卒業。そして旅立ち
続きをどぞー!!
今日はついにシャングリラ学院の卒業式。多くの生徒が人生の階段を1段登りきる日だ。
俺たちも椅子に座り、壇上に立っている学院長の話に耳を傾ける。
「今日皆さんはこの学院を卒業するという1つの試練を乗り越えました!しかし、すぐにまた新たな試練が皆さんの前に立ち塞がるでしょう。ですが私は皆さんが再びのその試練という名の壁を乗り越えてくれると私は信じています。それでは皆さん、改めて卒業おめでとうございます」
こうして俺たちは学院を卒業した。
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数日後、俺たち3人は旅の準備を進めていた。
「アーサー君、これに入れられるだけ食料を入れた方がいいですよ」
「なんですか?これ」
学院長に渡されたのは少し口の大きい袋だった。
「これは私の作った魔道具です。中は異次元になっていてどんなものでも保管できます」
「え!?なんでそんな貴重なものを・・・」
「ロット君がいるといくらあっても足りなくなりますよ」
「・・・・・・ありがたくいただきます」
旅に出るにあたって食費という不安要素が増えてしまった。
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「セリア、ロット君。これは僕から2人への贈り物だ」
ノアさんはセリアに鍔の部分がエメラルドグリーンに輝く美しい細剣、ロットに赤く輝く刀身に黒い柄を備えた剣を渡した。
「お父様、これは?」
「・・・それは昔ローゼが・・・母さんが使っていたものだ」
「お母様の使っていた!?」
「それはお前が持っていきなさい。その方がローゼも喜ぶさ」
「・・・わかりました。ありがとうございます」
セリアがそっと涙を流して喜んでいる横でロットは難しい顔をしていた。
「それで?なぜ俺にもあるんだ?」
「それは『ブレイズストーン』という特別な鉱石を使っていてね。昔ウェインさんが研究していたものだよ」
「・・・父さんが?」
「ウェインさんのおかげで『ブレイズストーン』の効力や加工の方法が確立されたんだ。ぜひ君に使って欲しい」
「・・・わかった。受け取っておく」
表情を変えずに剣を受け取るロットだが、どこか嬉しそうだ。
・・・それにしても、2人とも羨ましい。
「アーサー」
突然呼ばれて振り向くと母さんと父さんが後ろにいた。
「『2人とも羨ましい』とか思っているのか?」
「アーサーはまだまだ子供ね」
「うっ・・・」
2人にはお見通しか。
「ふふっ。そうだろうと思ったわ。安心しなさい、ちゃんと準備してるから」
「受け取れアーサー」
そう言って父さんは黒い鞘に入った黒い柄の剣を俺に差し出した。
俺はそれを受け取り、鞘から剣をそっと抜いてみる。すると、美しく輝く銀色の刀身が姿を現した。
「・・・綺麗だ」
剣を見て自然と言葉が出た。それほど美しいと感じた。よく見ると鍔の中央に透明な宝石のようなものが埋め込まれている。
「それは『精霊剣』といってな。精霊の力を溜め込むことができる特殊な石を埋め込んだものだ。アーサー、お前がサラさんの力を使う度に剣がボロボロになっていただろ?その剣ならそんなことも無くなるはずだ」
「『精霊剣』・・・。サラ、いけそうか?」
「・・・うん!この剣なら大丈夫だと思うよ」
サラが言うなら大丈夫だろう。
「それは父さんと母さんからの卒業祝いだ。その剣が俺たちの代わりにお前の力になってくれるはずだ」
「アーサー、2人とも。お願いだから無茶はしないでね」
「わかってるよ。きっと無事に帰ってくるからさ」
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こうして俺たちは着々と準備を進めていった。
そして・・・ついにその日が来た。
俺たちの見送りに馬車の前にはたくさんの人が集まっていた。
「父さん、母さん、兄さん、それにメルトも見送りに来てくれてありがとう」
「アーサー。父さん達からはもう何も言うまい。お前の旅路の成功を祈っている」
「うん、ありがとう父さん」
父さんと話しつつふと兄さんを見てみる。いつもなら泣きながら飛びついてくるのだが・・・
「あれ?兄さん今日は普通だね」
「弟の晴れの舞台だからな。いつものなさけない兄さんでいるわけにはいかないよ」
「ふーん・・・。で、本音は?」
「俺もアーサーについて行きたい!!!!」
「やっぱり・・・」
兄さんは今日も平常運転のようだ。
すがりついてくる兄さんをなだめつつ、セリアの様子を見る。どうやらノアさんと話しているようだ。
「お父様、行ってきますね」
「うん、体に気をつけるんだよ」
「はい。・・・・・・」
セリアは少しどうしようかと悩んでいる様子だった。
「・・・セリア、今の僕は王ではなくただ1人の父親だよ」
「・・・!お父様!」
セリアは目に涙を浮かべてノアさんに思いっきり抱きついた。
「ごめんね、ローゼが亡くなってからわがままも言えず辛い思いをさせただろう?」
「そんなことないですお父様!お母様が亡くなって1番辛かったのはお父様だったのに、いつも私を気にかけてくれました!私、お父様のことが大好きです!」
「セリア・・・。僕はいつもセリアの無事を祈っているよ。何かあったらいつでも帰ってきなさい」
「はい!」
その時のセリアは心の底からの笑顔を浮かべていた。
その後、色んな人との話し、出発の時間になった。
「おーい、そろそろ出るみてーだぞー」
ロットが馬車から顔を出して呼んでいる。
みんなとの別れを惜しみながら馬車に乗り込む。すると・・・
「アーサー様」
「メルト?」
メルトが出発直前に俺を引き止める。
「どうしたんだ?」
俺は窓から顔を出してメルトと話す。
「アーサー様、私・・・・・・・・・いえ、なんでもありません」
「何かあったのか?」
「いえ、大丈夫です。それよりあの腕輪は忘れておりませんか?」
「もちろん、今でも肌身離さずつけているよ」
メルトに見えるように腕輪をつけた腕を差し出す。
「大切にしていただいてるのであれば私も嬉しいです。前にも言いましたが、その腕輪はきっとあなたの事を守ってくれます。これからも肌身離さずつけていてください」
「ああ、もちろんだよ」
「ふふっ。・・・それではアーサー様、いってらっしゃいませ」
「行ってきます」
そうして馬車は出発した。俺とセリアは窓から顔を出してみんなに手を振った。
だんだんとみんなが離れていく。最後の別れではないとわかっていても大切な人達と別れるのは辛い。気がつけば既にみんなの姿が見えなくなり、シャングリラの外に出ていた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
俺は気持ちが落ち込み、何を話せばいいかわからなかった。セリアも同じなのか、黙り込んでいる。
「・・・・・・あああ!!ったく!!何黙ってんだよお前ら!」
「そ、そうだよ!せっかくの旅立ちの日なのに」
「2人とも・・・」
「特にアーサー!これはお前の旅だろうが!夢が叶ってるのにいつまでも沈んでんじゃねぇ!」
ロットに叱咤されて俺は気持ちを入れ替える。
「ロット・・・・・・そうだよな、俺が落ち込んでたらダメだよな」
ロットのおかげで目が覚めた。そうだ、これは俺の夢の旅だ。いつまでもくよくよしていられない。
「ふふっ、ロットは相変わらずね」
セリアもそう思ったのか笑みを浮かべる。
「これから色んなところに行くものね。楽しんでいかなきゃ損よね!」
「そうだな、セリアの言う通りだ!ロットもありがとな」
「ふんっ・・・最初からそうしろ。(・・・お前らが落ち込んでたら楽しくならねーだろうが)」
「何か言ったか?」
「な、なんでもねぇ!!」
そう言ってそっぽ向いてしまった。何かまずい事でも言ったのだろうか?
「それで?まずは東に行くのよね?」
「ああ、東でいいんだよな?サラ」
「うん、ここから東にある港町ウォルカ。そこに水の大精霊がいるはずだよ!」
こうして俺たちの旅は幕を開けた。
・・・そう、ここからが俺の物語の本当の始まりだったのだ。
はい!とりあえずシャングリラ編はここまでです!次から新章に突入しますが、私的にはここからが本編と言っても過言ではありませんので楽しみにしていただけると幸いです。よろしければコメントなどを貰えるとありがたいです!誤字脱字でもなんでもいいのでよろしくお願いします!




