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精霊と共に  作者: キリくん
シャングリラ学院 ━大会編━
21/37

俊足の足

遅れてすみません!

1週間後。今日は特に何もなく、普通の日だった。


「うーん!終わったー!」

「疲れたわねー」

「ふぁぁああ・・・」


ロットが眠たそうにあくびをしている。


「いよいよ明日か」

「そうね。今夜はしっかり寝て大会に備えましょう」


そう。いよいよ明日に大会が始まるのだ。


「サラにはまた休んでて貰うけど・・・すまないな」

「いいのいいの。存分に楽しんで!」

「あ!私用事があるから先に帰るわね。また明日」

「おう、また明日」


セリアはそう言うと走っていた。


「ロット、俺は明日のトーナメント表見てくるけどどうする?」

「ん・・・。俺先に戻って寝る」

「わかった。おやすみ」


ロットとも別れ、俺は明日のトーナメント表を確認に行った。



トーナメント表の貼っている廊下はやけに静かだった。まだ生徒は残っているはずなのに誰もいない。不思議に思いつつトーナメント表の元へ向かうと一人、誰かが先に見ていた。


「・・・セレナ?」

「・・・・・・・・・あ、アーサー君?」


そこに居たのはセレナだった。逆光のせいで顔が見えにくい。


「何してたんだ?」

「うん、ちょっとね・・・」


セレナがちらっと表を見る。気になって俺もトーナメント表を見た。特に何かおかしいところは無いと思っていると一人の名前に目がいった。そこにはセレナの名前が記されていた。


「あれ?セレナも出るのか?」

「う、うん。やっぱり出てみようかなーって」

「そっか。それじゃあもし当たったら手加減しないからな!」

「うん。その時はよろしくね」


思いがけないことに驚いたが、一つ楽しみが増えてわくわくしていた。


「フフッ・・・。それじゃあ私帰るね」


セレナが俺の横を通り過ぎようとしたその時


「楽しみにしてるわね」


背筋に悪寒が走った。動けない、呼吸が安定しない。まるで蛇に睨まれた蛙になったようだった。


セレナがいなくなって全身の力が抜けて座り込んでしまった。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」

「アーサー!大丈夫?」

「はぁ、はぁ・・・だ、大丈夫。ありがとう」

「今のは・・・本当にセレナだったのかな?」

「分からない・・・。ただあの声を聞いた時心臓が握りつぶされるような感覚になって・・・」

「・・・セレナから何か嫌な気配を感じたよ。嫌な予感がするよ」


同感だ。何か悪いことが起きるような気がする。とにかく、気をつけなければ。


「どうする?ロット達に相談する?」

「いや、2人とも明日の大会を楽しみにしてる。余計な心配は掛けたくない。この大会が終わってから相談しよう」


不安な事が出来てしまったが、今は大会に備えて休むとしよう。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


大会当日。雲一つない快晴だった。大会は午前の部と午後の部に分かれて行われる。人数は16人。武器、魔法。なんでもありだ。優勝商品は毎年ランダムらしい。去年はセリアがピアス型の魔道具をもらったそうだ。


「らっしゃいらっしゃい!今日は一年に一度の大会だよー!特別に安くするよー!」


闘技場の周りにはお祭りのように屋台がずらりと並んでいる。


「すごい人だな。目が回りそうだ」

「ロットは相変わらず人混みに慣れないわね」

「俺はほとんど山奥で暮らしてたから人が多いのは苦手なんだよ」

「へぇ。山奥に竜は住んでるのか?」

「ん・・・まぁな。この話はまた今度な」

「?わかった」


少しはぐらかされたが、あまり言えないのかもしれない。詮索はしないでおこう。


「そろそろ中に行かないと開会式が始まるわ」

「よし、それじゃあ行くか」




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「さあ始まりました!!シャングリラ学院バトル大会開幕です!!」


━━うぉぉぉおおおおお!!!!!


司会の宣言とともに観客たちが一斉に叫びだした。


「司会は私、鳥族のミルが担当させていただきます!それでは選手たちの入場です!皆様、東門にご注目ください!」


その合図とともに待機していた俺たちは観客たちの前に姿を見せる。

こうしていざこの場場に立つと緊張感がすごい。


「選手たちが揃ったところで学院長からのお言葉をいただきましょう!」


全員が一斉に学院長の座る席に視線を向ける。


「皆さん、よくぞ集まってくれました!今年も無事にこの大会を開催できたことを嬉しく思います。今年も熱い闘志を持った者が沢山いますね。中には昨年のリベンジと言う者も言う者もいるでしょう。ですが!そんな方たちも昨年と同じと思わないように!油断すると足元をすくわれますからね!さぁ!あまり長々と話すのも良くないでしょう。シャングリラバトル大会開幕です!!」


━━うぉぉぉおおおおお!!!!!


学院長の話で闘技場の熱気がさらにヒートアップした。流石学院長。

その後俺たちは控え室に戻り待機することになった。


「やっぱり盛り上がってるわね」

「これだけ賑わっていると気合いが入るってもんだ」

「そういえば第1試合って誰だっ━」

『それでは第1試合!アーサー選手とキャス選手です!』

「・・・俺だった」


完全に忘れていた。そういえばそうだったな。


「それじゃ、頑張ってね!」

「負けんなよ」

「うん。行ってくる」


2人に見送られて入口に向かった。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「両選手の準備が整ったようです!それでは入場してください!」


司会の言葉を合図に入場する。周りを見渡すと席いっぱいに観客が座っている。これだけの人に囲まれて戦うのは初めてだ。いつもとは違う緊張が走る。


「それでは選手の紹介をします!まずは東門から入場しているのが俊足の速さ!キャス選手です!」


俺の反対側の入口から入ってきたのは虎族の男だった。確かあの人は5年生の先輩だったはずだ。


「キャス選手はなんと!去年決勝戦にてセリア姫と激しいバトルを繰り広げた優勝候補の一人です!去年は惜しくもセリア姫に破れてしまい、優勝を逃してしまいましたが・・・。『今年は優勝してみせる!』と宣言していました!注目の一人です!」


なるほど、優勝候補の一人か。それは腕がなるな。


「続いて西門から入場するのはー?期待の新人!アーサー選手です!」


・・・俺の紹介も入るのか。恥ずかしい・・・。


「皆さん知っている方は知っているのではないでしょうか?アーサー選手はなんとあのフェンリル家のご子息となっています!フェンリル家と言えばアスト様とリース様のファンクラブの方もいるのではないでしょうか?もちろん!私もアスト様のファンの一人です!・・・おっと、話がそれてしまいました。話を戻しまして・・・アーサー選手はキール学院長曰く『僕が一番期待してる選手ですね』との事です!これは私も期待しちゃいます!」


学院長・・・。勝手に何を期待してるんだ。それに今聞かない方がいい内容が聞こえたぞ?父さんと母さんのファンクラブ?この国そんな物あるの?父さん達そんなに人気なの?・・・聞かなかったことにしよう。


「両選手の紹介も終わったところで、まもなく試合開始です!試合はどちらかが降参するか戦闘不能になった時点で終了です!」


さて、第1試合。気合い入れますか。

お互いに向き合って一礼をする。そして握手を交わす。するとキャス先輩が話しかけてきた。


「初めまして・・・だよな?」

「はい。初めまして、キャス先輩」

「ははは!そんなに畏まらなくていいんだぜ?俺そういうの苦手なんだ。普通に接してくれよ」

「いえ、そういう訳には・・・」


仮にも先輩だし、それを簡単に受け入れるわけにもいかない。


「うーむ、ダメか。・・・そうだ!この試合で俺が勝ったら普通に接してくれ!その代わり負けたらお前の下に付いてやるぜ!」


はい?・・・いや、下に付くって何言ってるんだこの人。


「い、いや。下には付かなくていいです・・・」

「む?そうか?でもそれだとお前に得がないんじゃないか?」

「俺はそれでも構いませんよ。それに━━」


俺は腰に携えた剣を抜き、構えた。


「━━負けるつもりはないので」


そこでキャス先輩はニヤリと笑う。


「言ってくれるじゃねぇか。気に入ったぜ」


キャス先輩も武器を構える。

あれは・・・爪?爪の付いた手甲か?近づかれたら危険だな。

ちなみにこの大会で使われる武器は学院長が作った特別製の武器だ。武器の打ち合いなどでは普通の武器と何ら変わりないが、相手に当たる瞬間刃が消えて傷つくことがなくなる優れものだ。硬いのは変わらないので当たれば痛いのは変わらない。流石学院長。魔道具製作の天才と言われるだけはある。


「両選手準備完了のようです!それでは参りましょう!3・・・2・・・1!試合開始!!!」

「行くぜぇぇぇ!!!」


試合開始と同時にキャス先輩は突っ込んできた。


「速い!けど・・・」


ただ真っ直ぐ来るだけなら避けやすい。これなら最小限の動きで避けられる。


「よっ・・・と」

「おわあぁぁ!」


ズドン!


先輩は勢い余って止まれなかったのか壁に激突していた。大丈夫だろうか・・・


「いてて・・・飛ばしすぎちまったぜ。お前、よく避けたな!」

「いえ、それほどでも。では次は俺の番ですね」


動きが少し鈍っている。それなら・・・


「『フレイムショット!』」


あの速さで動かれれば風系の魔法じゃないと捉えられない。だが今ならすぐには動けないはず。

炎の弾が先輩の眼前に迫ったその瞬間━━


「おっと」


その瞬間、先輩の姿が消えた。


「なっ!?どこに・・・ガハッ!」


先輩の姿を見つける前に脇腹に衝撃が走った。そしてそのまま壁に叩きつけられた。


「ケホッ・・・。今のは・・・」

「はっはっは!お返しだぜ!」


なるほど、わざわざ蹴りを入れたのはそういうことか。


「今、何をしたんですか?」

「今のか?ただ走っただけだ!」

「は、走っただけ?」


最初のやつより明らかにスピードが違ったぞ。本気じゃなかったってことか?


「まだまだこんなものじゃないぜー!よっ!」

「また・・・!」


また消えた。くそっ、全く見えない!


「俺を捕まえられるかな?行くぜ!」

「どこから・・・ぐっ!」


構えた剣に衝撃が走る。攻撃された瞬間も姿が見えない。


「まだまだぁ!!」

「ぐっ、あがっ・・・!」


このままじゃ一方的にやられるだけだ。どうすればいい?・・・・・・いや、こんな時こそ落ち着かないと。落ち着け、冷静に。もっとよく見るんだ。目に意識を集中するんだ。


「どうした!もう終わりか!」

「・・・・・・・・・・・・・・・そこだ!!!」


右斜め前に剣を振ると先輩の手甲の爪とぶつかり合う。


「驚いたぜ、まさか俺の姿を捉えられるなんてな」

「・・・目はいいほうなんで」

「セリア姫は見切ることまでは出来なかったんだけど・・・な!!」


その時先輩の左拳が俺の顎に向けて飛んできた。


「ちっ!」


間一髪のところで後ろに飛んで何とかかわす。


「『ウインドアロー!』」

「おっと」


ダメか。もう魔法は当たらない。手があるとすれば広範囲魔法を放つぐらいだが、サラがいないとそれは出来ない。だが見えないわけではないならなんとかなる。


「むー、あの速さが見えるのか。これはあんまり使いたくはないんだが・・・『ウインドブーツ』」


初めて聞く魔法名と同時に先輩の足に風が巻き起こり始める。一瞬にして風をまとったブーツが完成した。

感覚を確かめるためなのかその場で飛び跳ねている。


「よし、準備完了!覚悟はいいか?」

「・・・どんな魔法か分からないですけど、覚悟ならありますよ」

「へへっ、お前ならそう言うと思ったぜ!だから・・・楽しませてくれよ!」


その瞬間、また先輩の姿が消えた。本当に消えたのだ。さっきはまだなんとか見えたが、どれだけ集中しても何も見えないのだ。


「くっ、このままじゃまたジリ貧だ。・・・ぐっ、あがっ!」

「この速さでは流石のお前でも見えないだろう!さぁ、どうするんだ?」


くそっ・・・何かないのか・・・ん?


ヒュン・・・


「今なにか聞こえたような・・・うわっ!」

「そろそろ降参したらどうだ?」

「しない・・・ですよ・・・!」


さっき何か聞こえた!目で見えないなら音を聞くんだ。おそらくさっきの音は・・・。


ヒュン!ヒュン!


やっぱりそうだ!これは先輩が走り抜けた時に鳴る風切り音!それなら・・・!


「これで・・・トドメだぜー!!」

「いまだ!!はあっ!!」


近づいてくる風切り音の中心に向かって拳を叩き込んだ。


「ぐっ・・・ガハッ!」


先輩を捉えた拳はしっかりと腹の中心に叩き込まれていた。

ダッシュと拳の勢いに耐えられるはずもなく先輩はその場に倒れた。


「しょ、勝負ありー!!な、なんということでしょう!優勝候補のキャス選手をルーキーのアーサー選手が打ち破りましたー!!」


━━うぉぉぉおおおおお!!!!!


か、勝った・・・。キツかった・・・。


「・・・う、ん?あ!試合!試合はどうなった!?」


どうやら目を覚ましたようだ。キョロキョロしている先輩に手を差し出す。


「先輩、勝負あり!ですね」

「・・・なんだ、負けちまったのか。もっとやりたかったぜ」


残念そうな顔をしているが、同時に少し満足したような顔をしている。


「まさか1回戦で負けちまうなんてなー。お前との賭け・・・とは言えないかもしれないが、それも勝てなかったし」


本気で残念がってるな。・・・まぁいいか。


「そこまで言うならこれからは普通にさせてもらおうかな。これでいいか?先輩」


そう言うと先輩は心から嬉しそうに喜んでいた。


「おう!ありがとな!」

「・・・せっかくだから勝利した報酬をもらおうかな?」

「ん?なんだ?」

「さっきの魔法。俺にも教えてくれよ」

「おお、いいぜ!お易い御用だ!」


ガシッ、と握手を交わす。面白い先輩と出会えて楽しかったな。


「第1試合から白熱しましたが試合はまだまだ始まったばかりです!もっともっと盛り上がりましょー!!!」


━━うぉぉぉおおおおお!!!!!


そうだ。まだまだ大会は始まったばかり。優勝目指して突き進むぞ!!

足が速くなりたいー

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