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裏切られた魔王はどうやら転生したようです。  作者: 穂始 鏡明
一章 どうやら転生したようだ
1/6

プロローグ

「ダメだ。もう飽きた」


 書類だけがうず高く積まれた執務室でしきりに動かしていたペンを乱雑に机の上に放り、青年、ゴーディアは側でまるで監視するかの様に控えていた金髪碧眼の若い女性、スフィアに呟いた。


 だがそれをいつものことかと言わんばかりのため息をつき、言葉を返す。


「そう仰らずにしっかりと仕事をなさってください!自分で建国されたのですからしっかりと責任を持って下さい!」


 そう、ゴーディア。ゴーディア・グラン・マキシム・ラーディアは世界にある10大陸のうち、あらゆる環境が最悪と言われているハーン大陸、通称『魔大陸』と呼ばれているこの大陸に3000年前に5人の英傑と共にこの国、バルディア王国を建国したのだ。


「だってよー、作った時はもっとこの大陸は混沌としてやる事も多かったし、だいたい100年ごとに来る勇者だって初代と2代目はメチャクチャ強かったけど、今となっては片手一振りで終わっちまう。おまけに話の合う昔の奴らはみんな俺を残して逝っちまったしな」


 投げたペンを今度はクルクルと手の上で回しながら、遠い過去を懐かしむかの様な表情をするゴーディア。


「それは・・・・そうですけど・・・・」


 と、申し訳がなさそうに声のトーンを下げるスフィア。


「ああ!もうそんな暗い顔すんなって!可愛い顔が台無しだろ?そうだ!茶でも淹れてくれよ!いやー疲れた!」

「・・・・フフッ、そうですね・・・・・」


 露骨な話題転換にスフィアは微笑むが、その表情は何処か苦しげだ。

 手慣れた手つきで紅茶を入れていくスフィア。ゴーディアは何故か高級な茶葉ではなく、庶民が飲む様な安い茶葉を好んで飲むのだ。


「ありがとな」


 そう言い、淹れて間も無く湯気が立つ紅茶を一飲みに飲み干す。だがその瞬間、異変は起こった。


「ウッ!?・・・・・」


 紅茶を飲み胃の中に温かみを感じた時、それは唐突に起こった。手に持っていたティーカップを落とし、バリンッという音と共に割れる。まるで日常の崩壊を示唆するかのような音と共に。 ゴーディアの全身の汗腺からは嫌な脂汗が止めどなくダラダラと流れ続け、立ってはいられないほどの脱力感が全身を襲い、思わず床倒れる。


「ゲホッ、ゲホッ!ス、スフィア、何を入れた・・・・」


 床に倒れてしまい、見上げる形でスフィアを見ると、そこにはまるで汚物を見るかのような目をしたスフィアがボソリとつぶやいた。


「・・・・・フィルモネアを数滴」


 フィルモネア。無色透明、無味無臭、高い即効性、そしていかなる名医、薬剤師に解毒不可能といわせる猛毒を持つ非常に危険な毒だ。


 毒の効果で死へと向かい遠くなる意識の中、確かに聞こえた自分への愚弄。


「過去の遺物である愚王がいつまでも玉座に居られると思うな。この国はもう愚王が居なくともやっていける・・・・・」


 そしてここ数百年抱いたことのなかった固い決意を魂に刻み込む。



 もう誰も信じることはしない、と。


 だがそんな決意も虚しく、意識は永遠の闇へと深く沈んでいった・・・・・












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