した。




「まぁ、鍛えてますので」




この対応は、失敗のケースとしてデータベースに記録されたのだった。

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