魔物の群勢
すみません!遅くなりました!
ヴィネアに向かって走る俺は地面に魔法を放った。
「『フレイムブラスト!』」
炎の爆発であたりに煙が舞う。煙に紛れて相手が見失ったところを後ろから攻撃しようとしたが・・・
「いい作戦だけど・・・まだまだ甘いねぇ」
「なっ!?」
槍の柄で容易く止められてしまった。
「確かにあの方が危惧するほどの能力があるのはわかるけどねぇ。まだまだ経験が足りないねぇ坊や」
「くっ・・・」
・・・強い、今のでわかった。力は向こうが上だ。今の俺で勝てるかどうか・・・
「アーサー!しっかりして!」
「・・・サラ?」
「あいつは強いよ。正直勝てる見込みはほとんどないかもしれない!けど、あなたがここで諦めたらセレナは誰が助けるの!」
・・・そうだ。今ここで俺が諦めたらどの道終わりだ。セレナを助けることも出来ない!
「ごめんサラ。弱気になってたよな俺」
「いいんだよ。私も全力で力を貸すから」
「話は終わったかい?次はあたしから行くよ!!」
速い!キャス先輩やセリアと同レベルかそれ以上・・・!
「受けられない・・・!」
咄嗟に右へ飛び込み回避しようとしたが、あまりの速さに避けきれず、左の脇腹あたりから血が飛び出る。
「つっ・・・」
「アーサー!」
「・・・大丈夫だ」
「あっはははは!!どうしたのかねぇ?まだまだ始まったばかりだよ!」
「『フレイムブラスト!』」
ヴィネアに目掛けて魔法を放つが、あっさりと避けられてしまった。
「アハハ!遅い遅い!」
ヴィネアは同じように目にも止まらぬ速さで俺を翻弄してくる。
「アハハハハハ!!!!」
「ぐっ・・・がっ、あぐっ!」
俺は反撃も出来ないまま、俺の体は血だらけになっていた。
「はぁ・・・はぁ・・・がハッ・・・」
「アーサー!しっかりして!」
「ふむ。ここまで一方的だと逆に面白みがないねぇ。そんなにこの娘に攻撃したくないのかい?優しいねぇ」
「うる・・・さい・・・」
「まあいいさ。もう少し楽しみたかったんだけどねぇ。そろそろ終わらせるとするかねぇ」
まずい・・・このままじゃやられる・・・
「アハハ!さようなら、アーサー・フェンリル!」
「くっ!」
槍が俺を貫こうと迫ってくる。俺は思わず目を閉じた。
「やめてぇぇ!!!!」
サラの悲鳴が辺りに響き渡ったその時・・・!
キン!
貫かれた感覚がいつまでも来ない。俺は恐る恐る目を開けた。
「たく、何やってんだよ」
「ロット・・・!」
俺の前には槍を受け止めるロットが立っていた。
「お前は優しすぎるんだよ。それでお前がやられたら元も子もねぇぞ」
「わ、悪い・・・」
「アーサー!良かった・・・」
「サラ。心配させたな」
サラが俺に抱きついてくるが、傷だらけなので勘弁して欲しい。
「ちっ、竜もどきが!邪魔するんじゃないよ!」
「それはこっちのセリフだ!はぁっ!」
ロットはなんと無理やりヴィネアを弾き飛ばした。
「ま、それがお前のいい所なんだけどな。ほら、立てるか?」
ロットは俺に手を差し出してきた。俺はその手を掴み、立ち上がった。
「ほら、お前の剣だ」
「ありがとうロット」
「気にすんじゃねーよ。俺の方が助けられてるんだからな」
「随分と余裕じゃないかい!」
ロットに飛ばされたヴィネアが猛スピードでこちらへ向かってきた。
「・・・私を忘れてないかしら?」
「なっ・・・!ちぃっ!」
突然ヴィネアの上から風の矢が雨のごとく降り注いだ。たまらずヴィネアはその場から引く。
振り向くと大きな弓を抱えたセリアがそこにいた。
「セリア!」
「ちょっと待ってね。『アクアヒール』」
セリアの手から清らかな水が生み出され、俺の傷を包み込んでいく。数秒もすれば傷は綺麗に消えていた。
「おお、ありがとうセリア」
「いいのよ。でも気をつけてね。表面の傷を癒しただけで完治した訳では無いわ」
「ああ、それでも十分だよ。それよりその弓は?」
「ああ、これ?前にお父様に貰ったものよ。たまたま持ってきていたんだけど、まさか役に立つとはね」
「なるほどな」
「おい、話はそこまでだ。やつが来るぞ」
俺とロットは剣を、セリアは弓を構えてヴィネアの方を見る。
「まったく・・・竜もどきにエルフのお姫様。随分珍しい顔ぶれが並んでるもんだねぇ。数で勝ったつもりかい?そっちがその気ならこっちにも考えがあるよ!『ゲート!』」
『プリズンバリア』と同様に聞いたことの無い魔法の詠唱とともに俺たちの周りに黒い門のようなものが4つ出現した。
「何よこの魔法!見たことも聞いたこともないわ!」
「気をつけろ!何かが出てきやがる!」
黒い門の中から出てきたのは大量の魔物だった。
「ま、魔物!?しかもこんなに・・・!」
「一体どこから・・・?」
「アハハ!これは召喚魔法さ。魔物はあたしたち悪魔に従順でねぇ。さあ、お前たち!やっちまいな!」
ヴィネアの号令とともに魔物たちがいっせいに襲いかかってきた。
「セリア!ロット!互いの背中を守りながら倒すぞ!」
「「わかった!」」
とは言ったけど俺はまだ魔物と戦った経験が少ない。けど、2人がいてくれるんだ。俺が足を引っ張るわけにはいかない!
そう自分自身を鼓舞していると、目の前に一体の魔物が立ち塞がった。
「トロール・・・」
人型の巨大な魔物だ。知能は低いが、力と耐久力は魔物の中でもかなり高い。
トロールは俺を見てニヤリと笑うと手に持った棍棒を勢いよく振り下ろしてきた。
そこまで速くはない。バックステップで回避する。
地面に振り下ろされた棍棒は轟音とともに地面を砕いた。さっきまで立っていた場所はクレーターになっていた。
「なんて力だ・・・」
凄まじいパワーを見せつけられたが、今の攻撃で棍棒が地面に刺さったらしい。トロールは必死に抜こうとしている。
「チャンスだ!」
一気にトロールに近づき、剣を上段から振り下ろし、確実に入ったと思った。だが・・・
「なっ!?」
剣はトロールの皮膚に弾かれてしまった。
「馬鹿な・・・がはっ!!!」
弾かれて体勢を崩したところにトロールの丸太のような腕に振り払われてしまう。
「くっ・・・、おかしい、トロールの皮膚が硬いとはいえ刃が全く通らないなんてことは無いはずだ!」
「アーサー!あのトロール、魔力で強化されてる!」
そう言われてよく見てみると確かに魔力で体が覆われている。
「アハハ!!その通りさ!こいつらはみんなあたしの魔力で強化しているのさ。そこら辺の魔物とは格が違うよ」
「なるほど・・・そういうことか。それなら・・・サラ!」
「うん!わかった!」
「炎の精霊よ、我が剣に炎の力を!『フレイムソード!』」
剣に魔力を通し、炎を宿らせる。
「よし、これなら!」
再び剣を構えてトロールに向き直す。
トロールは俺に向かってその拳を振りかざそうとする。
「っと。はあっ!」
拳を横ステップで避け、懐に潜り込んでトロールの腹に剣を突き刺した。
剣は弾かれることなく突き刺さり、剣から燃え盛る炎がトロールの体を焼いた。
「よし!」
トロールが炎に焼かれ、悶え苦しみ始めた。
剣を引き抜き、一度離れてもう一度トロールに剣を構える。
「これで終わりだ!」
剣を振り下ろし、苦しむトロールの背中を切りつけるとトロールはその場に膝をつき、地面に倒れた。
「ふぅ・・・。何とか倒せたな。けど・・・」
周りには魔物がまだまだ蔓延っている。
「まだまだ終わりそうにないな。行くぞサラ!」
「うん!」
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数時間、アーサー達は戦い続けた。その結果3人は疲労が溜まり、ボロボロだったが、何とか魔物を全て倒すことが出来た。
「はぁ・・・はぁ・・・。みんな・・・大丈夫か?」
「何とか・・・ね・・・」
「まだ・・・大丈夫だ・・・」
「アーサーこそ大丈夫なの・・・?」
「ああ・・・。何とかな。それに・・・まだ残っているからな」
そう言い、ヴィネアを睨みつける。
「おや?終わったのかい?前半にしては時間がかかったねぇ」
その言葉に全員が驚き、目を見開いた。
「前半・・・だと・・・?」
「そうさ。これだけだと思ったかい?」
ヴィネアが指を鳴らすと、黒い門の中から再び魔物たちが流れ込んできた。
「うそ・・・」
「くそっ・・・!」
魔物の大群を見て全員が絶望した「勝てない・・・」と。
地面に座り込んだアーサーの前に獅子のような魔物が現れ、その鋭い爪を振りかざす。
その場から逃げようとするが、先の先頭で体が動かない。
(やられる・・・!)
爪がすぐそこまで迫り、おもわず目を閉じる。
「「やめてぇぇぇ!!!!」」
サラとセリアの悲鳴が響き渡ったその時━━
『『アイシクルスピア!!』』
どこからか聞こえた詠唱と共に氷の槍が氷柱の如く魔物たちに降り注いだ。
それと同時に空から彗星の如き光がアーサーと魔物の間に落ち、煙が舞いあがる。
「な、なんだ?」
舞い上がった煙少しずつ晴れてくると、そこには見慣れた人物が立っていた。
「すまないアーサー。遅くなった」
「と、父さん!?」
それは白銀の鎧に身を包んだアーサーの父━━━
アスト・フェンリルだった。
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