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屋上の戦略会議

とんでもない事になった。

俺があまりにも俺らしからぬ行動を取ったものだから凛子に重大な勘違いをされたぞ。

告白パターン、シミュレーション共に十分ではないが事は急を要する!

何としても今日の買い物に付き合って凛子の誤解を解かねばなるまい。


「あれ?どうした?珍しく顔が引き締まってるぞ?」


印南黙れ。

そりゃ顔も引き締まるさ。

生まれて初めて、俺は今日愛の告白ってのをやるつもりなんだからな。

待てよ……?

このイケメンに相談するってのは……有りかも知れない。


「そうだ、印南、俺は顔を引き締めて臨まなきゃならない事が出来た。ちょっと相談したいから昼休み屋上へ付き合ってくれ」


「……お?おう、いつも昼休み一緒だろうが。何だよ改めて」


「良いから昼休み顔を引き締めて来い!」


俺のただならぬ気迫に印南はそれ以上ちゃちゃを入れる事なく分かったと顔を引き締めた。

男前である。



そして昼休み。

当然午前中の授業なんかまったく頭に入らなかったので、俺は告白パターンを75まで増やして印南と屋上へやって来た。


「聞いてくれ印南。俺は今日、宮前凛子に告白する」


「ええっ?!……そ、そうか…えっ?ええっ?!」


何故二回に分けて驚いた。一度じゃ処理し切れなかったのか。


「し……正直意外だぞ友城。そりゃ宮前さんは学園一の美少女と言われる程の美貌の持ち主だが、お前にとっちゃただの幼馴染だと思ってたからな。そもそもお前に彼女が欲しいと言う願望があった事にも驚く」


「まぁ、ちょっと前まではそうだったかも知れないが、女の子の期待に応えてやるのって、男の役目だろ?」


しまった。カッコ付けたけどこいつは散々女の子に告白されといてことごとく断わるイケメンだった。


「それって、宮前さんも友城に気がありそうだって事か?」


ふっ……ありそうも何も……と!いけない。凛子に誰にも言わないって約束したんだった。


「そんなとこだ。そこで、告白パターンを75通り考えてある。どれが最適かアドバイスが欲しいんだ」


「分かった……って、75通り?!」


 今度は一度飲み込んでから驚き直したな。やっぱり少なかったか。とりあえず見てもらおう。


「ごめんちょっと昨日色々あってまだこれしか……」


「いや、良い良い良い」


 言いながら印南は俺が告白パターンを書き記したノートを手で制した。


「お前は何でも難しく考え過ぎなんだよ。こう言うのはストレートが一番だ」


「そ……それでちゃんと伝わるのか?」


「脈有りなんだろ?だったら尚更好きって気持ちを伝えるだけで良い」


「そうかな」


「幼馴染って点を考慮して、ずっと前から、なんて一言を付け加えるのは有りかもだけどな」


「あぁ、それは俺も考えてて、じゃぁこのパターン38なんかはどうだろう?」


「だからノートは良いって」


 その後も印南は意地でも俺のノートを見なかった。

 終始ストレートを押すばかりだ。……が、確かにストレートが一番かも知れない。

 こいつの言う通り、結果は分かってる様なもんなんだから奇をてらう事もあるまい。


「ありがとう印南!それで行ってみる!」


「武運長久を祈る」


 印南に後押しされ、俺はいよいよ覚悟を固めた。

 午後の授業の身に入らなさといったら午前中のそれを軽く上回る。


 いざ、放課後……!


「凜子!」


 すぐに帰ろうと荷物をまとめている凜子に置いていかれないようにまず声を掛ける。


「俺も行くから」


「い……良いって言ってるじゃん!」


「ダメだよ、行く。ちょっと話もあるし」


 凜子は大袈裟にため息をついたがさすがにもう来るなとは言わなくなった。


「駅前まで行くんだよな?俺こぐから後ろ乗っちゃえば?」


「ダメ。怒られる」


 結局凜子は自転車を押して、俺達は並んで歩いた。

 さて、タイミングはどうしようか、買い物が終ってからか、そもそもどう切り出すか、タイミングを見失ったまま今日が終わる事だけは避けたいが……


「で?話しって何よ?」


 さすが凜子。そう言えば俺そう言って付いて来たんだし。

 そんな俺を察して極上のタイミングを用意してくれる。

 って、いちいち凜子に惚れ直してる場合じゃないし!出来ればタイミング自分で決めたかったし!いや何言ってんだ俺、心の準備なら今日1日じっくりたっぷりした筈だ。出来る!俺は出来る!凜子に、こんな心臓に悪い思いはもうさせるものか!


 それにしても

 心臓がうるせぇ

 

 凜子の方は、今からまさか告白されるとなんか思ってないんだろう、まったくいつも通りで、いつもと同じ横顔なのにすげぇすげぇ可愛く見えて、その顔が、俺の言葉でどんな表情になるのか、ちょっと楽しみでもあって、それで……


 とうとう、俺は……ぶっきらぼうな、愛の告白をした。

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