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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

神様とお茶会を3

作者: 空未ことり

ネタバレは無いよ

登場人物紹介

主人公 穂高ほだか 沙希さき 白魔法使い

部長こと 高野たかの けん 剣士

副部長こと 八月一日ほずみ 勇樹ゆうき 黒魔法使い

部員1 城ノじょうのうち れん 弓使い

部員2 十七夜月かのう 美空みそら 獣使い

部員3 櫻田さくらだ 涼也りょうや 暗殺者アサシン

「神様とお茶会を」「神様とお茶会を2」を先に見ていただいたほうが面白いと思います…。

「気になっていたことを言ってもいいか?」

「どうぞ?」


 現在、家です。私と副部長は現在、部長に呼ばれまして部長の部屋にいます。絶対に作戦会議だ、と分かるのはメンバーがメンバーだからです。部長はみんなを毎回引っ張って行ってるからね。私と副部長はサポート役として日々、愚痴を聞いたり、弱音を聞いたりしてるからね。うん。


「この世界に来たのは俺たちだけじゃあないと思うんだ」

「…と、言いますと?」

「考えてみろ。俺たちの部活中に起こったのなら絶対にフジピーがいるはずだ」


 フジピーこと藤山ふじやま雅人まさと先生が私の…私たちの顧問の先生だ。でも、藤山先生も私以外の人から「フジピー」って言われてるからね。先生として大丈夫なのだろうか。実際、私が「藤山先生ー」と言うだけで「ありがとう」って言われるからね?

 藤山先生は、現在45歳。ど、独身だよ。嫁さん絶賛募集中。数学と理科を愛しすぎている人だ。すごいよ?一日で関連の本で十万円を使ってしまうほどなんだから。数学検定一級を所持。これは私も副部長もだ。三人で数検の一級を見せ合った。数学の愛情がヤバイ。ヤンデレだ。私、副部長、先生で数学の話をすると必ず美しさについて話し合う。

 一回、カフェで話したことがあるんだけど、五時間話してたからね?それでも足りなくて、先生の部屋に場所を移して話を続けたら朝まで本気で話してしまう、って事があった。…すごい話だよね。


「確かに先生も部活に出てたしね。…まあ、理科準備室に閉じこもってたけど」

「数学研究室には誰もいなかったしね。私、部活出る前に数学研究室に寄ってから行ったけど誰もいなかったから」

「つまり、先生も来ている可能性が高い、と」

「さらに、だ。俺たちが実験してるときに部室の近くから生徒会の声がしたじゃん?…と、言うより入って来た記憶があるんだ。その瞬間にこの世界にきた記憶があるんだよなー」


 生徒会は私たち数学兼理科研究部とは仲が悪い。まあ、色々あったんだよね。とても嫌な思い出が!!特に私、副部長が!!


「絶対に会いたくない。何?生徒会って?」

「フジピーだけに会おう。絶対に」

「お前らがそういうのはよく分かる。でも、会ったときにはどうするんだよ。同じ世界から来てるんだしさ、協力するか?」

「「断固反対する!!」」


 私も副部長も叫んだ。声が重なる。二人で手を握り合い、部長を睨みつける。部長は溜息を吐き、私たちの意見を待っているようだった。

 ならば、言うしかあるまい?私は副部長をアイコンタクトを取り、ハッキリと言い張る。


「生徒会は無視をすればいい。一生元の世界に還さないようにしよう?」

「同感だな。俺もそう思っていたところだ。あいつらだけは許さない。許せない。俺らの数学愛を舐めてるんだよ!!」

「…協力は無し、と」

「藤山先生は助けるよ?あのお方の数学愛をもう一度見たいから」

「俺もだ。助けに行く。気が合うな。穂高」


 私も副部長もほとんど同じ事を言う。だってさ、あのお方の、あの、数学の藤山先生の数学愛はすごいんだから!感動級!!


「藤山先生に会いに行きたいね」

「どこにもいないから仕方ないだろ。でも、一緒に関数グラフは作りたくなるよな…」


 先生と関数グラフアートを作ると最高の出来上がりになるんだよね。私たちの数学兼理科研究部は情報教室か理科準備室、理科室でしてるからね。部員一人に一台のパソコンがあるんだよ。この世界に来る寸前に私は藤山先生のパソコンを使って関数グラフを作っていた。

 藤山先生は理科準備室に「塩酸とって来る…」とか言って、探してるところだった気がする。え?何で塩酸かって?実験のためだよ?


「先生って何の職業かな」

「さぁ。剣士だったら笑おうぜ。指差して」

「ならさ、ここで藤山先生が科学者的な感じだったらどうするの?私たちが一番なりたかったやつだよ?どうやって戦うのかとかは置いておいて…。一番似合いそうだけどさ、絶対に嫌だよね。一人だけいい職業だし」

「…それは許さない。何で俺たちだけはこんな思いなのにフジピーだけ…」

「そんな時にはな、魔法の言葉があるだろ?中指立ててかーらーの『Fuck you and die(クソ野朗!死んでしまえ)』ってな」


 おう。お二人方がとても怒ってるよ?どうしたんだ!!そんなに駄目なのか?しかも、部長は完全に英語で罵ってるし。何でそんな英語だけはすぐに言えるのかな…。英語、苦手なくせに。言っとくとね?部長は私よりも英語が下手なんだよ。試験前なんかは私と副部長がかかりきりで教えるんだよ?


「で、今度はどこに向かうの?」

「…だってさ」

「「ちょっと待て!!」」


 駄目だ。この部長は使えないな。だから部長って事を忘れられるんだよ!!副部長が部長だとよく思われてるからね。うんうん。私が部長って呼ばなかったら今頃は本気で部員A的な存在だったんだろうね。


「あんたは本当に部長としての自覚あるのか?!科学の力で押し切ったくせにさ、何もできてねぇだろうが!!実際、部長って忘れかけられてるよな?!穂高が部長って言わないと100%忘れられている存在だったからな?」

「副部長の方が部長らしいと言うこともあるね。部長。交代しません?副部長の座に落ちましょう?」

「お前ら…。俺が黙って聞いてれば何でも言っていいって思ってんのか?!俺の心のことも考えて言ってくれるか?!特に八月!!確かにそうだな。自覚してるぞ?だからこれ以上傷口を抉るな!!俺だって知ってるんだよ!!自覚ぐらいしてるよ!!だから、な?言うな。穂高に感謝しきれないんだから…」


 うん。知ってるよ。自覚してるのぐらい。だって、この前つぶやいてたもんね。「俺、部長として絶対に向いてないな…」って。


「何で部長になろうって思ったの?おかしいでしょ。向いてないって思いながらなるって…あんたは私達にそんなにいじられたいの?もしかして、Mなの?」

「…いや。それとは関係は無いけどな?俺はただ単に負けず嫌いと言うか…何と言うか…」

「「そんなところで無駄な負けず嫌い出すな!!」」

「反省してます。後悔もしてます。許してください」


 土下座に入っていった。ごめんね?本当に。自覚してるのに悪かったね。私と副部長はこれ以上の追求は悪いな、と思いとりあえず復活を促す。


「分かったから。とりあえずさ、ちょっと考えるだけやろう?どこに向かうのか考えよう?」

「…おう」

「そんなに凹むな。な?」

「…おう」


 で、何とか復活させました。メンタル弱いね!!部長。


「この前街に行ったときに偶然塩が手に入りまして、話を聞いてみると南の方に海があって、その近くに島があるみたいですよ」

「この街はずっと留まってましたからね。そろそろ移動するのもありですね」

「そうしたらこの家はどうするんだ?」

「魔法でどうにかしてみましょう。小さくするとか、空間を移動できるとか、そんな魔法式の書かれたもの、あると思うので、今度の市で探してみます」


 今日はそうやって終わった。とても疲れたね。何か、本当にごめんな。部長。


 で、次の日なんですけど、見つけました。家を移動させる方法を。異世界ってすごい。お引越しって無いんだって。金がかからないからいいね。


「で、家自体を移動させる魔法がありまして、土地さえあればできるみたいなのでいいですね。ただ、費用がかかるから、なるべく一回で移動させた方がいいから、移動中はやっぱり歩きですね」

「場所さえ分かれば魔法が使えるんですけどね。さ、徒歩で移動を始めますか?どうしますか?」

「テンション高いな。非・戦闘員さん?」

「やっほーい!!死ねぇ!!」


 右ボディーブローを食らわせる。案の定、苦しんでました。神様舐めんな。…まあ、私は借りたものを使ってるんだけどね?アテナさん。ありがとう。

 まあ、その後に完全にバックドロップされたんだけどね?部屋だから制服脱いで私服(ズボン着用)でよかったと思う。


「ぎゃああああああ!!」

「何か用か?!」

「…健。止めろ。穂高が死ぬ」


 で、結局いつも通りなんだよね。私は解放される。で、部長は副部長にえび固めされていました。


「足がああああああ!!」

「うっせぇよ!!黙れ!!お前は部員を殺す気なんだよな?!穂高限定で。で、穂高。何か言うことは?」

「バルスッ!!」

「………大佐?大佐ですよね?あの、有名な名言を多く残した…。人がゴミのようだ!!」

「あだだだだだだだだだだだっ!!」


 関節から変な音がする。怖いよ?!副部長?貴方は魔法使いですよね?身体を張らないお仕事なんですよ?!なのに、剣士にも勝てる力は何?!…怖いので言いませんっと。


「私、部屋に帰って寝るね」

「おう。休んで明日は頑張ろうな」

「そろそろやめっ…ぎえぇぇぇっ!!」


 で、部屋から変な呻き声が聞こえてきたんだけど気にしなかった。完全に無視して部屋に戻り、ドアを閉じても煩かったので防音的な魔法を使って防ぎましたとさ。

 いやー。煩い一日だったね。


 次の日、私たちは南に向かって歩き始めました。海に向かうぜ!!


「海、楽しみですね!!」

「そうだねぇー…。私、泳げないからどっちでもいいけど」

「え?!」

「…何でなんだろうね。教えられた通りに頑張ってるのに全然泳げないんだ。浮こうとしても全然体が浮き上がらないし、クロール頑張っても沈んでいくばっかりだしね。ははは」

「ごめんなさいっ!!」


 何故なんだろう。謝られた。本当のことを言ったまでなんだけどなー。そうなんです。何故かしら浮けないんです。中学校3年間ずっと水泳があったんだけど、私は全然泳げないし身長と言う障害もあってか溺れかけたこともあったので(プールの深いところに足が届かなかった)端っこでチマチマしてたんだ。

 …悲しくなってきたかな。突然。


「そうでしたね…。穂高先輩、脂肪という脂肪が全然無いですもんね…。とっても痩せてますもんね…。スタイルいいですもんね…。可愛いですもんね…」

「え?何でそうなるの。おかしいよ?色々と。…何でそんな顔になるの?!えっ、何か変なこと言ったかな?」

「そして無自覚ですもんね!!」


 怒られました。私、そんなに悪いことしたのかな?身長がもう少し欲しかったんだけど。高校になって少し伸びたけど未だに155センチ超えてない。酷いね。神様。


「あ、そろそろ海が見えるよ」

「おぉー!!」


 この世界に着いて初めて海を見た気がします。私たちは全員、叫びました。普段叫ばない人々だけどね、今回は叫ぶよ。…本当に無表情の城ノ内でさえ、だからね。


「着いたな」

「…何があるのか分かりませんね。どうします?」

「お前飛べるだろうが!」

「…ふぁーい」


 こんなときに一言。歌いたくなってたんだ。今日、歌ってもいいよね?うん。誰の許可も取らずに歌うよ。青い猫型ロボット君。猫、って言うよりも狸だよね。言わないけど。


「空ーを自由に、とっびたっいなー。はい。タケ―――」

「早くしろ」

「…了解いたしました」


 無視されたし。部長さん?言わしてよ。最後の三文字。

 フワッと宙に浮く。アテナの力を使い、みんなの為に私は旋回をする。…スカート履いてるけどちゃんと下は短パン履いてるからね。気にしないよ。


「遠くを見てるんですけど、大陸はありますね。島とかじゃなくて、本当に大きな大陸です」

「了解した。そろそろ降りてこ―――」


 その言葉は、私には届かなかった。急に発砲音がしたからだ。そして、私を襲ったのは、激しい痛みだった。…肩の辺りに着弾した。


「っ?!」


 それだけで済むのならよかった。バサッと音がして、私に何かが覆いかぶさる。それを判断する前に、縄に電流が走った。

 魔道具だ。そう判断した。


「っあああああああああ!!」

「穂高?!」


 誰かの声がする。しかし、バチバチと音を立てて身を焦がしていく。飛ぶことを止めても、縄には完全に浮遊魔法がかかっているようで助けをもらうこともできない。自分で何とかしようと思って私は縄を掴む。しかし、痛みのせいか、何一つ集中ができない。


「あ、ぐぅっ……痛、い…」


 こんな時にも自分は冷静だった。何でこんなときに痛いなんか言えるんだろう。笑えてくるよ。死ぬ寸前まで苦しんでるのに、…憧れだった死が、目の前だったりするのに。

 あぁ。人の死って呆気なかったりするんだね。


「穂高先輩!!ちょっと、諦めないでくださいよ!!まだまだやってもらうことがあるのにぃぃ…」

『おい。美空が言ってるぜ?お前のせいで泣いてるぞ?』

「……?」


 目の前に鷹が来ていた。私の翼は燃えて黒いところもあるのに鷹は綺麗だね。…死のことを私は軽い気持ちで見てたんだ。こいつは違う。…いいなあ。空が自由に飛べるって。


『―――――』

「…………………」


 鷹が何かを言った。それを理解できるまで少し時間がかかったけど、分かった。鷹が何を言いたいのか、とかそんなことを。


「も、しか、して……?」

『それは後な。もう少し待ってくれ』


 鷹が去る。…私は縄を掴んだ。もう一回、試して見ないと行けないんだ。そうだ。頑張ろう。まだ、知らないといけないことがあったんだ。

 …すぐに魔力の境は分かった。だから、魔力を流し込むとすぐに浮遊魔法は解けた。電流は分からなかった。

 私は縄ごと地面に落ちていく。そして、強い衝撃が走った。骨が折れなかっただけ安心したい。自分でもどうすればいいのかもう、ほとんど思考が回らない。


「うっ………」

「穂高っ!」

「健!!縄に触るな!!苦しんでいる穂高をこれ以上苦しませるな!!」

「でも…」

「あの縄には特殊な魔法が掛けられてるんだ。お前が触れるだけであいつは死ぬ」


 誰が何を言っているのだろう。誰かが駆け寄ろうとしている。でも、足音が止まった。…縄を掴んでそんなことを考える。痛みはもう、なかった。

 ズルッと手が滑って、何かと思ったら、手の皮が剥がれていた。真っ赤になった手はもう、ほとんど力が入らない。…それ以上に、自分の身体も、言うことを聞かない。


「――――」


*** 視点 部長


「くっそ!!誰がこんなことをしたんだよ!」

「周りを見渡さないと、何が起こってもおかしくない状況だ。…健。気を確かに」

「んなもん分かってる!!」


 剣を構え、何が起こってもいいようにする。チラッと穂高のほうを見るけど、電流にやられているところを見ると、どうしても目を逸らしてしまう。部員が、傷ついているところを見ると、自分まで傷ついていく。自分が、あそこにいられたのならよかったのに…。それ以前に空から見ろ、だなんて考えなければよかった。何で、傷つかないといけないんだ。部長なのに、誰一人として守れない。部長にならなければよかったのかもしれない。


「クソッ!!あいつがいるせいで罪悪感しかねぇ!!直ったら一発殴る。絶対に殴る」

「あれだろ?殴った後に泣きながら―――」

「ハハハッ!!天使ガ捕マッタゾ!!」

「ヤッタナ!」


 八月の声を遮るように声がした。俺たちはそちらの方向を見る。そこにいたのは俺たち人間よりも小さく、少し耳の大きい…一言で言うと小人達だった。


「…すみません」

「八月?何で急に謝るんだ?」

「言うのを忘れていました。この周辺のドワーフの住みかでは天使狩り、というものがとても盛んに行われているようで、空を飛ぶ人もよく捕まえられて売られる、とのことでした。一生の不覚です。穂高は俺のせいで傷つきました。俺をどうぞ殴ってください。さ、部長?」

「それは後だ。言い方も変えろ。…殺るぞ?」


 くっそ。状況が最悪になった。口には出さないけれど、八月に舌打ちをしたい。けれど、最も殴るべき人物が目の前にいるので後回しにする。


「あいつは人間だ。早く元に戻せ!」

「何ヲ言ッテイル?天使ニ決マッテイル。翼ガアルダロウ?」

「あれはただの魔法だ。俺たちの仲間を放してくれ。あいつは渡さない。それとも、殺る気か?」

「場合ニヨッテハソウナルナ」


 俺たちは戦闘準備が済んでいるため、構えるだけでよかった。相手もそのようで、剣を構え始める。本気で戦うのか、と考えていたその瞬間だった。


「私が殺るよ」


 聞きなれた声が聞こえた。俺たちはその方向を見る。そこには、傷だらけで、もう立っていることが信じられないけれど、穂高が立っていた。殺気立っていることが俺でも分かる。


「穂高?!」

「お前、何して―――」

「…大丈夫、だから」


 下を向いたまま、彼女は歩いて俺の隣に来る。翼は黒く焦げ、天使のような純白は見当たらない。火傷の痕の残る足で歩いている所を、見たくはなかった。


「…私は…いや。俺は復讐の神、ネメシスだ。神の憤りと罰の擬人化と言われている。この子に対しての行為は度が過ぎている。さあ、懺悔をしろ。あぁ。別にしないのなら俺が殺すがな」


 声はそのままなのに、口調は違った。また、彼女は神の力を手に入れていた。まったく。何のチート能力なんだ。俺たちにも欲しい。


「…復讐は穂高は望まないぞ?」

「あぁ。お前たちも沙希と同じことを言うのだな。確かにそうだ。しかし、自分を大切にしない沙希には一番必要なことだろう?自分を守るためにも。お前たちを守るためにも」


 そういい、穂高は…いや。ネメシスは笑った。俺たちは何も言わなかった。…いや。言えなかった。なぜなら、一瞬のうちに襲いかかろうとしていたドワーフを撃滅していたからだ。


「懺悔も無しに死ぬとは、残念だったな。まあ、お前たちの結末など分かってはいたがな。俺に勝てるはずが無い。神の力を舐めるなよ。ドワーフ共め」

「ネメシスは、人が神に働く無礼に対する神罰の擬人化では?それに、女神だったはずですが…」

「お前たちの世界ではそうなっているな。けれど、この世界は普通ではない。確かに神罰の擬人化だ。しかし、俺が男である以上、お前たちの世界にいるネメシスとは違う、と言うことは明らかだろう?この世界の常識とお前たちの世界の常識は全然違うんだ。…それに、弱いものを集団で殺しにかかることは、どの世界でも駄目だろう?」

「まぁ、確かにそうですけど…。穂高は弱いに入るんですかね…?」

「穂高は不完全だ。色々と、な。だから充分弱い方に入るな。お前たちもそうだが」

「…あの、傷だらけの穂高をどうにかしてくれませんか?見てることが辛いので」

「むっ。確かにそうか」


 ネメシスは急に俺のほうを見る。さっきの事もあり、一瞬ドキッとしたが、ネメシスは襲う気ではない様だった。少しだけ近寄り、小さな声で言った。


「…よろしく頼むよ。この娘を」


 そう言った瞬間、俺の返事も待たずに穂高の身体は倒れかかってきた。血が制服に付くが、そんなこともあまり考えなかった。考える暇なんてなく、穂高を一刻も早く治すことに専念することにした。


**** 視点 穂高


『沙希は本当に復讐を望ま無いかい?』

「…それが普通です。復讐なんてしたい人はいるんですか?」

『大切な人を失って、その人を殺した張本人を殺したくは無いかい?』

「……………」

『自分自身を守るためにも、他の人を守るためにも、必要だよ。沙希』


「っ?!」


 そこで目が覚めた。復讐の神、ネメシスから力をもらったのだった。…正直言うといらない力だった。私は復讐を望まない。どんなことがあっても、自分で解決するし誰にも言わない。

 言ったって、どうしようもないし…。


「……?」


 しっかしどこにいるんだろう。家の中ではないぞ?匂いでそう判断した。身体を起こそうにも全然動かないからどうしようもない。言うことを聞かない。

 キョロキョロと目だけで辺りを見渡すと、コクコクと船を漕いでいる副部長がいた。最近になって白魔法も使えるようになったんだって。…私は風を起こすことはできるようになったけど、まだ攻撃には程遠いって言うのにさ、いいよね。


「あ……うぅ…」

「………………」

「あ…あー…」


 駄目だ。声が出ない。何かを発しようと思うたびに痛みが走る。口を開けることさえも難しいのにさ、何寝てるんだよ!!病人の世話してるんだったらちゃんと見とけ!!と、病人が言います。違うや。怪我人だ。私は病気じゃあなくて怪我で寝てるんだった。


「おーい。八月。起きてるかー……おはよう。穂高」

「あ……」

「…おいコラ。起きろ。怪我人の方が先に起きてるぞ。八月ー?」


 駄目だ。完全に寝てるみたいだ。私はそう判断した。無理に起こすのもいけないだろう、とでも思ったのか、部長は溜息をつきながら副部長を抱き上げてどこかに連れて行く。…馬鹿力め!!

 一分も立たない間に戻ってきた。速い。すごい。私は心の中でそうつぶやく。現実では目しか動かせないので意味は無かった。そうか。今日は心の中で罵ればいいんだ。喋れないしね。


「他の人も寝てるから起こさないようにするけどいいか?」

「…………」

「はい。喋れないんだな。もう少ししたらフロラが来るはずなんだが……」

「もう来ていますよ」


 部長の隣にはフロラさんが笑顔で立っていた。…素敵な笑顔ですね。と、一言つぶやこうとするけれども、声が出ない。出せない。くっそ。残念だ。


「お久しぶりですね。沙希。初めまして、かな?そうではないかな?…高野君」

「俺はこの前あったばっかりだろうが。フロラ」


 いつの間にそんなことをしていたのか…。色々と聞きたいことがあったがこの口では無理なので後で追求することにしておこう。そんなことを考えていたのに、


「フロラはお前の傷を毎回癒しに来てくれたんだ。喜べよ。で、感謝しとけよ。フロラがいないとお前は死んでたんだからな。確実に」


 あっさりと答えが出てしまいました。クソ野朗。当たり前だ。喋れるようになったら感謝するに決まってるだろうが。死なないで済んだからね。…うん。


「痕が残らないようにしないといけないね。…相当酷い見たいだし」

「なあ、フロラ。お前の顔、どうかしたのか?」

「あぁ。これはですね、アテナに思いっきり平手打ちされたんですよ。…彼女は永久の処女神ですからね、僕が沙希の傷を治すときに包帯を取らないといけないでしょ?その時に「女の子に何してんだ!」って言われてね。まあ、説明はしたんだよ。…無理だったけどね。で、この有様なの。本当にアテナは強いね。僕みたいな男性にも勝てるんだから。まあ、僕は弱いんだけどね?1番いい例だと、彼女は虎が100匹いる檻の中で生きたままかえってきたしね」

「左様で………」


 結論として、アテナさんは強かった。とっても強かった。私はハッキリとそう思った。それは、部長もそうらしい。うん。すぐに分かった。


 私は全ての傷を癒すまでに、一週間もかかってしまった。でも、普通だった傷跡も残るし、一ヶ月以上は動けない。最悪の場合は死に至る傷だったので、奇跡らしい。


「ところで、ここはどこなんですか?」

「あぁ。色々とあって次の町に来たんだ。魔法で小さくした家を早く使いたいんだが土地が無くてだな、とりあえずは宿屋にいる。町の外れになるのかもしれないけど、いいか?」

「はい。で、藤山先生はいたんですか?」

「それらしき人物は見た、って話は聞いたかな。当分見てないようだったから、この町にはいないな。俺たちが来たのと一緒だとして、フジピーは最初の一ヶ月間、ここにいたらしい」


 私たちはこの世界に今のところ3ヶ月いる。…不思議なのは、この世界に来てから髪の毛や爪が全然伸びないこと。つまり、向こうの世界と今の世界とでは時間の流れがまったく違うようで、成長した気分が無い。ふざけてるね。

 一番驚いたのはあんなに高熱に当てられたのに…電流を受けたのに髪の毛は無傷で残っていること。怖い。まあ、坊主にならないから嬉しいけどさ、怖いね。


「他の街に行った、って情報は?」

「ずっと宿泊まりだったらしいから、旅に行ったのかなー程度でしか見てないらしい。そして聞け。フジピーは科学者らしい」

「よーし。殴れるね」

「一人だけずるいよな。本当に…。俺たちの苦労も知らずに一人科学者で薬品とか作ってたらしいぞ。戦場には出ないで薬を作って金稼ぎだ。…な?」


 そういった瞬間に、部長は私に全力でエルボースマッシュを決めた。私は一瞬の出来事に反応ができずに痛い目を見た。お腹に何か刺さった。


「?!?!?!」

「お前が治ったら一発殴ろうって決めてたんだ。心配ばっかさせやがって。分かってるのか?回復役の後方支援型が支援されるんだぞ?」

「痛い!!痛いっ!!」


 確かにそうだった。でも、お決まりになったようで部長は副部長に右ストレートをお腹に受けてました。もう何なんだよ。魔法使いが剣士を殴るなんて…。

 私たちは全員で笑った。…そして、家計を助けるために、野原に出て行く。私は一応戦闘員だけど、もう少し療養しないといけないし、みんなを回復させることが可能だからね。副部長はもう少し練習がいるみたいだから、私が頑張るのだ。


「ほんじゃ、頼むな」

「はいはい」


 今日も数学兼科学研究部は元気に異世界生活を楽しんでいます!!

この話を書いている途中に友人から「連載しないと見えずらい」との話を頂いたので、お茶会シリーズを、連載していこうとおもいます。

しかし、二つ連載は難しいので、陰陽師さんたちが終わってからになります。

書いていないお話をてんこ盛りにして穂高ちゃんたちのドタバタを見ていただきたいと思っております。

では!!連載版で会いましょう!

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