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精霊と共に  作者: キリくん
シャングリラ学院 ━大会編━
30/37

━外伝━ アーサーとサラ

今回はアーサーとサラの昔話となっています。サラのちょっとした一面を書いた話です。是非ご覧ください!

これは6年前。アーサーがセリアを助けてから少しした後の話。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「よし!準備はいいか?アーサー?」

「ほ、本当にやるの?」


俺は今父さんに連れられてシャングリラ近くの山の麓に来ていた。ここに来た理由は簡単だ。体力作り。そのためにわざわざここまで来たのだ。


「お前には護身用に最低限の剣術は教えてたが、あんなことがあったからな。そろそろ本格的に剣術を教えるべきだろう。じゃないとまた無茶するだろ?」

「う・・・」


ひ、否定できない・・・。


「というわけで、まずは基本となる体力作りだ!とはいえお前は普段からトレーニングしているからな。普通の体力作りじゃ物足りないだろう?」

「それで山登り・・・ということですか」


けどこの山この辺りで一番高い山だと思うんだけど・・・。最初に1番きつい所ってどういうことだよ・・・。


「そういう事だ。それじゃあ出発!」

「こうなったらもうヤケだ!」


こうして俺の過酷な登山が始まった。



山を登り始めて数時間後・・・


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・い、今どの辺?」

「んー、そうだな・・・。半分くらいか?」

「は、半分・・・」


いや、普通の6歳児は登山なんて無理だろうから半分登れただけでもすごいと思うけど。


「父さんが子供の時もな、父親に同じことを━━━━」


これは長くなるやつだな・・・。ちょっとこっそり休もう。

近くの岩に腰を下ろす。


「大丈夫かしら?アーサー」

「え?あ、うん。ちょっと疲れただけだよ」

「そう」

「・・・・・・」


始祖の精霊サラ。アークライトの伝説で語られる精霊の一人。そんな存在が俺に力を貸してくれている。何故なのかはわからないが、心強い味方なのは確かだ。けど、どう接すればいいのか正直わからない。何か話そうにも会話が続かないし、少し距離を感じる。何か仲良くなれるきっかけがあればいいんだけどな。


「父さん、そろそろ━━━━っ!!」

「━━だから・・・ってアーサー!?」

「━━!」


今、何かの鳴き声が聞こえた!弱々しい鳴き声が!



「あれは!」


そこには崖側で動けなくなっているクロジカ(全身真っ黒のシカのような動物。温厚でアークライトの様々なところにいる)の子供だった。崖は今にも崩れそうだ。不注意に近づいたのだろうか、親のクロジカは助けようにもどうすればいいのか分からないのか、狼狽えている。


「助けないと!」


とはいえ、俺の重さが加われば崖が崩れるかもしれない・・・。行けるギリギリのところまで近づこう。


「さあ、大丈夫。怖くないよ。こっちにおいで」

「キュー・・・」


手を伸ばすが、怖くて動けないのか、警戒しているのかはわからないが、その場から動こうとしない。


「大丈夫だよ。君を助けたいだけなんだ。ほら、お母さんの所に帰ろう?」

「・・・キュー!」


警戒を解いてくれたのか、ゆっくりとこちらに歩き出す。


「いいぞ、いい子だ。そのままゆっくり」

「キュー・・・」


あと少し・・・あと3歩・・・2歩・・・1歩・・・!


「キュー!」

「よし、偉いぞ!!」


何とか無事にこちらに来てくれた。が、その時━━━


ガコッ!


「・・・え?」


その嫌な音が聞こえた時には遅かった。


「アーサー!!!」

「と、父さん!!この子を!!うわぁぁあああ!!!!」


とっさに俺はクロジカの子を父さんに受け渡した。


「お、おいバカ!!アーサーーーー!!!」


俺の足元は崩れ、崖下に真っ逆さまに落ちていく。


「うわぁぁあ!!!どうしようどうしよう!!」

「アーサー!私に捕まって!!」

「サラ!!」


絶対絶命のところにサラが手を差し伸べる。俺は無我夢中でその手につかまった。


「くうぅー・・・!!!」


サラのおかげで何とか空中に留まった。


「はあ、はあ、た、助かったよ」

「・・・!!だ、だめ・・・もう・・・支えられない!」

「え?わぁぁぁぁ!!!!」


サラが力尽きてしまい、再び俺は落下を始める。


「どうするどうする!!何かいい手は・・・そうだ!!風の精霊よ、優しき風で我を包み、支えよ『ウインドクッション』!」


少し前に母さんが教えてくれた風魔法。俺の周りから風が出現すると、俺たちを支えるように体に纏われ、落下速度が落ちていく。


「ふう・・・。これなら何とか降りれそうだな」


そのままゆっくりと崖下の森に降りることにした。だが、木の上まで降りると・・・


「・・・うっ!ま、まずい・・・魔力が・・・」


体が魔力切れ特有の倦怠感に襲われた。それと同時に体をおおっていた風が消えてしまう。


「くっ・・・!こうなったら!」


気絶したサラを抱えながら俺は残った魔力で風を起こし、空中で回転して木の方向に背を向けた。


次の瞬間、背中に衝撃が走った。木の枝にぶつかりながら下に落ちていき、最後に地面にぶつかった衝撃で俺の意識は途切れた。


━━━━━━━━━━━━━━━



「━━サー!」


誰かが俺を呼んでいる。その声で俺は目を覚ました。


「いってて・・・俺、どうなったんだ?」

「アーサー!良かった、目を覚ましたんだね!」


俺の横には心配そうな顔をしているサラの姿があった。


「うん、体は痛いけど問題は・・・サラ、その喋り方・・・」

「え?・・・・・・・・・あ!い、いや、その・・・・・・な、なんでもないわ。本当に無事でよかったわ」

「う、うん」


うん、このことは後で聞くとしよう。それより今は・・・


「これからどうしようか・・・」

「そうね・・・」


ここは山の周りにある森のはずだ。登る前に軽く見たが、かなり広大な森だった。俺とサラだけだと出られないかもしれない。


「とりあえず少し辺りを確認しよ・・・うっ!」


歩こうと思い、立とうとしたその瞬間、足に鈍い痛みが走った。その痛みに思わずしりもちをつく。


「アーサー!どうしたの!?」

「あ、足が・・・」


足の状態を見ようと靴を脱いでみると、足が青紫色に腫れていた。


「足が腫れてるじゃない!もしかして落ちた時に・・・・・・!」

「うん・・・困ったな・・・これじゃあ満足に歩けないよ」


歩けないわけではないが、長距離を歩くのは無理だろう。しかもこの森の広さだ、歩いて出るのは無理だろう。


「・・・となると父さんの助けを待つしかないか」

「そうね。とりあえずどこか休める場所を探しましょう。魔物に襲われたら大変だわ」


とりあえず休める場所を探すためにゆっくりと歩き出した。



━━━━━━━━━━━━━━━



ズキズキと痛む足を引きずりながらしばらく歩くと、崖下に洞窟を見つけた。


「ここなら休めるかもな。サラ、奥がどうなってるか見てきてくれるか?」

「わかったわ」


それから少ししてサラが戻ってきた。


「大丈夫だったわ。すぐに行き止まりだったし、魔物もいないわ」

「ありがとうサラ」


その時、耳に水が落ちてきた。


「ひゃっ!」

「え?」

「・・・・・・・・・・・・」


・・・普段出ない声が出てしまった。


「えっと・・・今のアーサーの声?」

「・・・・・・・・・そうだよ」

「・・・・・・・・・ぷっ、あはははははは!!!!あ、アーサー・・・そんな声出せるんだね・・・あははは!!!」


なんとサラがお腹を抱えて笑いだした。しかもさっきの口調で。


「サラ・・・お前・・・」

「あっはははは・・・・・・あ・・・えーっと」

「・・・とりあえず雨も降ってきそうだし、中で話そう」


━━━━━━━━━━━━━━━



「つまりそっちが素なのか?」

「うん・・・」

「なんで今まで素で話さなかったんだ?」

「えーっと・・・やっぱり始祖の精霊としての風格は出したほうがいいかなって・・・」

「・・・なるほどね」

「・・・・・・・(それに喋るのは久しぶりだし)」

「何か言ったか?」

「う、ううん」


とりあえず、サラのことが少しだけわかったな。それより・・・


「だいぶ降ってきたな・・・」

「そうだね・・・」


この様子だと今日は動けないな。雨で鼻も聞かないし、父さん達も見つけられないかもしれない


「今日はここで野宿だな」

「そうだね、念の為に枯れ枝を集めて正解だったね」


雨が本格的に降る前にサラに枝を集めてもらったのが良かった。これなら何とか一晩は過ごせる。


「ところで足は大丈夫?」

「ああ、冷やしたら楽になったよ」


腫れた足は破って水で濡らした服の一部を巻いている。これで少しはマシになるだろう。



しばらくして気温が下がってきた。


「冷えてきたし、そろそろ火を起こすか。いっ・・・」

「ダメだよアーサー!火ぐらい私がつけるから!」

「あ、ああ。ありがとう」


そう言ってサラは木に火をつけた。火はパチパチと音をたてて燃えている。


「・・・・・・暖かい」

「・・・・・・そうだね」


・・・父さんや母さんに会えないのはやっぱり寂しくなるな。昔も━━前世でも似たようなことがあったな。確か・・・父さんも母さんも仕事で遅くなってあいつと━━━妹と留守番していたんだったかな。今みたいに大雨が降っていて雷までなって俺に飛びついてきたんだよな。


ゴロゴロ!!!!


「きゃあ!!!」


そうそうこんな感じに・・・・・・って・・・え?


雷と共にサラが俺に抱きついてきた。


「さ、サラ?」

「・・・・・・ごめん・・・でも少しだけ・・・このままでいさせて・・・」

「あ、ああ」


目をつぶって俺の腕にぎゅっとしがみついている。なんというか・・・流石にこの距離はドキドキしてしまう。

しばらくこの体勢だったが、雷の音が小さくなっていくと、サラも落ち着きを取り戻していった。


「・・・・・・本当にごめんね。私・・・雷が苦手で・・・」

「う、うん。大丈夫。それにしても驚いたよ。サラって雷苦手なんだ」

「うん・・・ずっと昔からダメでね。前までは泣いたりしてたんだ」

「そうだったんだ」

「でも、これからは大丈夫!だってアーサーがそばにいるからね」

「ははっ、雷のたびに俺に抱きつくのか?」

「アーサーがいいなら思いっきり抱きつかせてもらおうかなー?」

「そうだな・・・まあほどほどに・・・な?」

「やったー!!」


こうして素のサラを見てると年下の女の子にしか見えないな。妹を思い出しそうになる。


「さて、そろそろ寝るか。体力を回復させないとな」

「そうだね。・・・・・・ねぇ、アーサー。ひとつ聞いてもいい?」

「ん?なんだ?」


先ほどとは打って変わって真剣な顔だ。


「あなたは・・・どんな手段を使っても自分の助けたいと思った人を助ける?その結果、他の誰かを傷つける方法だったとしても」


その質問に俺は少し驚いた。何故その事をサラが聞くのかはわからないが、俺の答えは決まっている。


「・・・ああ、俺は困ってる人、助けを必要としている人がいるなら助ける。どんな方法だろうとな」


俺の言葉にサラは少し考えてから頷くと元の笑顔に戻った。


「・・・うん、わかった。ありがとう、答えてくれて。さ、もう寝ようか!おやすみー」


そう言ってサラは寝てしまった。


「なんだったんだ?・・・・・・まあいいか、寝よう」


今日はなかなかハードな1日だった。山に登って崖から落ちて・・・。でもサラとの距離が縮まったのはいいことかもしれないな。明日になったらここから脱出しないとな。・・・案外すぐに父さんたちが来たりして。さすがにないか。さっさと寝よう。

俺は火のそばで横になり、そのまま眠りについた。


翌朝、2人が洞窟を出てすぐに父さんが捜索隊を率いて保護しに来たのは流石としか言いようがなかった。



━━サラ━━


「(聞いてた通り・・・前世のことをずっと引きずっている。前世の事件がきっかけでアーサーは少し変わってしまった。・・・でも私はそれを正すためにいる。アーサーを助けてみせる!)」

良ければ感想などをよろしくお願いします!次回は新章に入ります!

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