どうやら転生したらしい
「あ〜、あ〜・・・・・・」
まどろみの中、聞き覚えのない声によって起こされ、意識が徐々に覚醒していく。周りに溢れる光に目を細めながらゆっくりと開けるそこには一組の男女とシスター服を着た熟年の女性が何やら話していた。
「ウィル、□□□□□□□!この子□□□□!」
だらしなく伸ばされた茶髪に丸い眼鏡をかけた、だらしなくも何処か理知的なものを感じる顔立ちをした青年、ウィルは癖なのか顎を掻いていた。
「うーん、魔力□□□□□この歳□□□□□□多い。魔力□□□これだけ魔力□□□問題ないと考える□□□?□□□□場合□□□□?」
「□□□□□!ウィル!」
「・・・・・・ハッ!□□□□□!?ミ、ミリィ?」
会話のほとんどが聞き取れない。そして二人の容姿からしてここは人間の大陸と見て間違いないだろう。
途切れ途切れの会話の中、ミリィと呼ばれた、あたかも夕陽に輝く麦畑を彷彿とさせる、肩口まで切りそろえられた髪に、澄んだ明朝の空を思わせる水色の輝きを放つパッチリと開かれた瞳を持つ美女は怒った様な呆れた様な声で返事を返す。
「□□□!ウィル□□□□□□□□□!私□□□□今話している□□□この子□□□□□!□□□□□□優しそう□□□□顔立ち!□□□□優しい子□□□育つわ!」
訳がまったく分からない。裏切られて死んだと思ったが、いざ意識が目覚めてみるとそこには見知らぬ人間が3人もいて、おまけに自分がほんの少ししか理解できない言語を話しているのだから。
突然のことに混乱しつつ状況を把握しようとした時、ふと脳裏にとうの昔に死んでしまった自分よりも年下だが非常に優秀だった部下の言葉がよぎる。
『俺、前世の記憶があるみたいなんですよ』
その言葉を聞いたとき、誰もが冗談だと思った。それは伝説上でしか語られなかった輪廻を経験したことになるのだ。なにせ彼は優秀なことで有名だった。そして同時になぜか幼い子供が親に読んでもらうような物語が好きだったのだ。そのため誰もが笑って過ごしてしまったが、今なら彼の言ったことを信じることができる。なにせ・・・・・・・・
(ハハッ・・・・・・ホントに体がちっさくなってら。あいつが子供の読むような本を好き好んで読むのは自分の前世を懐かしんでかもしれなかったのか・・・・・今更だがアイツの言うこと信じてやればよかったよ・・・・・・)
などと、今となっては遅い後悔をしながら、このこちらを見ている若い夫婦らしき二人と白と黒の服を着た熟年の女性の会話をぼんやりと見上げていると、どうやら話が着いたようで、転生して小さくなったゴーディアをミリィが抱きかかえる。が、抱き方が下手なので首が少し痛む。そしてミリィが話しかてくる。
「あなた□名前□レントゥルース!レントゥルース・ウィンタード□□□!いい名前□□□ウィル!」
こうしてゴーディア・グラン・マキシム・ラーディアはレントゥルース・ウィンタードとして転生したのだった。