祭りへの準備
寒い寒い寒い!!
悪魔ヴィネアの襲撃から早3年。俺たちは15歳になり、学院を卒業する日が近づいていた。ちなみにあの時の大会の結果は満場一致で俺が優勝だろうということになり、後日表彰された。あの襲撃以降、ノアさんはシャングリラ中の優秀な魔法使いを集め、国中に強力な結界を張り巡らせた。俺達も参加し、完成した結界はサラが言うには復活したばかりの悪魔は入れないだろうとのことだ。そのサラも今は大事な用があるからと、この場にいない。
「せい!!ハァ!!」
「くっ!やぁ!!」
で、今俺はなんとシャングリラ城の庭でセリアと剣の打ち合いをしていた。
「そこまで!!」
それを止めたのは父さんだった。
「はぁー、疲れた!アーサーは強いわねー」
「そっちこそ・・・突きの速さが上がってるんじゃないか?」
「そうかしら?でもアーサーはもう少し防御を意識したら?捨て身に近い動きよ?」
「セリアこそ少し受けすぎなんじゃないか?攻撃しないと細剣だと長く続かないと思うぞ」
地面に座り込み、お互いの気になったことを指摘していく。
「アーサー様、セリア様、お水をお持ちしました」
そこにメルトが水を持ってきてくれた。
「ありがとうメルト、助かったよ」
「ぷは!生き返る〜!」
「このくらいお易い御用ですよ」
水はキンキンに冷えていて、熱くなった体に染み渡る。
「うん、2人とも強くなったね。お互いの気になったところも指摘できているし、これなら俺も安心・・・とまではいかないけど送り出すことができるよ」
「やった!」
「アスト様ありがとうございます」
元騎士団長の父さんが言うんだ。俺達も成長したんだろう。
「おーい!!」
そこに遠くから走ってきたのはデカい猪の魔物のビッグボアだった。
ロットはポイッと地面にビッグボアを投げる。
「倒してきたぞ!これでいいのか?」
「ああ、バッチリだよ。3人とも合格だ」
ロットがビッグボアを倒してきたのは父さんが出した課題だ。この3年間俺は元から父さんと母さんに鍛えてもらっていたが、セリアとロットはあの襲撃の後に強くなりたいと父さんたちに頼み、弟子入りをした。それから2人の訓練を3年間受け続け、最後の試練として父さんが俺たちに課題を出したのだ。1人でビッグボアを倒してくるという課題を。当然俺もセリアもクリアをしている。
「3人ともよく頑張ったな。師匠として嬉しく思うよ。な?リース」
「ええ、そうね」
振り返るとそこには母さんが白いローブに身を包んで現れた。
「3人とも離れたところから見てたけど、何も言うことはないわね。本当にお疲れ様」
「さて。俺たちが教えるのはここまでだ。何とか1週間後の豊穣祭に間に合ったな」
豊穣祭とは年に1度に豊作を祝うお祭りのことだ。いつもならそこまで大騒ぎになるほどのイベントではないのだが、今年はなんと建国500周年も兼ねているため、例年よりもさらに賑わうことになるようだ。
「建国記念日と重なるなんて滅多にないわよ〜?アーサーは誰とまわるのかしら?」
「あ、そういえば決めてなかったな」
父さんたちとの修行ですっかり忘れていた。
「んー・・・・・・あ、そういえばセリアはどうするんだ?」
「私?私はこういうお祭りには行ったことないんだよね・・・」
「え?そうなのか?確かに普段の豊穣祭の時にも見かけたりしなかったけど」
「これでも一応この国の姫だからね。城下に行ったら大騒ぎになるし、誰かに狙われる可能性もあるのよ」
「なるほど・・・ん?じゃあ学院では護衛がいないのはなんでだ?」
冷静に考えてみれば一国の姫であるセリアに護衛の1人もいないのはおかしい。
「それはあなたがいるからよ」
「え?」
「あなたがいるから護衛の必要はないってお父様が言ってたわ」
「ノアさん・・・」
つまりいつの間にか俺はセリアの護衛役にされていたようだ。
「とにかく。私は簡単に城下には行けないのよ」
「んー、それなら俺と行く?」
「え?・・・・・・いいの?」
「俺は構わないぞ」
「で、でもこの姿じゃ国民に直ぐにバレちゃうし・・・」
「行ってきたらどうだい?」
セリアの言葉を遮ったのはノアさんだった。
「お父様!けど・・・」
「こんなこともあるかと思って前々からキールにこれを頼んでたんだ。かなり時間がかかったけどね」
「ノアさん、それは?」
ノアさんは懐から小さく輝くピアスを取りだした。
「これは魔道具の一種でね。付けた人の体の一部を他人に違ったように見せるものなんだ。『ミラージュ』の魔法を元にしているんだよ。セリア、これをつけて魔力を流してみてごらん」
セリアがノアさんから渡されたピアスを耳につけた。すると、セリアの髪色が金色から茶色に変化していき、エルフ特有の尖った耳は丸みを帯びていき、頭には人狼族の証でもある犬耳が現れた。
「す、すごい!まるで別人だよ!」
「えっと、今私の見た目どうなってるの?」
「こちらをどうぞ」
そこにメルトがスっと鏡を差し出す。
いや準備よすぎだろ。
「わあ!すごい!でもなんで人狼族の見た目なの?」
「それはもちろん、アーサー君との兄妹という設定で行ってもらうからだよ」
「き、兄妹!?」
なるほど、それなら自然に祭りを回れるな。
「もちろんアーサー君の分も用意してあるよ。その髪色だと目立つからね。それに元からアーサー君にセリアのこと頼む予定だったんだよ」
そう言ってピアスを手渡される。
「そういうことだったんですね。・・・これ横の耳ですよね?」
「ああ、もちろんだよ」
そう、俺たち人狼族は耳が四つある。どちらの耳でも聞こえるのだが、一体どういう構造なのだろう?
そんな疑問を抱きつつピアスを付ける。
「どうです?」
「うん、問題ないね。しっぽまではできなかったから後で用意しておくよ」
「ありがとうお父様」
「そういえばロットはどうするんだ?」
ロットは俺たちが話している間に魔法で作った氷に火をつけて溶かさないようにするとかいう修行をしていた。
「俺か?俺は━━━」
「あ、ロット君は私たちとの先約があるから。ねーあなた?」
「え?あ、ああ。そうだな」
「んあ?俺そんな約束してな━━━」
「してたわよね?ロット君?(あの子たちが2人っきりでいられるチャンスなのよ!邪魔しちゃダメ!)」
「お、おう」
なんか今とてつもない圧力を感じたような・・・
「そういうことだ。2人で楽しんできなさい」
「わかった」
「アーサー、迷惑かけちゃうかもしれないけどよろしくね」
「ああ、任せとけ」
ということで1週間後の豊穣祭をセリアと一緒に回ることになった。学院卒業前の最後のイベントだ。全力で楽しむとしよう。
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