アーサーVSロット①
さらば夏休み・・・
翌日。俺は寮で目を覚ました。起き上がるとロットは既に起きていた。
「おはよう」
「・・・おはよう」
いつものようにそっぽ向いたまま返事が帰ってきた。
だがロットは少し苦しい顔をしていた。
「・・・なあアーサー。俺はお前にとってなんだ?」
珍しくロットから話しかけてきた。
「どうしたんだよ急に」
「いいから答えろ」
「最初から言ってるだろ?『友達』だ」
「・・・・・・そうか。ありがとう」
「・・・!急になんだよ。お前らしくないな」
「うるさい。・・・じゃあな」
そのままロットは部屋を出ていった。
「・・・サラ、今夜はよろしく頼むよ」
「わかってるよ。絶対に止めよう」
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夜。耳鳴りがするぐらい静かだった。
ベッドで寝ているとロットがゆっくりと起きた。そして部屋の窓から音もなく飛び降りて行った。
「サラ、俺達も行くぞ」
「うん、行こう」
俺達もロットの後を追うために窓から飛び下りた。
ロットの匂いを頼りにあとを追いかけるとその方角はやはりバーキンス家の邸の方向だった。
「サラ、先回りする!ついてこれるな?」
「当たり前だよ!私を舐めないで!」
「よし!『ブースト!』」
身体強化の魔法を使いロットより先に邸に向かった。
━ロット━
「訳がわからない」それが最初の印象だった。小さい時に貴族に両親を殺されてから俺は貴族を嫌悪していた。貴族は自分勝手で私利私欲のためならなんでもする奴らだと知っていた。だからこそあいつの━━アーサーのことがよくわからなかった。初対面だっていうのに馴れ馴れしく話しかけてくるし、挙句の果てには友達になりたいという。
・・・だけどその時今まで感じたことがない気持ちになった。「友達になりたい」俺は多分それが嬉しかったんだと思う。胸の奥が熱くなるような感覚だった。でもアーサーは貴族。憎むべき相手。だからその時は突き放すような対応をして出ていった。こうすればもう俺に寄り付くことは無いだろうと、そう思っていた。だが違った。あいつは次の日も、また次の日も俺に話しかけてきた。正直馬鹿だろと思った。俺はあんなに突き放しているのに、どうしてそんなことができるんだ?と。
・・・・もし俺が普通に育ってたらあいつと友達になれる未来があったのだろうか。誰も恨まず、純粋に楽しむことができたのだろうか。けどもう遅い。俺は自分の目的を果たす。俺はこの国の貴族を全員殺す。手始めに全ての元凶。バーキンス家を始末する。俺の全てを狂わせた貴族。俺の苦しみを痛いほど味あわせてやる。なのに━━━━
━━━「なん・・・で・・・お前がここに・・・」
そこには何度も見たあいつが━━━アーサー・フェンリルが立っていた。
━━━「よ!ロット。止めに来たぞ」
━━アーサ━━
「よ!ロット。止めに来たぞ」
何とか先回りできた。俺がいることに驚いたのかロットは鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしている。
「なぜ・・・どうしてここにいる」
「お前が馬鹿なことをする前に止めるためだ。友達としてな」
「・・・またそれか」
「そういうわけで、もうやめようロット」
「つまりお前には俺のやろうとしといることが全部筒抜けってことか。・・・・ならお前も敵ってことだ。どうせ貴族は全員殺るつもりだったんだ。順番が変わっただけだ」
ロットが今にも飛び出しそうに構える。
「おっと。やる気か?できれば穏便にしたかったんだが・・・無理そうだな」
「そうだな。そんなつもりは無い」
「なら、場所を変えよう。『テレポート』」
その瞬間アーサーとロットの姿はその場から一瞬で消え、誰もいなくなった。
━━王国近くの荒野━━
王国近くの何もない荒野に2つの影が現れた。
「・・・今のは・・・転移魔法?」
「その通り。そんなに長い距離を転移は出来ないけどな」
「・・・まぁいい。誰の邪魔も入らない方がやりやすい」
「そういうことだ」
お互いに剣を構え戦闘態勢に入る。
先に動いたのはロットだった。
「・・・ふっ!」
地を蹴り、一気に間合いを詰めてくる。
アーサーはそれを剣で受け止める。
「・・・・・・っつ」
だが力の差でどんどん押し込まれていく。
足元の地面が割れ、周りにクレーターができる。
その時、ロットの後ろに魔法陣が浮かび上がり、炎の弾がロットにめがけて発射された。炎は目にも止まらない速さでロットの背中に直撃した。
「がっ!くっ・・・」
たまらずロットは後ろに下がった。
「・・・無詠唱か」
「まぁな」
「・・・だが、俺も魔法の腕には覚えがあるんでな。こんなふうに・・・な!!」
ロットが手を掲げるとアーサーの周りに大量の氷の槍が浮かび上がった。
「くらえ」
ロットが手を振り下ろすと、氷の槍が一気に発射された。
「上にしか逃げられない・・・」
どこを見渡しても氷の槍。上に逃げるしかなかった。
脚に力を入れ、その場から飛び上がる。
だがそれは罠だった。空中に出て動けないところを別の魔法で狙ってきた。
「火の精霊よ。煉獄の業火で敵を燃やし尽くせ。『ヘルファイア』」
「なっ!?火の最上級魔法だと!?」
『ヘルファイア』は全てを焼き尽くす火の魔法だ。当たればただでは済まない。
俺の前に現れた火の塊はまるで小さな太陽だ。それでも俺を飲み込むのは容易い大きさだ。
「くそ、かわしきれない。サラ!魔力を!」
「わかった!でもそんなにたくさんは無理だよ!」
「わかってる!」
サラから膨大な魔力が流れ込んでくる。これを使い魔法を生み出す。
「水の精霊よ。全てを飲み込む水を生み出せ。『アクアストリーム』」
アーサーの手のひらから水の塊が生み出され、そこから炎の塊に向かってとてつもない勢いの水流が発射された。
水流は炎とぶつかり、大量の水蒸気を生み出している。互いの勢いは互角かと思いきや、僅かにアーサーが押している。
「くっ・・・。さすがに水は分が悪いか」
「はぁぁぁぁ!!!!」
炎の塊は水流に飲み込まれ、そのまま跡形もなく消えてしまった。
ロットの魔法を凌ぎきったアーサーはそのまま地面に着地した。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「・・・お前、精霊が見えているのか」
「・・・だったら?」
「いいや、確かめたかっただけだ」
それと同時にロットが再びアーサーに向かって距離を詰めていく。
「『アイススピア』」
鋭い氷の槍とロットの剣がアーサーに向かう。
「『フレイムショット!』」
氷の槍を炎弾で相殺する
「オラァァァァァァ!!」
「くっ・・・はっ!」
再び剣と剣がぶつかる。アーサーが剣を弾き返してロットの横腹へ剣を振る。
「そこだ!」
ロットの体から赤い鮮血が飛び散る。
「っ・・・やってくれ・・・グハッ!」
そこへ間髪入れずにロットの鳩尾に拳を叩き込む。
そのままロットは勢いよく後ろへ吹っ飛ばされた。
「はぁ・・・はぁ・・・どうだ・・・!」
ロットは地面に倒れている。が、ロットはゆっくりと起き上がった。まるで「倒れるわけにはいかない」と言うように。
「ははは・・・嘘だろおい。完璧に鳩尾に入ったはずだぞ・・・」
「ガハッ・・・・・・あいにく・・・体は頑丈なんでね・・・」
そうは言うが口から血を吐き、今にも倒れそうになっている。
「もうお前も限界のはずだ。馬鹿なことをするのはやめろ!」
「・・・・・・お前にはわかるか?ある日突然大切な人が奪われる絶望が」
「・・・・・・・・・」
━━━━━ちゃん
「お前にわかるのか?平和な日常が奪われる喪失感が」
━━━━━いちゃん
「お前に!お前にわかるのか!全てを奪われる悲しみが!!いいや!わかってたまるか!貴族は自分勝手だ!自分の欲望を叶えるためなら殺しでもなんでもする!誰かの大切なものを簡単に奪う!だから俺は・・・俺は!!貴族を全員殺す!これ以上誰かが大切な人を奪わることがないように!」
━━━━━おにいちゃん
「くっ・・・・・・」
「だから・・・俺は止まるわけにはいかない!」
ゴゴゴゴゴ・・・
ロットの魔力が高まっていく。
「お、おいロット!一体何をする気だ!」
返事はない。この間にもロットの魔力は高まっている。そして・・・
「うぅぅ・・・・・・グォォォォォォォォォ!!」
耳を貫くような咆哮が天を貫いた。
同時にロットの体に変化が起きた。
手が変形して指が3本になり、触れるだけで切り裂かれそうな鉤爪が伸びていく。
さらに背中からは全てを燃やし尽くす炎ように赤く大きな翼が生えてきた。体中にも同様の赤い鱗が生え、体がどんどん大きくなり、服が破れる。腰の辺りからは長い尻尾が生える。最後にロットの顔にマズルが形成され、頭の2本の角はさらに伸び、目は緑の瞳に黒い縦線が入っていく。
「グルァァァァァァァァァ!!!!」
再び耳を貫く咆哮が響きわたる。
そこにはロットの姿はなく、いるのは巨大な赤い竜だった。
一応竜化要素がある話でした。ありきたりですけど許してください何でもしま(殴




